こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
今日のテーマは検収(けんしゅう)。食材が厨房に届いたとき、それを受け取る作業のことです。「受け取るだけでしょ?サインして終わりじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はまったく逆で、検収は仕入れの最後の砦。ここを通過した食材は、その瞬間から「うちの責任」になります。だから給食の現場では、納品のたびに温度計を持って食材を測っているんです。
今日はそんな、業界の外からはまず見えない「受け取りの5分間」の話です。
※この記事に出てくる数字や事例は架空の一例です。実際の基準や運用は施設や会社のマニュアルに従っています。
この記事でわかること
- 検収で立ち会って・測って・記録すること
- 検収でチェックしている5つのこと
- 検収を現場で回すためのコツ
検収は「立ち会って・測って・記録する」
検収は衛生管理の話なので、まじめにいきます。
国の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、原材料の納入時には調理従事者などが必ず立ち会い、検収場で品質・鮮度・品温・異物の混入などを点検して、その結果を記録することが定められています。つまり「届いたら受け取る」ではなく、「届いたら検査する」が給食の当たり前なんです。
特に大事なのが品温、つまり食材そのものの温度です。マニュアルには食材ごとの保存温度の基準があって、たとえば食肉類は10℃以下、魚介類は5℃以下、冷凍品はマイナス15℃以下。納品のたびに温度計を当てて、この温度で運ばれてきたかを確認します。トラックの中で温度が上がっていたら、見た目がきれいでも菌が増えているかもしれない。だから「冷たいかどうか」を自分の手ではなく、温度計の数字で確認するんです。
検収でチェックしている5つのこと
私が納品に立ち会うときに見ているのは、ざっくりこの5つです。
- ①数量と規格──納品書と、こちらの発注内容が合っているか。数・重さ・サイズ・産地。「豚こま10kgのはずが8kg」「きざみ済みのはずが丸のまま」に気づけるのはこの瞬間だけです。規格違いは調理の段取りにも直撃するので、数と同じくらい大事です。
- ②鮮度と外観──野菜のしなび、魚の目の濁り、肉の色。箱の上だけでなく、開けて中まで見ます。
- ③品温──温度計で実測。数字で確認、が鉄則です。特に夏場は外気温が高く、トラックの扉が開くたびに庫内の温度も上がりやすいので、いつも以上にシビアに見ます。
- ④期限表示──消費期限・賞味期限。使う予定日に対して余裕があるかまで見ます。
- ⑤包装と異物──袋の破れ、箱のつぶれ、水濡れ。異物混入の記事にも書きましたが、「加工済み=安全」と思い込まないことが大切です。
そして何か問題があったら、その場で業者さんに伝える。これが一番大事です。受け取ってしまってから「昨日の肉、少なかったんですけど」と言っても、証明のしようがありません。その場なら、交換や再納品の相談がすぐできます。トラブル対応の記事で「気づいたら3秒で報告」と書きましたが、検収はまさにその入口です。
検収は事務仕事の始まりでもある
ここからは事務担当としての話です。検収でサインした納品書は、そのあと日報の仕入金額になり、月末には請求書と突き合わせる元データになります。
つまり、検収でのズレを見逃すと、それは数字のズレとして事務処理までずっとついてきます。請求書の記事にも書きましたが、月末に「請求書と納品書が1行合わない」と探し回る羽目になったとき、原因をたどると納品日の数量違いだった、というのはよくある話。金額のミスは、実はお金の計算場面ではなく、玄関先の数え間違いから生まれることが多いんです。日報の記事で「日々の積み上げが月末を楽にする」と書きましたが、検収はその積み上げの一番先頭にいます。
発注→検収→保管→調理→記録。この流れの中で、検収は「注文したもの」と「実際に届いたもの」を照合できる唯一のポイントです。発注の記事と、この記事の後半で書く保管の、ちょうど橋渡し役ですね。
現場で回すためのコツ
とはいえ現場は忙しい。仕込みの真っ最中にトラックが着くこともあります。それでも検収の質を落とさないために、私がやっているのはこんな工夫です。
- 納品時間を把握して、人を空けておく──業者さんごとの納品時間はだいたい決まっています。その時間に手が離せる人を作っておくのは、調理の段取りと同じです。
- 検収したらすぐ冷蔵庫・冷凍庫へ──点検は丁寧に、でも素早く。廊下に置きっぱなしの時間は短いほどいいです。
- 業者さんとは対等なパートナーとして──毎日顔を合わせる相手です。あいさつと敬意はきちんと、でも指摘すべきことはその場できちんと伝える。信頼関係があるほど、急な追加注文や納品トラブルの時に無理を聞いてもらえます。検収でいつも丁寧に見ていると、業者さん側も「この現場はちゃんと見ている」と丁寧に納品してくれるようになる。検収の目は、実は品質を上げる力でもあるんです。
それから、検収は新人さんに任せる最初の責任ある仕事としてもおすすめです。食材の名前と規格が自然に頭に入りますし、「数字で確認して記録する」という給食の基本動作が身につきます。もちろん最初は先輩と一緒に。慣れてきたら温度計とチェック表を渡して任せる。私も検収から仕入れの世界を覚えました。
受け取ったあとの保管:置き場所と先入れ先出し
検収が終わった食材は、すぐに冷蔵・冷凍へ移します。常温に置いた時間の分だけ、細菌は増えていきます。ここからは、受け取ったあとの保管の決まりをまとめます。
冷蔵庫の置き場所には理由がある
- 肉・魚は下の段:ドリップが落ちても、ほかの食材を汚さないように
- そのまま食べるものは上の段:加熱しない野菜やデザート類
- 床に直に置かない:常温品もすのこやラックの上へ
- 詰め込みすぎない:冷気が回らないと温度が上がる。7割くらいまでが目安
先入れ先出し:新しいものは奥、古いものは手前
手前から取れば、自然と古いものから使われる仕組みです。補充する人が空いている手前に置いた瞬間に崩れるので、全員が決まりを知っていることが大切です。「奥から期限切れが出てくる」のは注意力ではなく置き方の問題なので、棚に品名ラベルを貼って定位置を決める、開封日を書く、期限が近いものを手前に集める、といった「見える化」で防ぎます。
食材別の保管のポイント
| 食材 | ポイント |
|---|---|
| 葉物野菜 | 乾燥に弱い。包んで立てて保管する |
| 根菜 | じゃがいもは光に当てない(芽と緑化の原因) |
| 肉 | トレーごと、冷蔵庫の一番下の段 |
| 魚 | 傷みが早い。届いたその日に処理する |
| 卵 | 冷蔵で、洗わない(表面の膜が守っている) |
| 乾物 | 湿気と虫が大敵。密閉容器で冷暗所へ |
冷凍品の解凍の決まり
常温で解凍せず冷蔵庫でゆっくり戻す、流水で解凍するときは密封する、一度解凍したものは再冷凍しない、が基本です。前日のうちに「明日使う冷凍品」を冷蔵庫へ移す習慣にしておくと、朝の作業が楽になります。
まとめ:入口で守るから、最後まで守れる
検収は、料理のようにおいしさが目に見える仕事ではありません。でも、ここで温度を測り、数を数え、記録を残しているから、そのあとの調理も、月末の数字も、安心して積み上げられます。
受け取ってしまえば、全部こちらの責任。だからこそ、入口の5分間に全力を注ぐ。給食の安全と数字は、実は玄関先から始まっているんです。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。キッチンのりちゃんでした。


