給食の白菜のリアル【大量調理シリーズ第13弾】水っぽい・芯が硬い・かさが減りすぎる

給食の白菜のリアル【大量調理シリーズ第13弾】水っぽい・芯が硬い・かさが減りすぎる|キッチンのりちゃん 調理スキル

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

大量調理シリーズ第13弾は白菜です。11月から2月の献立表を見ると、鍋物・煮浸し・味噌汁・和え物・浅漬けと、白菜はほぼ毎日どこかに入っています。安くて量があって、高齢者にも食べやすい。冬の厨房で一番量を切る野菜と言ってもいいくらいです。

ところがこの白菜、家庭で鍋に入れる感覚のまま100食分を作ると、ほぼ確実に失敗します。水っぽい・芯が硬い・かさが減りすぎて量が合わない・味がぼやける。この4つは、新人の頃に全部やりました。今回は白菜の「量が多いと起きること」と、現場でやっている対策をまとめます。

この記事でわかること

  • 白菜が大量調理で難しい4つの理由
  • 切り分けと水の扱い、冷凍白菜の使い方
  • 検収で見る黒い点「ゴマ症」と、冬の献立5つ

白菜が大量調理で難しい4つの理由

  • 水分が95%……成分表を見ると白菜は100gのうち95gが水です。加熱すると、その水が一気に出てきます。家庭の鍋なら気にならない量でも、100食分の回転釜では煮汁が倍になります
  • 芯と葉で火の通りが違う……芯は厚くて硬く、葉は薄くてすぐ煮えます。同じ大きさに切って同じ時間加熱すると、芯が硬いか葉が溶けるかのどちらかになります
  • かさが激しく減る……切ったときは釜からあふれそうな量が、火が通ると3分の1以下になります。「見た目で足りる」と思って切ると、配膳のときに足りません
  • 味がぼやける……出てきた水分で調味料が薄まります。最初に決めた味付けのまま仕上げると、配膳時には薄い煮汁に白菜が浮いている状態になります

この4つは全部つながっています。水分が多いから味が薄まり、かさが減る。芯と葉の差があるから、火の通し方が一律にできない。つまり、白菜の対策は「水」と「切り分け」の2つでほとんど決まります。

現場の対策:切り分けと水の扱いで決まる

芯と葉は最初から分けて切る

白菜を4つ割りにしたら、まず芯の部分(白くて厚いところ)と葉の部分(緑で薄いところ)を包丁で切り離します。芯は繊維に沿ってそぎ切りか、1〜1.5cm幅の細切り。葉は3〜4cmのざく切り。この段階で芯と葉を別のホテルパンに分けておくのがポイントです。

加熱するときは、芯を先に入れて2〜3分たってから葉を入れる。これだけで「芯が硬い」と「葉が溶ける」の両方が消えます。家庭では面倒ですが、大量調理では最初から2つに分けておく方が、あとで釜の中をかき回して確かめるよりずっと楽です。

芯のそぎ切りは、断面が広くなるので火が通りやすく、味も入りやすくなります。厚さを揃える考え方は大根の記事と同じで、「同じ厚さなら同じ時間で火が通る」が大量調理の基本です。

煮物・煮浸しは「先に蒸す」か「塩で水を出す」

煮物や煮浸しで水っぽくなるのを防ぐ方法は2つあります。

  • スチコンで先に蒸す……切った白菜をホテルパンに広げて、スチームで軽く蒸します。出てきた水分はホテルパンの底にたまるので、それを捨ててから煮汁に入れます。煮汁が薄まらず、時間も短くなります
  • 塩をふって水を出す……和え物や浅漬けなら、切った白菜に重さの1〜2%の塩をふって15分ほど置き、出てきた水を絞ります。この「絞る」を省くと、和え衣を入れた瞬間に水が出て、配膳時には皿の底が水たまりになります

どちらも「白菜の水を先に出す」という考え方です。煮物の記事で書いた「味は冷めるときに入る」は白菜でも同じですが、白菜は冷める間にもさらに水が出るので、煮汁は普段の煮物より1〜2割濃いめに作っておきます。

汁物は「最後に入れて煮すぎない」

味噌汁やスープに入れる白菜は、芯を先に入れて火を通し、葉は火を止める直前に入れます。葉を長く煮ると溶けて濁り、色も悪くなります。100食分の汁物は配膳まで保温するので、その間にも火が入り続けます。「少し早いかな」で止めるくらいでちょうどいい仕上がりになります。

汁物全体の考え方は汁物の記事に書いています。白菜の水分は汁物では「だしが薄まる」方向に効くので、白菜が多い日は最初のだしを少し濃いめに取ります。

「切った量」ではなく「仕上がりの量」で数える

白菜のかさ減りは、慣れるまで本当に読めません。100食で1人60gの煮浸しを出すなら、仕上がりで6kg必要です。白菜は加熱で重さが2〜3割減り、絞ればさらに減るので、生の状態で8〜9kgは用意する計算になります。

この「歩留まり」の感覚は、最初のうちは必ず記録します。「白菜10kg切って、仕上がり6.8kg」のようにメモしておくと、次の発注のときに迷いません。発注と食数管理の記事で書いた「1人分×食数」に、白菜はこの歩留まりを掛けて考えます。

冷凍白菜は「味がしみる」味方になる

調べてみると、白菜は冷凍すると細胞が壊れて、味が入りやすく火の通りも早くなるそうです。大根と同じ理屈です。現場では、年末年始などで納品が止まる前に、切った白菜をホテルパンに広げて冷凍しておくことがあります。凍ったまま煮汁に入れれば、下茹でなしで芯まで柔らかくなります。

ただし冷凍した白菜は食感がなくなるので、和え物や浅漬けには向きません。煮物・汁物・鍋物専用と割り切って使います。冷凍庫の場所と日付管理は食材管理の記事のとおり、袋に日付を書いて先入れ先出しです。

検収で見るところ:黒い点は「ゴマ症」

白菜の芯の部分に黒い点が並んでいることがあります。新人の頃、これをカビだと思って返品しかけたことがあります。調べてみると、これは「ゴマ症」と呼ばれる生理障害で、正体はポリフェノール。農林水産省のサイトにも「食べても害はない」と書いてあります。

検収で返すべきなのは、黒い点ではなく外葉がぬるっとしている・切り口が茶色く変色して臭う・芯が伸びて花芽が出ているものです。逆に、ずっしり重くて葉がぎっしり詰まっているものは、ゴマ症があっても中身は良い白菜であることが多いです。検収の基本は検収の記事に書いています。

高齢者施設ならではの注意点

  • 芯の繊維が残る……そぎ切りにしても、芯の繊維は口に残りやすいです。きざみ食では芯を細かく刻む前に、しっかり火を通して柔らかくしてから刻みます。生の状態で刻むと、繊維が短くなるだけで硬さは変わりません
  • 葉の薄い部分が口に貼りつく……煮すぎた葉は薄い膜のようになって上あごに貼りつきます。むせの原因になるので、葉は煮すぎない。ソフト食にするなら、葉と芯を一緒にミキサーにかけて、とろみ剤で形を作ります
  • 浅漬けは塩分に注意……浅漬けは1人分30gでも塩分が0.5〜0.8g入ります。減塩対応の方には、塩を減らして昆布やゆず皮で香りを足す方法が使えます。減塩の記事に書いた「香りで補う」がそのまま効きます
  • 鍋物は温度管理が別……冬のイベントで鍋物を出すことがありますが、卓上で煮る形は施設ではまず無理です。厨房で仕上げて中心温度を測り、器に盛ってから配膳。加熱後の温度管理は衛生マニュアルの数字のとおりで、白菜だから特別ということはありません

食事形態の作り分けは食事形態の記事にまとめています。白菜は「煮上がってから形態を作る」が基本で、常食の煮浸しを取り分けてから刻む・つぶす、という順番です。

白菜の栄養(成分表八訂・結球葉 生100g)

文部科学省の食品成分データベース(八訂)から、はくさい結球葉 生100gの数字です。

  • エネルギー:13kcal/水分:95.2g/たんぱく質:0.8g
  • 食物繊維:1.3g/カリウム:220mg/カルシウム:43mg
  • ビタミンC:19mg/葉酸:61μg/ビタミンK:59μg

エネルギーは100gで13kcalと、大根の15kcalよりさらに低いです。カリウムとビタミンCは水に溶けやすいので、煮汁ごと食べる汁物や鍋物は理にかなっています。逆に、茹でて絞る和え物では減ります。カリウム制限のある方の献立は、栄養士さんが計算したとおりに作れば大丈夫です。

冬の献立5つ

  • 白菜と豚肉の重ね煮……芯を下、葉を上に重ねて蒸し煮。水を足さなくても白菜の水分で煮えます。100食ではホテルパンに重ねてスチコンへ
  • 白菜の煮浸し……先に蒸してから濃いめの煮汁で。油揚げを入れると煮汁を吸ってくれて水っぽさが消えます
  • 白菜の味噌汁……芯を先、葉は火を止める直前。冬の朝食の定番
  • 白菜のゆず浅漬け……塩1.5%で15分、絞ってからゆず皮。減塩の方は塩1%+昆布で
  • 八宝菜……白菜の水分を計算に入れて、とろみは最後に。とろみがついた状態で保温すると白菜からさらに水が出て緩むので、配膳直前にとろみを調整します

汁物の具に使う白菜は、乾燥野菜の業務用があります。朝食の味噌汁で「白菜を切る時間がない」日の保険として、冬に1袋置いておくと助かります。

浅漬けは、既製品の漬物を使う施設もあります。塩分量が表示で分かるので、減塩対応の計算がしやすいのが利点です。

白菜の失敗あるある3つ

  • 煮浸しが水たまり……蒸す工程か絞る工程を省いた。白菜は「先に水を出す」が全部の料理の土台
  • 量が足りない……切った量で判断した。仕上がり量から逆算して、生は1.5倍用意する
  • 芯だけ硬い……芯と葉を同時に入れた。芯を先に、葉は後から。最初から分けて切っておけば起きない

まとめ

  • 白菜の難しさは水分95%・芯と葉の差・かさ減り・味のぼやけの4つ。全部「水」と「切り分け」でつながっている
  • 対策は芯と葉を最初から分けて切る・先に蒸すか塩で水を出す・煮汁は濃いめ・汁物は葉を最後に
  • 量は仕上がりから逆算。生は1.5倍、歩留まりは記録して次の発注に使う
  • 冷凍白菜は煮物・汁物の味方。和え物には向かない
  • 検収の黒い点はゴマ症で害なし。返すのはぬめり・変色・臭い
  • 高齢者施設では芯の繊維と葉の貼りつきに注意。煮上がってから形態を作る

大量調理シリーズは大根、魚と続いてきました。冬メニュー全体の考え方は冬メニューの記事に書いています。白菜は安くて優しくて、でも扱いを間違えると一番分かりやすく失敗する野菜です。芯と葉を分けて、水を先に出す。それだけで、冬の煮浸しが別物になります。

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