こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
秋になると献立にきのこが増えます。旬で安く、香りがよく、食物繊維も取れる。いいことずくめに見えます。
ただ、大量調理のきのこは、家庭で炒めるのとはまったく別の難しさがあります。1人分で起きないことが、100人分では確実に起きるんです。
大量調理シリーズの8本目として、今日はきのこを取り上げます。大量調理のコツの食材別・実践編だと思って読んでください。
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きのこが大量調理で難しい3つの理由
理由1|重さのほとんどが水
これが最大の理由です。日本食品標準成分表(八訂)によると、ぶなしめじは可食部100gあたり水分90.8g。重さの9割が水ということです。
家庭でフライパンに一掴み入れるぶんには気になりません。でも回転釜に5kg入れたら、水が数リットル出てくると考えてください。煮物なら味が薄まり、炒め物なら「炒め物のはずが煮物」になります。
理由2|加熱すると大きく縮む
水が出るということは、そのぶん体積が減るということです。生の状態で「これだけあれば十分」と思った量が、加熱後には驚くほど減ります。
発注のときに生の重さで考えていると、盛り付けの段階で「足りない」という事故が起きます。発注の考え方は給食の発注のコツと食数管理にまとめました。
理由3|色が出て、香りが飛ぶ
きのこは煮ると茶色い色が出ます。澄んだ汁物に入れると、汁が濁って見た目が落ちます。
逆に香りは、長く加熱するほど飛んでいきます。色は出るのに香りは残らない——これがいちばん残念なパターンです。
対策1|水は「先に出させてから」使う
いちばん確実なのがこれです。きのこを他の食材と一緒に煮込まない。
- 乾煎りする…油を引かずに空の釜で炒って、先に水を飛ばします。香りも立ちます
- 別に炒めておく…下処理として炒めておき、仕上げに合流させます
- 後入れにする…煮物なら最後の数分で入れる。これだけで味の薄まりがかなり防げます
煮物での味のしみこませ方は給食の煮物のリアル、汁物での扱いは味噌汁・汁物のリアルに書いています。
対策2|歩留まりを記録しておく
「加熱したらどれくらい減るか」は、一度きちんと測って記録しておくと一生使えます。
うちでは新しい食材を使うとき、生の重さと加熱後の重さを控えるようにしています。これがあると次から発注量で迷いません。数字を残すことは原価管理そのものでもあります(→給食の原価率の出し方)。
対策3|冷凍きのこという答え
正直に言うと、現場では冷凍きのこにかなり助けられています。
- 石づきを落とす手間がない…カット済みなので、買った重さがそのまま使える重さです
- 相場に振られない…価格が安定しています
- 使う分だけ出せる…余りが出ないので廃棄が減ります
- 凍ったまま加熱できる…解凍せずに使えるので段取りが崩れません
しかも、むしろきのこは冷凍したほうがうま味が増えます。冷凍で細胞が壊れることで、加熱したときにうま味成分のグアニル酸が生のときの約2倍になるという報告があります。カギは70〜80℃でしっかり加熱すること。ただし冷凍したまま長く置くとグアニル酸は分解していくので、1か月以内に使い切るのが目安です。手抜きどころか、理にかなった選択なんです。食材費が上がり続けるなかでの使いどころは食材費高騰にどう向き合うかにも書きました。
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ここがいちばん大事|きのこは「噛み切りにくい」食材です
高齢者施設で働く人間として、ここは強調しておきます。
きのこは繊維が強く、噛み切りにくい食材です。とくにえのきときくらげは要注意で、長いまま出すと口の中でまとまり、飲み込みにくくなります。噛む力が落ちた方には危険な形状です。
現場では、こう対応しています。
- 短く切る…えのきは長いまま使わず、必ず短く切ります
- 繊維を断つ向きで切る…しいたけも薄切りにして繊維を断ちます
- 形態によっては外す…きざみ食・ソフト食の方には、きのこそのものを使わずだしとして風味だけ届けるという選択もあります
食事形態ごとの考え方は高齢者施設の食事形態のリアル、市販品での置き換えはやさしい食材にまとめています。旬だから出す、で判断してはいけない食材だと思っています。
乾しいたけは、常備しておく価値がある
乾物の話です。乾しいたけは常温で長く保存でき、だしと具の両方になるという、現場にとってありがたい食材です。
戻し方にはコツがあります。冷蔵庫の中など低温で、時間をかけてゆっくり水戻しすると、うま味成分のグアニル酸が最も多くなると報告されています。前日から仕込んでおけば、朝の段取りも楽になります。
そして戻し汁は絶対に捨てないでください。あれはうま味の塊です。
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きのこは「減塩の味方」でもあります
これは知っておくと武器になります。
うま味には代表的な3つの成分があります。きのこのグアニル酸、昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸。この3つは「うま味の三大要素」と呼ばれ、組み合わせるとうま味が強まります。
塩を足さずに満足感を上げられるということです。減塩なのに美味しい給食のコツで「きちんと出汁をとる」と書きましたが、きのこはそこに乗せられる食材です。
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秋のきのこ献立、現場での組み方
最後に、献立に落とすときの感覚を書いておきます。
- 主役にせず、脇で効かせる…きのこだけの一品より、炊き込みごはん・和え物・汁物の具として入れるほうが喜ばれます
- 同じ週に重ねない…きのこは好き嫌いが分かれます。連日出すと残食が増えます
- 香りが立つ料理に使う…せっかくの香りを活かせる献立に回します
秋の献立全体の組み方は秋の給食メニューと敬老の日の行事食にあります。
まとめ
- きのこが難しいのは重さの9割が水(ぶなしめじ90.8g/100g)だから。水が出て、縮んで、色が出る
- 対策は乾煎り・別炒め・後入れで「先に水を出させてから使う」
- 歩留まりを一度測って記録しておくと、発注で迷わなくなる
- 冷凍きのこはうま味がむしろ増える(加熱時のグアニル酸が生の約2倍)。ロスも出ず価格も安定。手抜きどころか合理的な選択
- 高齢者施設では噛み切りにくさが最優先事項。えのき・きくらげは短く切る、形態によっては外す
- きのこはうま味の三大要素のひとつ。昆布・かつお節と組み合わせれば減塩の味方になる
秋のきのこは、扱いを知っていれば本当に頼れる食材です。難しいぶん、うまくいったときの手応えも大きい。今年もそんな季節がやってきました。


