こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
現場で日報を書いていたころ、正直こう思っていました。「この数字、誰が見てるんだろう」。毎日書いて、月末に提出して、それきり。返事が来るのは、原価が悪かった月に「どうなってる?」と電話が来るときだけ。
いま私は、事務の仕事として複数の事業所から上がってくる日報を集めて、本部向けの資料にまとめる側にいます。そこで初めて分かりました。現場の数字は、ちゃんと見られています。それも、思っていたのとは違う形で。
今日は、現場が書いた数字が本部でどう使われるのかを、数字の「行き先」を追う形で書きます。これを知ると、日報の書き方が変わります。少なくとも私は変わりました。
※資料の様式や集計の周期は会社によって異なります。この記事は私の会社での一般的な流れを、事業所名や数値を伏せて書いたものです。事例は架空の一例です。
現場の数字は、4つの資料に流れていく
現場が毎日・毎月書く数字は、だいたい次の4つの資料にまとめ直されて、本部に届きます。
- 日報の推移表……各事業所の「今月の予想原価」を、5日ごとに横に並べたもの
- 仕入集計……各事業所の食材・備品の仕入れ累計を、月ごとに並べたもの
- 棚卸集計……月末に各事業所が数えた在庫金額を、1枚にまとめたもの
- 現場現金の集計……現場で現金払いした食材や備品を、勘定科目ごとに整理したもの
現場からは「日報」「棚卸表」「レシート」というバラバラの紙に見えますが、本部側ではこの4つが1枚の絵になって、事業所ごとの「今月の健康状態」として読まれます。順番に追っていきます。
行き先1:日報 → 推移表(5日ごとに全事業所を横に並べる)
現場の日報には、その日の食数、仕入れ、月の累計、そして「このペースで行くと今月の原価はいくらになるか」という予想原価が書かれています。日報の書き方は日報の記事で書きました。
本部側では、この予想原価を5日・10日・15日・20日・25日・月末の6回、全事業所分を1枚の表に転記します。縦に事業所、横に日付。すると、こういうことが一目で分かります。
- どの事業所が、月の途中から原価が上がってきたか……5日と15日を比べれば傾向が出ます
- 「1人あたりの原価」が目標からどれだけ離れているか……事業所の規模が違っても、1人あたりに直せば比べられます
- 行事食を除いた1人あたり原価……敬老の日や誕生日会で原価が跳ねた月でも、「普段の食事」の原価は正常か分かります
ここで現場に知っておいてほしいのは、本部は「今月の最終結果」より「途中の傾向」を見ているということです。15日の時点で原価が高ければ、残り半月で修正できる。月末に分かっても手遅れ。だから日報は毎日書く意味があるし、5日ごとの数字が正確であることが、月末の数字より大事なんです。原価率の考え方は原価率の記事に。
行き先2:日報 → 仕入集計(月間の食材費・備品費を並べる)
日報の「月間支出累計」の欄、食材と備品を分けて書いていると思います。この2つの数字は、月末に事業所別・月別の仕入集計表に転記されます。
この表で見ているのは、前月との差と、前年同月との差です。食材費が急に増えた事業所があれば、食数が増えたのか、単価が上がったのか、発注が多すぎたのかを推移表と合わせて読みます。最近は食材費の高騰で、どの事業所も上がり気味なので、「上がった」より「上がり方が他と違う」事業所を探す作業になっています。高騰への現場の工夫は食材費高騰の記事に書きました。
現場へのお願いは1つです。食材と備品を混ぜないでください。洗剤や手袋を食材に入れると、食材費が実態より高く見えて、本部から「原価が悪い」と言われます。逆もまた然り。分ける手間は、自分を守る手間です。
行き先3:棚卸表 → 棚卸集計(在庫が原価を決める)
月末の棚卸で数えた在庫金額は、事業所ごとの棚卸表から1枚の集計表にまとめられます。ここで本部が見ているのは、在庫の「額」だけではなく、仕入れと在庫の関係です。
原価は「仕入れ」ではなく「使った分」で決まります。使った分=前月末の在庫+今月の仕入れ-今月末の在庫。だから、棚卸を数え間違えると、その月の原価が実態からずれます。在庫を多く数えれば原価は良く見え、翌月に反動が来る。本部はこの反動を見ています。「先月良くて今月急に悪い」事業所は、たいてい棚卸のぶれです。棚卸の正しい数え方は棚卸のコツの記事に。
もう1つ、集計する側として毎月思うのは、「合計が合わない棚卸表」は本部の作業を止めるということです。食材の合計と備品の合計が、表紙の数字と中の明細で違う。これだけで、事業所に確認の電話が1本増えます。提出前に、表紙と明細の合計を一度だけ見比べてください。
行き先4:レシート → 現金の集計(勘定科目に分ける)
現場で現金払いした食材や備品は、レシートと現金管理の記録から、本部で勘定科目ごとに分けて経理に渡す形になります。現金の扱い方は現金管理の記事に書きましたが、ここでは「その先」の話です。
同じ「マスク」でも、現場で使えば衛生消耗品、事務所で使えば事務費。同じレシートでも、食材と備品が混ざっていれば、分けて計上します。この仕分けを本部でやるとき、一番困るのが「何を買ったか分からないレシート」です。品名が「商品」としか出ないレシートには、一言メモを添えてください。「たまねぎ」でも「洗剤」でもいい。それだけで、本部の推測が要らなくなります。
本部が本当に見ている3つのこと
4つの資料を通して、本部が見ているのは、突き詰めると3つです。
- ①傾向……今月の結果より、先月からの動き。上がっているのか、下がっているのか、他の事業所と同じ動きか
- ②説明がつくか……原価が高い月があっても、「行事食が2回あった」「食数が増えた」と説明がつけば問題ありません。説明がつかない数字だけが問題になります
- ③数字の信頼性……合計が合っている、食材と備品が分かれている、棚卸がぶれていない。信頼できる数字を出す事業所は、多少原価が高くても「あそこは分かっている」と見られます
つまり、原価が良いことより、数字が正しくて説明できることのほうが、本部からの信頼につながります。これは現場にいたころの私が一番知らなかったことです。
現場の日報が「本部に効く」書き方
- 5日ごとの区切りの日は、特に正確に……推移表に転記される日です。累計の足し忘れがそのまま本部の表に載ります
- 原価が跳ねた日は、理由を一言添える……「敬老の日の祝い膳」「納品単価の変更」。備考欄の一言が、確認の電話を1本減らします
- 食材と備品を分ける……何度でも書きます。これが一番効きます
- 棚卸は表紙と明細の合計を見比べてから出す……1分の作業で、本部の30分が浮きます
- レシートに品名メモ……「商品」だけのレシートには一言
月の締めの流れ全体は事務の1ヶ月の記事に、1食の値段の構造は1食の値段の記事に書いています。
まとめ
- 現場の数字は推移表・仕入集計・棚卸集計・現金集計の4つに流れ、事業所の「今月の健康状態」として読まれる
- 本部は月末の結果より、5日ごとの傾向を見ている。途中で直せるから
- 原価は仕入れでなく「使った分」。棚卸のぶれは翌月に反動で出る
- 本部が見ているのは傾向・説明がつくか・数字の信頼性の3つ
- 現場でできるのは、区切りの日の正確さ・理由の一言・食材と備品の分離・合計の見比べ・レシートのメモ
私が調理から事務に回った経緯は調理から事務への記事に書きました。日報を「書かされている紙」から「本部に届く自分の報告」に変えると、同じ作業が少しだけ面白くなります。数字の向こう側には、それを読んでいる人がいます。

