給食の里芋のリアル【大量調理シリーズ第14弾】かゆい・ぬめる・煮くずれる

給食の里芋のリアル【大量調理シリーズ第14弾】かゆい・ぬめる・煮くずれる|キッチンのりちゃん 調理スキル

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

大量調理シリーズ第14弾は里芋です。秋から冬にかけて、里芋の煮っころがし、筑前煮、けんちん汁、いも煮と、献立表に里芋が並ぶ季節になりました。やわらかくて、ほっくりして、高齢者施設では人気の食材です。

ところが里芋は、下ごしらえの段階で厨房泣かせの野菜です。皮をむくと手がかゆい・ぬめりで煮汁が濁る・煮くずれる・中が硬い。100食分となると、皮むきだけで1人が午前中つぶれることもあります。今回は里芋の難しさと、現場でやっている対策をまとめます。

この記事でわかること

  • 里芋が大量調理で難しい4つの理由
  • 下ごしらえと、冷凍里芋の使い方
  • 高齢者施設での注意点と、秋冬の献立5つ

里芋が大量調理で難しい4つの理由

  • 皮むきで手がかゆくなる……調べてみると、原因は里芋に含まれるシュウ酸カルシウムという針のような形の結晶で、これが肌を刺激するそうです。100食分をむくと、手首まで赤くなることがあります
  • ぬめりで煮汁が濁る・吹きこぼれる……里芋のぬめりは、そのまま煮ると煮汁がとろっと濁り、回転釜では泡になって吹きこぼれます
  • 煮くずれる……火が通った里芋はやわらかく、釜の中でかき混ぜると角から崩れていきます。100食分を混ぜるたびに、形が1つずつ減っていきます
  • 大きさがばらばら……泥つきの里芋は親指ほどのものから卵より大きいものまで混ざっています。そのまま煮ると、小さいものは崩れ、大きいものは中が硬いままです

この4つのうち、最初の2つは下ごしらえ、あとの2つは切り方と火加減で決まります。

現場の対策:下ごしらえで半分決まる

かゆみ対策:手袋・乾いた状態で・酢水

  • 使い捨て手袋をする……一番確実です。衛生面でも手袋は必須なので、皮むきの工程は最初から手袋で
  • 皮は乾いた状態でむく……泥を洗ったあと、表面をよく乾かしてからむくと、ぬめりが出にくく、手にもつきにくくなります
  • かゆくなったら酢水か塩……調べてみると、酢やレモン汁が結晶を溶かし、塩の粒が結晶をからめ取るので、かゆみがやわらぐそうです。手が赤くなったら、酢水で洗ってから流水で流します

手荒れが気になる方は、手荒れの記事に書いたケアもあわせてどうぞ。かゆみが強いときや、皮膚に異常があるときは、無理をせず責任者に伝えます。

ぬめり対策:塩もみか下ゆで

皮をむいた里芋に塩をふってもみ、水で洗い流すと、表面のぬめりが取れます。100食分なら、塩もみより下ゆでが現実的です。たっぷりの湯で3〜5分ゆでてざるにあげ、水で表面のぬめりを洗います。これで煮汁の濁りと吹きこぼれがほぼなくなります。

ただし、ぬめりを取りすぎると里芋らしいねっとり感も消えます。煮っころがしのように里芋そのものを味わう料理は下ゆでを短めに、汁物は煮汁をきれいにしたいのでしっかり、と料理で変えます。

大きさを揃えて切る

小さいものは丸ごと、中くらいは半分、大きいものは4つ割り、というように、仕上がりの大きさを1つに揃えるように切ります。大根の記事と同じで、同じ大きさなら同じ時間で火が通ります。角を少し落とす面取りをすると、煮くずれがさらに減ります。

煮くずれは「混ぜない・沸かしすぎない」

里芋を煮るときは、落としぶたをして弱めの火でコトコト煮て、釜の中を混ぜないのが基本です。沸騰させ続けると里芋同士がぶつかって崩れます。味をまんべんなく入れたいときは、混ぜるのではなく、釜をゆっくり揺らすか、煮汁を上からかけます。

100食分なら、スチコンで蒸してから煮汁に入れる方法も使えます。先に火を通しておけば、煮る時間は味を入れるだけの短い時間ですみ、崩れる前に仕上がります。煮物全体の考え方は煮物の記事に書いています。

冷凍里芋は大量調理の味方

皮むき済みの冷凍里芋は、給食の現場ではよく使われています。大きさが揃っていて、かゆみの心配もなく、下ゆでもほぼ不要です。100食分の皮むきにかかる時間を考えると、生の里芋は行事食や季節の一品に絞り、普段の煮物や汁物は冷凍、という使い分けをしている現場も多いと思います。

冷凍里芋は、凍ったまま煮汁に入れます。解凍してから煮ると水っぽくなり、崩れやすくなります。冷凍庫での保管と日付の管理は食材管理の記事のとおりです。

冷凍の里芋は、業務用のバラ凍結のものが使いやすいです。

下ゆで済みで冷蔵のものもあります。行事食で数が少し足りないときの補充にも使えます。

高齢者施設ならではの注意点

  • 丸ごとの大きさに注意……里芋はやわらかく食べやすい一方で、表面がつるっとしていて口の中ですべりやすい食材です。調べてみると、窒息事故の要因として「口の中ですべりやすい」「1〜5cmほどの大きさ」が挙げられています。常食でも一口で入る大きさに切り、食事形態によってはつぶします
  • きざみ食・ソフト食……煮上がった里芋をつぶすと、ねっとりとまとまるので形態食には向いています。ただし、ねばりが強すぎると口に貼りつくので、煮汁でのばしてなめらかにします。作り分けは食事形態の記事に書いています
  • カリウムが多い……成分表を見ると、里芋は100gあたりカリウムが640mgと、野菜の中でも多い方です。カリウム制限のある方の献立は、栄養士さんの指示どおりに量や下ゆでを調整します

里芋の栄養(成分表八訂・球茎 生100g)

文部科学省の食品成分データベース(八訂)から、さといも球茎 生100gの数字です。

  • エネルギー:53kcal/水分:84.1g/たんぱく質:1.5g
  • 炭水化物:13.1g/食物繊維:2.3g
  • カリウム:640mg/ビタミンC:6mg

いも類の中では低めのエネルギーで、食物繊維もとれます。白菜の13kcalや大根の15kcalに比べると主食に近い食材なので、献立では副菜でも「いもの一品」として扱います。

秋冬の献立5つ

  • 里芋の煮っころがし……下ゆで短め、落としぶたで混ぜずに。照りは最後に煮汁を煮詰めてからめる
  • 筑前煮……鶏肉・にんじん・ごぼう・れんこんと一緒に。里芋は崩れやすいので、ほかの具に火が通ってから入れる
  • けんちん汁……下ゆでをしっかりして煮汁を濁らせない。汁物の記事のとおり、具は火の通りにくい順に
  • いも煮……牛肉としょうゆ味、豚肉とみそ味など地域で違う。利用者さんの出身地の話で盛り上がる一品
  • 里芋のそぼろあんかけ……つぶしてもおいしいので、形態食への展開がしやすい

里芋の失敗あるある3つ

  • 釜が泡だらけ……下ゆでをせずに煮た。ぬめりが泡になって吹きこぼれる
  • 配膳のときには形がない……煮ている間に何度も混ぜた。混ぜずに揺らす、煮汁をかける
  • 中が硬いのが混ざる……大きさがばらばらのまま煮た。仕上がりの大きさを揃えて切る。竹串は大きいものから刺して確認

まとめ

  • 里芋の難しさはかゆみ・ぬめり・煮くずれ・大きさのばらつきの4つ
  • かゆみは手袋・乾いた状態でむく・酢水。ぬめりは塩もみか下ゆで
  • 煮くずれは大きさを揃える・面取り・混ぜない・沸かしすぎない。スチコンで先に蒸す方法も
  • 冷凍里芋は凍ったまま煮汁へ。普段使いと行事食で生と冷凍を使い分ける
  • 高齢者施設ではすべりやすさと大きさに注意。つぶすと形態食に向く。カリウムは多め

大量調理シリーズは白菜、大根と冬の野菜が続いています。里芋は手間のかかる野菜ですが、ほっくり煮えた里芋は、利用者さんの箸が一番よく進む一品です。手間をかける場所さえ決めておけば、100食でもきれいに仕上がります。

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