こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
ここ数年、給食の現場でいちばん重い課題は食材費の高騰です。日報を締めるたび、棚卸をするたび、去年と同じ献立なのに原価が上がっている。事務も担当している立場としては、毎月これと向き合っています。
今日は、現場が実際にやっている10の工夫を、献立・仕入れ・数字の3つに分けて書きます。きれいごとではなく、うちで本当にやっていることだけです。
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※記事中の献立例は説明のための一例です。実際の対応は施設・契約内容によって異なります。
まず数字の話|値上げは「まだ続いている」
感覚ではなくデータで確認しておきます。帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査によると——
- 2026年8月の飲食料品の値上げは2,311品目。前年同月の1,262品目から80%増
- 値上げ1回あたりの平均値上げ率は月平均15%
- 2026年は1〜11月の判明分だけで18,347品目。通年で2万品目台の見込み
- 要因は原材料高90.9%・物流費65.8%・包装資材64.0%(複数回答)
8月にいちばん値上げが多かったのは加工食品で1,419品目、次いで調味料589品目です。給食の現場感覚と、きれいに一致します。使う頻度が高いものほど上がっているんです。
給食は、値上げをそのまま価格に乗せられない
ここが飲食店と決定的に違うところです。
委託給食は契約で単価が決まっています。食材費が上がったからといって、今月から1食50円上げます、とはいきません。単価の見直しは契約の話なので、時間がかかります。請求のしくみは給食の請求書のリアルに書きました。
つまり値上がりぶんは、いったん現場が受け止めるしかない。だから工夫が要るんです。1食の値段の内訳は給食1食の値段はいくら?にまとめています。
【献立で効かせる】工夫1〜4
工夫1|原価は月末ではなく「毎日」見る
いちばん効くのがこれです。月末に集計して「今月は高かった」と分かっても、もう打つ手がありません。
毎日の日報で累計原価を見ていれば、月の半ばで「このままだと着地が危ない」と気づけます。そうすれば残り2週間で調整できる。日報のリアルで書いたとおり、あの毎日の数字は原価を守るためのものです。計算式は給食の原価率の出し方にあります。
工夫2|献立サイクルの中で「高い日」と「安い日」を組む
毎日均等に安くしようとすると、献立が貧しくなります。そうではなくサイクル全体でならす。
行事食や その月の目玉になる日は、堂々と原価をかけます。そのかわり前後の日を汁物と副菜で満足度を上げる構成にする。この設計ができると、「削った感じ」を出さずに平均を下げられます。献立の組み方は給食の献立の組み立て方に詳しく書きました。
工夫3|たんぱく源を分散する
原価をいちばん押し上げるのは主菜のたんぱく源です。肉と魚だけで回すと、相場の影響を丸ごと受けます。
そこで肉・魚・卵・大豆製品の4本柱で回します。大豆製品の日を週に1〜2回きちんと組み込むと、月の原価がはっきり変わります。水煮の大豆は下ゆでが要らないので、手間の面でも現場を助けてくれます。
工夫4|乾物を「戦力」に戻す
個人的にいちばん推したいのがこれです。乾物は常温で長く保存できて、相場に振り回されにくく、戻すとかさが増える。値上げ局面で、これほど心強い食材はありません。
高野豆腐はたんぱく質が取れて、煮汁を吸ってごちそう顔になる優等生です。含め煮にすれば主菜級、卵とじにすれば副菜としても成立します。
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切り干し大根も強い。乾燥1kgが戻すと数倍のかさになるので、副菜の原価が一気に軽くなります。煮物だけでなく、和え物やハリハリ漬け風にも展開できます。
汁物の具に困ったときのカットわかめも、常備しておくと本当に助かります。味噌汁・汁物のリアルでも書きましたが、汁物は満足度の割に原価が軽い、この局面での主役級です。
【仕入れで効かせる】工夫5〜7
工夫5|冷凍野菜は「ロスがゼロの野菜」
冷凍野菜を「手抜き」と思っている方がいますが、原価管理の観点ではむしろ優等生です。
- 捨てる部分がない…生の野菜は皮や芯を捨てます。冷凍野菜は買った重さがそのまま使える重さです
- 相場に振られない…天候で野菜が高騰しても、価格が比較的安定しています
- 使う分だけ出せる…余りが出ないので廃棄がゼロに近づきます
- 下処理の人件費が要らない…これも立派なコストです
生野菜がどうしても必要な料理はもちろんあります。サラダ・和え物のリアルで書いたとおり、加熱の要否は衛生の問題でもあります。使い分けが大事で、全部を冷凍にする話ではありません。
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工夫6|発注ロットを見直す
「まとめ買いのほうが安い」は、使い切れる場合にだけ正しいです。
大袋にして単価が10%下がっても、2割を捨てていたら損しています。値上げ局面ほど、安さより「使い切れる量か」で選ぶほうが効きます。発注の考え方は給食の発注のコツと食数管理にまとめました。
工夫7|検収を締める
地味ですが、じわじわ効きます。
数量不足、規格違い、鮮度不良。ここを黙って受け取ると、そのぶんは丸ごと自分たちの損になります。給食の検収のリアルで「仕入れの最後の砦」と書いたのは、まさにこの意味です。
【数字で効かせる】工夫8〜10
工夫8|残食を減らすことが、最大のコスト対策
これは断言できます。捨てられた食材は、原価100%の損失です。値切って数%下げるより、残食を減らすほうがはるかに大きい。
しかも残食が減るということは喜んで食べてもらえているということで、コストと満足度が同じ方向を向く数少ない施策です。具体策は給食の残食を減らす工夫に書きました。
工夫9|棚卸の精度を上げる
在庫は現金です。棚卸がいい加減だと、原価そのものが正しく出ません。
数え間違いで在庫が多く出れば原価は不当に低く見え、少なく出れば高く見える。そもそも数字が信用できなければ、どの工夫が効いたのかも分かりません。棚卸のコツは棚卸が早く正確になる管理術に、保管の考え方は給食の食材管理にあります。
工夫10|数字を現場全員で共有する
最後はこれです。原価は事務担当だけが見る数字ではありません。
パートさんに「今月ここまで来てます」と一言伝えるだけで、現場の動きが変わります。野菜の切り方が少し丁寧になる、余りものの使い道を提案してくれる。数字を抱え込まないほうが、結果的にうまくいきます。
やってはいけないこと
ここは真面目に書きます。原価のために絶対に触ってはいけないものがあります。
- 栄養量を削らない…給食は食事であって、コスト調整弁ではありません。特に高齢者施設では低栄養に直結します
- 量をこっそり減らさない…気づかれないと思っていても、必ず気づかれます。信頼を失うほうが高くつきます
- 衛生にかかる費用を削らない…消毒も検査も検食も、事故が起きたときの損失に比べれば安いものです
- 数字をごまかさない…食数や在庫の調整は、原価の問題ではなく信用の問題です
まとめ
- 値上げは続いている(2026年8月=2,311品目・平均15%、通年2万品目台の見込み)。感覚ではなくデータで押さえておく
- 委託給食は単価が契約で決まるので、値上がりぶんはいったん現場が受け止めるしかない
- 献立では毎日原価を見る/サイクルでならす/たんぱく源を分散/乾物を戦力に
- 仕入れでは冷凍野菜を活かす/使い切れる量で発注/検収を締める
- 数字では残食を減らす/棚卸の精度/現場全員で共有。とくに残食削減が最大のコスト対策
- 栄養・量・衛生・数字の正確さだけは、絶対に削らない
食材費は自分たちでは動かせません。でも使い方は自分たちで決められます。16年やってきて、結局そこに尽きると思っています。


