こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
大量調理シリーズ、第12弾は大根です。11月から2月が旬で、冬の献立にはほぼ毎日どこかに入ってきます。おでん、ぶり大根、ふろふき大根、味噌汁、なます。家庭では「煮れば柔らかくなる野菜」ですが、100食分になると話が変わります。中心まで柔らかくならない、味がしみない、皮むきに時間を取られる。この3つで新人時代に何度も泣きました。
今日は、大根が大量調理で難しくなる理由と、現場での乗り切り方、高齢者施設ならではの注意点、そして冬の献立を書きます。
この記事でわかること
- 大根が大量調理で難しい4つの理由
- 切り方と部位の使い分け
- 高齢者施設での注意点と、冬の献立5つ
大根が大量調理で難しい4つの理由
- 中心まで火が通るのに時間がかかる……厚さ3cmの輪切りは、家庭の鍋なら20分。回転釜で100食分を重ねると、上と下で火の通りが違い、底は崩れて上は硬いということが起きます
- 煮崩れしにくい代わりに、味がしみにくい……かぼちゃやじゃがいもと逆で、形は残るのに中が白いまま。「見た目は完成、食べたら薄い」の代表です
- 皮むきが機械でできない……皮剥機は丸いじゃがいも向けで、長い大根には使えません。1本1.2kg前後を手でむくので、30本なら皮むきだけで小一時間です
- 部位で味が違う……上は甘くて硬め、真ん中は柔らかくてバランスがよく、下は辛くて水分が少ない。100食分では部位が混ざるので、同じ鍋でも当たり外れが出ます
煮物全般の「混ぜられない・釜の場所差」の話は煮物の記事に書きました。大根はその中でも「時間」と「味しみ」の2つが際立つ食材です。
現場の対策:切り方で半分決まる
厚さを揃える・面取り・隠し包丁
大量調理で一番効くのは、厚さを全部同じにすることです。2.5cmなら全部2.5cm。厚さがばらつくと、薄いのは崩れて厚いのは硬い、を同時に起こします。角を薄く削る面取りは、煮崩れしにくい大根でも角が欠けてにごりの原因になるのでやります。片面に浅く十字の切り込み(隠し包丁)を入れると、火の通りと味しみが目に見えて変わります。
皮は厚めにむきます。辛み成分は皮の近くに多いので、薄くむくと辛みが残って「大根が辛い」と残食になります。むいた皮は捨てずに、きんぴらや味噌汁の具に回すと歩留まりが上がります。
下茹でではなく、スチコンで蒸す
家庭では米のとぎ汁で下茹でしますが、100食分の下茹では釜を1つ占領します。私の現場ではスチームコンベクションで蒸してから煮汁に入れるやり方です。蒸すと中心まで均一に火が通り、釜の上下差が消えます。あとは煮汁で味を含ませるだけなので、釜に入れてからの時間が短く、崩れも減ります。器具の話は調理器具図鑑の記事に。
味は「冷めるとき」にしみる
煮物の原理と同じで、大根は煮ている間より、火を止めて温度が下がるときに味が入ります。だから配膳直前まで煮続けるより、早めに煮上げて、火を止めて置く時間を作るほうが味がしみます。ただし置く間の温度管理は必須で、65℃以上で保つか、冷やすなら30分以内に20℃以下まで下げる。この数字は衛生マニュアルを数字で読む記事にまとめています。味の入れ方全体は大量調理の味付けの記事に。
冷凍すると味がしみやすくなる
調べてみると、大根はいったん冷凍すると細胞の壁が壊れて、短時間で味がしみるようになります。業務用の冷凍カット大根はこれを利用した食材で、皮むきと下茹でを省けるので、人手が薄い日の助けになります。ただし食感は生から煮たものより少し柔らかく、透き通った見た目になるので、献立によって使い分けます。
部位の使い分け:100食では「料理を決めてから切る」
家庭では1本を上・中・下で使い分けますが、現場には箱で届きます。1本ずつ部位を分けている時間はないので、先に料理を決めて、料理に合う部位から順に切り出すやり方にしています。
- 上(葉に近い側)……甘くて硬め。なます、サラダ、大根ステーキ
- 中……一番柔らかくて甘みと辛みのバランスがよい。おでん、ふろふき、ぶり大根の煮物全般
- 下(先端側)……辛くて水分が少ない。大根おろし、味噌汁の具、漬物
煮物の日は真ん中を確保して、両端を汁物とおろしに回す。この順番を決めておくだけで「今日の大根は辛い」が減ります。
高齢者施設ならではの注意点
- 柔らかく煮れば、常食ときざみは同じ鍋でいける……大根は繊維がほぐれやすいので、しっかり煮れば常食のまま噛みやすく、きざみも同じ煮上がりから切るだけで済みます
- ソフト食・ペーストは煮上がりを使う……煮た大根をつぶして成形すると、味がついたまま形態を変えられます。形態の話は食事形態の記事に
- 大根おろしは水分が分かれてむせやすい……おろしたまま添えると、汁だけ先に喉に入ります。とろみをつけるか、おろし和えにして全体をまとめると安全です
- 生の千切りは硬い……サラダやなますは薄く切って塩もみし、繊維に対して直角に切ると噛みやすくなります
- 消化酵素は加熱で働かなくなる……「大根は消化にいい」の酵素は生のおろしの話で、煮物には当てはまりません。煮た大根の良さは、柔らかくて水分が多く、だしをよく吸うことです
大根の栄養(成分表八訂・皮むき生100g)
- エネルギー 15kcal、水分 94.6g……ほぼ水分。かさが出るのに軽い
- カリウム 230mg、ビタミンC 11mg、葉酸 33μg
- 食物繊維 1.3g
栄養で主役を張る食材ではありませんが、だしを吸って満足感を出せるのが大根の強みです。減塩の献立で「量はあるのに塩は少ない」を作れる。この考え方は減塩の記事に書きました。
冬の献立5つ
- ぶり大根……冬の定番。ぶりの脂が大根にしみる。魚は先に霜降りして臭みを取る。魚の扱いは魚の記事に
- おでん……大根は蒸してから煮汁へ。練り物は後入れ。高齢者施設では餅巾着は出さず、はんぺんと大根が主役
- ふろふき大根……柚子味噌をかけるだけで行事食の顔になる。柔らかさが命なので蒸し時間は長めに
- なます……お正月の定番。薄切り+塩もみで噛みやすく。酢の酸味は高齢者にはやや控えめに
- 切り干し大根の煮物……乾物なので通年使える。水で戻すと重さが4倍前後になるので、発注は乾燥重量で考える
切り干し大根は、生の大根が高い時期や納品が薄い週の頼れる味方です。
大根おろしは冷凍の業務用があり、おろす手間と辛みのばらつきが減るので、和え物やみぞれ煮に使いやすくなります。
大根の失敗あるある3つ
- 中心が硬い……厚さのばらつきか、蒸し時間不足。竹串が抵抗なく通るまで。100食なら真ん中の1個でなく、上と下から1個ずつ刺して確認
- 味が薄い……煮る時間でなく、火を止めてからの時間が足りない。早めに煮上げる段取りに変える
- 皮の近くが辛くて残る……皮が薄い。厚めにむいて、むいた皮は別の料理へ
まとめ
- 大根の難しさは時間・味しみ・皮むき・部位差の4つ
- 対策は厚さを揃える・面取りと隠し包丁・皮は厚めに・蒸してから煮る
- 味は冷めるときに入る。早めに煮上げて置く時間を作る。温度管理はセットで
- 100食では料理を決めてから部位を切り出す。真ん中は煮物、両端は汁物とおろし
- 高齢者施設ではおろしの水分と生の千切りの硬さに注意。煮上がりから形態を作る
大量調理シリーズはかぼちゃ、きのこと続いてきました。冬メニュー全体の考え方は冬メニューの記事に書いています。大根は地味ですが、冬の厨房で一番手に取る野菜です。切り方と段取りで、同じ大根が別物になります。


