こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
給食の厨房で、いちばん回数の多い衛生の作業は手洗いです。1日に何十回も洗っているので、「手洗いはできている」と思っている人がほとんどだと思います。ところが、厨房の手洗いで本当に差がつくのは、洗い方よりも「いつ洗うか」「いつ2回洗うか」のほうです。
ノロウイルスが増える11月が近づいてきたので、今回は厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルを土台に、手洗いを「2回する場面」「手順」「抜けやすいところ」の3つの問いで見直します。新人さんにも、何年もやっている人にも、冬前の確認として読んでもらえたらと思います。
※手洗い場の位置や運用は会社・施設によって違います。ここではマニュアルの決まりと、高齢者施設の厨房での一般的なやり方を書いています。
この記事でわかること
- 手を「2回洗う」場面
- 手洗いの手順5つ
- やっているつもりで抜けやすいところと、冬前に見直す理由
問い① 「2回洗う」のはいつか
マニュアルには、調理従事者の手洗いについて「次に定める場合には、流水・石けんによる手洗いでしっかりと2回、その他の時には丁寧に1回」という書き方があります。つまり、手洗いには「2回の場面」と「1回の場面」があるということです。2回洗う場面は、次の5つです。
- ① 作業開始前と、トイレのあと
- ② 汚染作業区域から非汚染作業区域へ移動するとき(下処理の場所から調理の場所へ)
- ③ 食品に直接触れる作業の直前
- ④ 生の肉・魚・卵の殻など、菌の汚染源になりうるものに触れたあと、ほかの食品や器具に触れるとき
- ⑤ 配膳の前
⑤の「配膳の前」は意外と抜けやすいところです。調理が終わって一息ついたあと、トレイや食器に触れる前の手洗いが、1日の最後の関門になります。汚染作業区域・非汚染作業区域の意味は厨房の言葉30の記事で説明しています。
この5つは、使い捨て手袋を使う場合の手袋を替えるタイミングとしても、マニュアルに同じ内容が書かれています。「手袋をしているから洗わなくていい」ではなく、「手袋を外して、手を洗って、新しい手袋をつける」場面だと考えてください。
問い② どう洗うか(手順は5つ)
マニュアルの別添にある手洗いの標準作業書は、次の5ステップです。
- 水で手をぬらし、石けんをつける
- 指と腕を洗う。特に指の間と指先をよく洗う(30秒程度)
- 石けんをよく洗い流す(20秒程度)
- 使い捨てのペーパータオルなどでふく(タオルの共用はしない)
- 消毒用のアルコールをかけて、手指によくすり込む
「2回洗う」場面では、1〜3を2回くり返してから、4と5に進みます。1回目で大きな汚れを落とし、2回目で洗い残しを減らす、という考え方です。洗う時間を足すと、2回洗う手洗いは1回あたり2分近くかかります。これを「長い」と感じるか、「それだけの価値がある」と感じるかで、厨房の衛生のレベルが決まる気がしています。
手洗い場には、石けん・爪ブラシ・ペーパータオル・殺菌液を定期的に補充して、いつでも使えるようにしておくこともマニュアルに書かれています。爪ブラシを使うためにも、爪は短くしておきます。身だしなみの決まりは身だしなみの記事にまとめています。
問い③ やっているつもりで抜けやすいところ
毎日見ていて、手洗いの「抜け」が出やすいのは次の5つです。自分も気をつけているところばかりです。
1. アルコールだけで済ませる
アルコールは手順の最後の仕上げで、流水と石けんの代わりではありません。特にノロウイルスはアルコールが効きにくいとされていて、流水と石けんで物理的に洗い流すことが基本です。詳しくはノロウイルス対策の記事に書いています。
2. 洗う場所がかたよる
手のひらは誰でも洗いますが、指先・爪のまわり・親指のつけ根・手首は残りやすい場所です。マニュアルが「特に指の間、指先」と書いているのはこのためです。
3. ペーパータオルの前にアルコール
ぬれたままアルコールをかけると薄まります。順番は「ふいてから、すり込む」です。タオルの共用は、せっかく洗った手に菌を戻すことになるのでしません。
4. 手袋をしたまま場面をまたぐ
生肉を触った手袋のまま調味料の容器に触る、下処理の手袋のまま調理場に入る、というのが典型です。手袋は手の代わりではなく、場面が変わったら外して手を洗い、つけ直すものです。
5. 手洗い場が遠くて省略する
これは本人の意識より動線の問題です。下処理場と調理場の境目に手洗い場があるか、配膳の前に通る場所に手洗い場があるかで、手洗いの回数は変わります。省略が続く場所があるなら、責任者に動線の相談をするのが根本的な対策です。
冬前に見直す理由(ノロと手荒れ)
冬前にわざわざ手洗いを見直すのは、理由が2つあります。
- ノロウイルスの季節に入る……11月から2月が本番で、手を介した二次汚染が主な経路のひとつです。手洗いの回数と丁寧さが、そのまま予防になります
- 手が荒れる季節に入る……空気が乾き、お湯を使う回数が増え、手洗いの回数も増えます。荒れた手は傷に菌が残りやすく、洗っても落ちにくくなります。クリームは作業中ではなく休憩時や退勤後に、手の傷は申告して、というのが基本です。詳しくは手荒れの記事へ
体調が悪いときにどう判断するかは休む基準の記事に、検便と毎日の体調チェックは検便・健康管理の記事にまとめています。
よくある質問
Q. 手袋をしていれば手洗いは少なくていい?
いいえ。手袋をつける前に手を洗い、場面が変わるたびに手袋を替えます。手袋の中は汗で菌が増えやすいので、手袋をしている日ほど手洗いは大事です。
Q. 30秒と20秒は厳密に測るの?
「程度」なので、秒単位で測るものではありません。ただ、実際に時計を見て30秒洗ってみると、ふだんの手洗いがいかに短いかが分かります。新人さんには一度だけ時計を見ながらやってもらうと、感覚がつかめます。
Q. 2回洗う場面を全部覚えられない
最初は「入るとき・移るとき・触れる前・生ものの後・配る前」と短く覚えるのがおすすめです。慣れてくると、体が勝手に手洗い場に向かうようになります。
まとめ
- マニュアルは2回洗う場面を5つ決めている:作業開始前・トイレ後/汚染区域から非汚染区域へ/食品に触れる直前/生の肉・魚・卵の後/配膳の前。その他は丁寧に1回
- 手順はぬらして石けん→30秒洗う→20秒流す→ペーパータオル→アルコール。2回洗う場面は1〜3を2回
- 抜けやすいのはアルコールだけ・指先と手首・ぬれたままアルコール・手袋のまま場面をまたぐ・手洗い場が遠いの5つ
- 手袋の交換も同じ5つの場面。手袋は手洗いの代わりにならない
- 冬前に見直すのは、ノロの季節と手荒れの季節が同時に来るから
手洗いは地味ですが、厨房でいちばん効く食中毒対策です。衛生のルール全体は衛生マニュアルを数字で読む記事と衛生NG10選の記事でまとめているので、あわせて読んでみてください。この冬を無事に乗り切るための参考になればうれしいです。


