給食の衛生記録の書き方【あとで書く・丸める・NGが怖い、をなくす】

給食の衛生記録の書き方【あとで書く・丸める・NGが怖い、をなくす】|キッチンのりちゃん 衛生管理

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

厨房には、毎日書く紙がたくさんあります。検収の記録、中心温度の記録、冷却の時刻、健康チェック、洗浄の点検表。新人の頃は「料理をしに来たのに、なんでこんなに紙を書くんだろう」と正直思っていました。

以前、HACCPの記事で「新人がつまずくのは、あとで書く・丸める・NGが怖い、の3つ」と書きました。今回はその続きで、記録は誰が何のために見るのか、そしてダメな記録と良い記録は何が違うのかを、書く側の目線でまとめます。数字の根拠は厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」です。

※食数や時刻などの数字は架空の一例です。会社名・施設名は伏せています。

この記事でわかること

  • 毎日書いている衛生記録の種類と、誰が見るのか
  • ダメな記録と良い記録の4つの対比
  • 中心温度の記録の注意と、新人がつまずく3つの直し方

毎日書いている記録は何種類あるか

施設によって様式は違いますが、マニュアルで「記録すること」と書かれているものを並べると、だいたい次のようになります。

  • 検収の記録……納入された食材の品質・鮮度・品温・期限表示・包装・異物混入の点検結果。加えて、搬入の時刻・室温・冷蔵庫や冷凍庫の温度
  • 加熱の記録……中心温度と加熱時間。校正された温度計で3点以上(煮物は1点以上)測って、全部が75℃以上になっていることを確認する
  • 冷却の記録……加熱後に冷ます食品の、冷却を始めた時刻と終わった時刻
  • 調理終了時刻・移し替えの時刻……できあがった時刻と、保温や保冷の食缶に移した時刻
  • 健康チェック……作業を始める前に、各調理従事者の健康状態を確認して記録する
  • 水の検査……貯水槽や井戸水を使う施設では、遊離残留塩素が0.1mg/L以上あるかを始業前と作業終了後に毎日検査して記録
  • 点検表……施設・設備・器具・従事者について、別紙の点検表に基づいて点検し、結果を記録
  • 保存食の記録……採取した日時と担当者。保存食そのものの話は検食・保存食の記事に書いています

そして、これらの記録は1年間保管します。マニュアルの数字(75℃1分・30分以内に20℃・2時間以内など)の意味は衛生マニュアルを数字で読む記事にまとめているので、ここでは「書く」ことに絞ります。

記録は誰が、何のために見るのか

紙を書くのが苦になるのは、「誰も見ていない」と思っているからです。実際には、見る人が4種類います。

  • 保健所……立入検査のときに記録を見ます。「やっている」と口で言っても、記録が無ければやっていないのと同じ扱いです
  • 施設側……委託給食では、施設の栄養士さんや事務の方が記録を確認することがあります。施設にとっても、自分たちの利用者に出す食事の証拠です
  • 自分の会社……本部の担当者が巡回で記録を見ます。書き方の癖や抜けは、事業所ごとに驚くほど違います
  • 自分たち……一番大事なのはこれです。何か起きたときに「あの日、何を何度で、いつ出したか」を答えられるのは記録だけです

つまり、記録は「上に提出するもの」ではなく、自分たちを守るものです。この感覚があるかどうかで、書き方が変わります。

ダメな記録と良い記録:4つの対比

①「あとでまとめて書く」と「その場で書く」

一番多いダメな例です。忙しいから、昼の配膳が終わってから朝の分をまとめて書く。すると、時刻が全部きれいに5分刻みになり、温度が全部同じ数字になり、字が全部同じ濃さになります。見る側は、これを一目で見抜きます。

良い記録は、その場で書いた記録です。ペンを記録用紙にひもで結ぶ、温度計と記録板を同じ場所に置く、といった「書く場所と道具を動かさない」工夫で、あとで書く癖はかなり減ります。私の現場では、検収台の壁にボードを固定して、納品と同時に書く形にしています。

②「数字を丸める」と「測った数字をそのまま書く」

中心温度の欄に、毎回「75℃」とだけ書いてある記録があります。基準が75℃だから75℃と書いておけば安心、という気持ちは分かります。ただ、これも見る側からは一番疑われる書き方です。測っていれば、78℃・83℃・91℃と、ばらつくのが当たり前だからです。

良い記録は、測った数字をそのまま書きます。3点測ったなら3点とも書く。基準を下回った点があれば、それも書く。「そのままの数字」は、記録が本物であることの一番の証拠になります。

③「NGを書かない」と「NGと対応を書く」

基準を下回った、期限が近かった、品温が高かった。こういうNGを見つけたときに「書くと怒られる」と思って空欄にする、あるいは基準内の数字に直して書く。これが一番危ない記録です。

良い記録は、NGを書いて、その横にどう対応したかを書きます。「中心温度71℃→再加熱して5分後に82℃」「品温9℃→受け入れ、すぐ冷蔵庫へ・納入業者に連絡」のように。改善の措置が書いてあれば、そのNGは「見つけて直した記録」になります。マニュアルでも、点検で異常が出たら改善措置を講じることが求められています。NGを書いた人が正しい、という空気を現場に作るのは、責任者の仕事です。

④「誰が書いたか分からない」と「担当と確認者がいる」

時刻も温度も書いてあるのに、担当者の欄が空いている記録があります。あとから「これは誰が測った?」と聞いても分からない。良い記録は、測った人の名前かサインがあり、その日の責任者が確認の印を押しています。二重チェックの意味だけでなく、あとで質問できる相手がいることが大事です。

記録用紙を上から順に:検収記録の一例

架空の一例で、検収記録の1行を見てみます。様式は施設によって違いますが、欄の意味は同じです。

  • 時刻……納品された時刻(9:05)。伝票を受け取った時刻ではなく、荷物が厨房に入った時刻
  • 品名・数量……鶏もも肉 10kg。発注書と照らして数量を確認
  • 品温……4℃。冷蔵品は表面ではなく、袋と袋の間に温度計を差し込んで測る。常温品は「常温」と書き、空欄にしない
  • 期限・包装・異物……それぞれ確認して〇。破れや汚れ、異物が疑われれば記入して受け入れ可否を判断
  • 室温・冷蔵庫温度……18℃・3℃。搬入時の室温と保管する庫内の温度
  • 担当……名前かサイン

ポイントは「書けない欄を作らない」ことです。空欄は「忘れた」のか「該当なし」なのか区別がつきません。該当しないなら「−」や「常温」と書いて、空欄をなくします。検収そのものの流れは検収の記事にまとめています。

中心温度の記録で気をつけること

  • 測る場所……一番厚い・一番火の通りにくいところ。焼き物・揚げ物は3点以上、煮物は1点以上(火の通りにくい具材を選ぶ)
  • 測るタイミング……加熱の終わり際。早すぎると基準に届かず、記録が「再加熱」だらけになる
  • 温度計……校正された温度計を使う。落として先が曲がった温度計は、数字が信用できない
  • 時間もセット……75℃で「1分以上」なので、温度だけでなく、その温度を保った時間も書く欄がある様式が多い

揚げ物や煮物の温度の取り方は、衛生NG10選の中心温度の項目にも書いています。

新人がつまずく3つの直し方

  • 「あとで書く」……本人の意志ではなく、道具の置き場所の問題。ペンと記録板を動線の上に固定する
  • 「丸める」……「基準の数字を書く」と教わったのが原因。「測った数字を書く」と教え直す。基準は見る側が判断する
  • 「NGが怖い」……NGを書いたら怒られた経験があると、次から書かなくなる。NGを書いた人を責めず、対応を一緒に書く。先輩が自分のNGを普通に書いている姿を見せるのが一番効く

訂正するときは、修正液や塗りつぶしではなく、二重線で消して横に書き直します。何を直したか分かる形にしておくのが記録のルールです。

記録が役に立った話(架空の一例)

ある日の午後、施設から「昼食のあとに体調を崩した方がいる」と連絡が入ったとします。厨房でまずやるのは、その日の記録を全部出すことです。検収記録で食材の品温と期限、加熱記録で中心温度と時刻、冷却記録、健康チェック、そして保存食。これが揃っていれば、「この食材はこの温度で受け入れ、この温度まで加熱し、この時刻に提供した」と、その場で説明できます。

結果として食事が原因でなかったとしても、説明できることと、できないことの差はとても大きい。記録は事故を防ぐためのものであると同時に、事故が疑われたときに自分たちを守るものです。健康チェックの記録は、検便・健康管理の記事と休む基準の記事で書いた「体調不良は申告する」とセットで意味を持ちます。

記録と日報は別もの

調理と事務を兼ねていると、衛生記録と日報を混同しやすいのですが、これは別ものです。日報は食数や原価を本部に報告するための書類で、衛生記録は「安全に作った証拠」として現場に1年間残す書類です。日報は本部へ、衛生記録は現場に。行き先が違うと覚えておくと迷いません。

まとめ

  • 毎日の衛生記録は検収・加熱・冷却・調理終了と移し替えの時刻・健康チェック・水・点検表・保存食。1年間保管する
  • 見るのは保健所・施設・会社・自分たち。記録は提出物ではなく、自分たちを守るもの
  • ダメな記録はあとで書く・丸める・NGを書かない・誰が書いたか分からない。良い記録はその場で・そのままの数字で・NGと対応を・名前入りで
  • 空欄を作らない。訂正は二重線。中心温度は校正した温度計で3点以上、煮物は1点以上
  • 新人の「あとで書く・丸める・NGが怖い」は、道具の置き場所・教え方・先輩の姿で直る

紙を書く時間は、料理を作る時間ではありません。でも、その紙があるから、作った料理を「安全でした」と言えます。書くのが苦手だった新人の頃の自分に教えるなら、「その場で、そのまま、NGも書く」の3つだけです。

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