高齢者施設で使う「やさしい食材」|とろみ剤・やわらか食・栄養補助食品の選び方【給食歴16年】

とろみ剤・やわらか食・水分補給ゼリー・栄養補助飲料を紹介するキッチンのりちゃんのイラスト 調理スキル

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

高齢者施設の給食で、毎日いちばん気を使っているのが「食べやすさ」です。同じ献立でも、その方の噛む力・飲み込む力に合わせて形を変えないと、おいしいどころか命に関わります

そこで頼りになるのが、市販の「やさしい食材」です。とろみ調整食品、やわらかいレトルト、水分補給のゼリー、栄養補助飲料。どれも現場では当たり前に使われていますが、家庭で介護をされている方には意外と知られていません。

今日は、施設の厨房で実際に使われている「やさしい食材」を、選び方の基準ごとまとめます。

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※食事形態やとろみの濃さは、必ず施設の管理栄養士さん・看護師さんなど専門職の指示に従ってください。この記事は現場の一般的な考え方を紹介するもので、個別の指導に代わるものではありません。

まず知っておきたい「区分」という共通言語

やさしい食材を選ぶうえで、いちばん大事なのが区分表示です。パッケージのどこかに必ず書いてあります。

  • ユニバーサルデザインフード(UDF)…日本介護食品協議会の規格。「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4区分
  • スマイルケア食…農林水産省が2016年に整備した基準。青・黄・赤のマークで分かれています
  • 学会分類2021…日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類。とろみは「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階

現場で「ソフト食」「きざみ食」と呼んでいるものが、市販品ではこの区分に置き換わります。呼び方の対応が分からなくなったら、高齢者施設の食事形態のリアルも合わせて読んでみてください。

とろみ調整食品|いちばん出番が多い「やさしい食材」

お茶や汁物にとろみをつけて、むせを防ぐための粉です。水分はさらさらしているほど気管に入りやすいので、飲み込む力が落ちた方には必須の道具になります。

現場で気をつけているのは、この3つです。

  • 濃さは目分量にしない…「薄いとろみ」と「濃いとろみ」では別物です。必ず指示された分量を計ります
  • だまを作らない…粉を入れてから一気にかき混ぜ、30秒ほど置いてもう一度混ぜる。これでほぼ防げます
  • 時間を置きすぎない…とろみは時間とともに強くなります。作り置きは避けます

とろみと水分の話は高齢者施設の水分補給のリアルに詳しく書きました。

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やわらかいレトルト|「区分1から順に試す」が基本

やわらか食のレトルトは種類が増えました。家庭で使うときのコツは、いきなり細かい区分から入らないことです。

噛む力が残っているのに「かまなくてよい」まで落としてしまうと、使わない機能はどんどん落ちていきます。まずは「容易にかめる」から試して、むせや食べ残しの様子を見ながら下げていく。これが現場の考え方です。

食べ残しは、その方からのいちばん正直なサインでもあります(→給食の残食を減らす工夫)。

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水分補給ゼリー|「飲めない」を「食べられる」に変える

高齢の方は、のどの渇きを感じにくくなります。しかも、とろみのついたお茶は「おいしくない」と敬遠されがちで、水分の摂取量は放っておくと確実に落ちます

そこで出番になるのがゼリー飲料です。最初からとろみが調整されているので、コップ1個ぶんの水分をスプーンで「食べて」もらえる。夏場の脱水対策としても現場では欠かせません(→高齢者施設の夏メニュー)。

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栄養補助飲料|「あと少し」を埋める1本

食が細くなった方の食事量を、いきなり戻すことはできません。そこで、少ない量でエネルギーとたんぱく質が取れる飲料を足します。

おやつの時間に1本、あるいは食事に添えて半分だけ。「主食を減らして補助飲料を足す」のでは意味がないので、あくまで足し算として使うのが基本です。減塩と同じで、無理なく続く形にするのがいちばん大事だと思っています(→減塩なのに美味しい給食のコツ)。

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えん下困難者用食品|表示が付いているという安心感

「えん下困難者用食品」は、消費者庁の特別用途食品として許可を受けた表示です。硬さ・付着性・凝集性の基準を満たしたものだけが名乗れます。

飲み込む力がかなり落ちている方には、この表示のある商品を選ぶのがいちばん確実です。

大塚製薬 エンゲリード グレープゼリー 29g×9個(楽天市場で見る)

服薬ゼリー|給食の外だけれど、現場で必ず出てくる話

これは厨房の仕事ではありませんが、食事の場面と切り離せないので触れておきます。

薬をお茶で飲むのがつらい方に、ゼリーで包んで飲み込みやすくするためのものです。とろみ剤で代用しようとする方がいますが、薬の効き方に影響する場合があるので、専用の服薬ゼリーを使ってください。

龍角散 らくらく服薬ゼリー スティックタイプ(楽天市場で見る)

現場で必ず守っていること

  • 指示された形態と濃さを変えない…「今日は元気そうだから」で勝手に上げない。判断は専門職の仕事です
  • 開封後の管理を徹底する…とろみ剤は湿気に弱く、固まると計量が狂います。保管の考え方は給食の食材管理と同じです
  • アレルギー表示を必ず確認する…介護用の商品にも乳・大豆・ゼラチンなどは入っています(→アレルギー対応食の作り方

まとめ

  • やさしい食材は区分表示(UDF・スマイルケア食・学会分類2021)で選ぶ。これが共通言語になる
  • とろみは目分量にしない・だまを作らない・作り置きしないの3つ
  • やわらか食はいきなり細かい区分に落とさない。残っている力は使い続けてもらう
  • 水分補給ゼリーと栄養補助飲料は足し算として使うのが基本
  • 迷ったら必ず専門職に確認する。安全がいちばん上です

やさしい食材は、手抜きの道具ではありません。最後まで口から食べてもらうための道具です。16年やってきて、そこだけは変わらないと思っています。

ちなみに、懐かしいメニューを施設で再現するときの注意点は懐かしい給食の食べものにまとめました。合わせてどうぞ。

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