こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
2026年の十五夜は9月25日(金)です。高齢者施設では、敬老の日に続いて秋の楽しみになる行事のひとつです。
ただ、給食を作る側にとってお月見は「いちばん気をつかう行事のひとつ」でもあります。理由ははっきりしていて、主役である月見団子が、そのままでは出せない食べものだからです。
今日は、施設の厨房でお月見をどう作っているのか、安全の話を中心に書きます。
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※食事形態の判断は、必ず施設の管理栄養士さん・看護師さんなど専門職の指示に従ってください。
まず数字の話|団子と餅は「重症化しやすい食品」です
脅すつもりはありませんが、ここは正確に書きます。
- 令和5年、「不慮の窒息」で亡くなった65歳以上の方は7,779人。うち食物の誤嚥によるものが4,215人と、半数以上を占めています(消費者庁)
- 窒息事故の多い食品のうち、もち・寿司・団子は「重症以上」が4割以上という分析があります
- 餅による救急搬送は1月に集中しています。ただしこれは餅を食べる機会が正月に偏っているからで、団子そのものの危険性が9月に下がるわけではありません
危ないのは味ではなく物性です。団子は粘って、くっついて、まとまりすぎる。噛む力と飲み込む力が落ちた方にとって、この3つが揃った食べものは最も危険な部類に入ります。
だから現場は「食事形態ごとに4通り」作ります
お月見の日に、全員へ同じ団子を配ることはありません。食事形態に応じて、こう分けています。
- 常食の方…団子は小さめ・数を減らす。あんやみたらしをかけて滑りをよくし、必ず一口大に切って提供します。丸のまま出さないのが鉄則です
- やわらかめが必要な方…白玉粉に豆腐を混ぜて練ると、冷めても固くなりにくい団子になります。それでも小さく切るのは同じです
- きざみ食・ソフト食の方…団子は出しません。かぼちゃやさつまいもの裏ごしを丸めて「お月さま」に見立てます。これなら見た目のお月見はちゃんと成立します
- 嚥下調整食の方…市販の和風デザートやゼリーに置き換えます。区分表示があるものを選べば、判断が早くて確実です
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実は「団子だけがお月見」ではありません
ここで一度、由来の話をさせてください。作り分けの引き出しが増えます。
十五夜には「芋名月」という別名があります。里芋を供えて豊作を祈ったことに由来する呼び方です。ちなみに旧暦9月13日の十三夜は「栗名月」「豆名月」と呼ばれ、栗や枝豆を供えます。
つまりお月見は、もともと秋の実りを供えて感謝する行事であって、団子は数ある供えもののひとつにすぎません。ここが分かると、献立の選択肢が一気に広がります。
実務的にありがたいのが里芋です。やわらかく煮れば形態を落としやすく、団子のような粘りもない。そして入居者さんの世代には、里芋を供えた記憶がある方が少なくありません。私たちが思い浮かべる「お月見=団子」と、その方の記憶の中のお月見は違うことがあります(→懐かしい給食の食べもので書いた世代差の話と同じです)。
「かぼちゃのお月さま」がいちばん喜ばれる
個人的にいちばん手応えがあるのが、かぼちゃを裏ごして丸めた「お月さま」です。
色が黄色いので月に見える。甘みがあるので好まれる。何より粘りがないので安全です。裏ごし済みの冷凍ペーストを使えば、下処理の時間もかかりません。
秋はかぼちゃ・さつまいも・栗と、色でごちそうを作れる季節です。行事食の献立づくりは秋の給食メニューにもまとめています。
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食べられなくても「お月見」は届けられる
ここが行事食のいちばん大事なところだと思っています。
ミキサー食の方に団子は出せません。でも行事そのものを外す必要はないんです。
- お盆や器を秋の色にする
- すすきやうさぎの飾りを添える(食べられないものは必ず取り除ける形で)
- 献立表に「十五夜」と大きく書く
- 配るときに「今日は十五夜ですよ」とひと言添える
盛り付けと声かけだけで、行事は伝わります。見た目の作り込みについては盛り付け・配膳のコツにも書きました。敬老の日のお祝い膳のときと考え方は同じで、どの食事形態の方にも同じ行事を届けるのが目標です。
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忘れがちなのが「お茶」です
団子ばかり気にしていると抜けるのが飲み物です。
お団子のような口の中でまとまる食べものは、お茶で流し込もうとしたときがいちばん危ない。とろみが必要な方には、行事の日でも必ず指示どおりの濃さでお出しします。行事だから、来客があるから、で緩めることはありません。
水分の考え方は高齢者施設の水分補給のリアルに詳しく書いています。
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当日、厨房が気をつけていること
- 作ってから提供までを短くする…団子は時間が経つほど硬く、くっつきやすくなります
- 数を配りすぎない…「おいしいからもうひとつ」がいちばん危ない場面です
- 見守りの人手を厚くする日として共有する…厨房から施設側へ「今日は団子が出ます」と必ず伝えます
- アレルギーの確認を飛ばさない…行事食は普段使わない食材が入りがちです(→アレルギー対応食の作り方)
市販のゼリーやデザートを常備しておくと、「この方には団子を出さない」と決めたときの差し替えがすぐできます。行事の日は現場が忙しいので、この備えが効きます。
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まとめ
- 2026年の十五夜は9月25日(金)。高齢者施設では秋の定番行事
- 団子は粘る・くっつく・まとまりすぎるという、いちばん危険な物性を持つ食べもの。もち・寿司・団子は重症以上が4割以上という分析がある
- 現場は食事形態ごとに4通り作り分ける。丸のまま出さない・小さく切る・数を減らすが鉄則
- ミキサー食の方にはかぼちゃの裏ごしを丸めて「お月さま」に。市販の和風デザートやゼリーも確実な選択肢
- お茶のとろみは行事の日でも緩めない
行事食は「特別なものを出す日」ではなく、「特別を、全員に安全に届ける日」だと思っています。市販のやさしい食材を組み合わせれば、それは十分に実現できます。
今年の十五夜、施設でも家庭でも、事故なく月を見られますように。


