給食の調理員と栄養士は何が違う?資格とキャリアの地図【調理員目線】

給食の調理員と栄養士は何が違う?資格とキャリアの地図【調理員目線】|キッチンのりちゃん 年収・キャリア

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

新人さんや求職中の方から、わりとよく聞かれる質問があります。「調理員と栄養士って、何が違うんですか」「調理員から栄養士になれますか」。私自身、20代のころに同じことを考えて、調べて、そして調理員のまま進む道を選びました。

今日は、給食の現場に出てくる資格を1枚の地図にして、調理員の目線で「どこで道が分かれるのか」「調理員のまま伸ばすならどこか」を書きます。制度の数字は厚生労働省や各協会の公開情報で確認しましたが、年度で変わることがあるので、受験するときは必ず最新の要項を見てください。

※登場する人物や職場の事例は架空の一例です。会社名・施設名は伏せています。

この記事でわかること

  • 調理員と栄養士の分かれ道と、現場での仕事の違い
  • 6つの資格を1枚にまとめた地図
  • 調理員から栄養士になれるのかと、調理員のまま伸ばすキャリア

まず結論:分かれ道は「学校に行くかどうか」

先に地図の全体像を言ってしまいます。給食の資格は、大きく2つの島に分かれています。

  • 働きながら取れる島……調理師、食品衛生責任者、介護食士、専門調理師・調理技能士
  • 学校に通わないと取れない島……栄養士、管理栄養士

そして、この2つの島の間には橋がありません。調理員として何年働いても、それだけで栄養士にはなれない。逆に、栄養士の学校を出ても調理師免許は自動では付いてこない。ここを最初に知っておくと、キャリアの悩み方が変わります。

現場での仕事はどう違うのか

私の現場は高齢者施設で、委託会社の調理員である私たちと、施設側の職員である管理栄養士さんが、同じ厨房のまわりで働いています。役割はこう分かれています。

  • 栄養士・管理栄養士(施設側)……献立を立てる、栄養量を計算する、入居者ごとの食事形態や制限食を決める、栄養ケアの記録を書く、家族や医師に説明する
  • 調理員(委託会社側)……指示された献立を、決まった食数・決まった形態で、時間どおりに、衛生的に作る。仕入れ、在庫、原価の管理。日報を書く

乱暴にまとめると、栄養士は「何を出すか」を決める人、調理員は「それをどう作るか」を決める人です。栄養士さんが「Aさんは今日からきざみ食で」と決め、私たちが「きざみでも見た目が崩れない切り方」を考える。

ここで大事なのは、雇い主が違うということです。私の現場では栄養士は施設の職員、つまり委託会社にとってのお客様側です。調べてみると、委託会社が栄養士を雇って献立作成まで請け負う契約もあり、その場合は栄養士も同じ会社の同僚になります。求人票を見るときは「栄養士は施設側か会社側か」を確認しておくと、入ってからの人間関係のイメージが違ってきます。

資格の地図:6つを1枚に

給食の現場で名前が出る資格を、「誰が出す」「何が要る」「試験はあるか」の3点で並べます。

調理師(国家資格・都道府県知事免許)

実務経験2年以上で調理師試験を受けるか、調理師養成施設を1年以上で卒業する。働きながら取れる代表格で、給食の現場で2年働けば受験資格ができます。

食品衛生責任者(講習で取れる)

試験ではなく6時間程度の講習で取得します。調理師免許があれば講習が免除されます。事業所に1人置く必要がある資格なので、持っていると現場責任者に近づく資格です。詳しくは食品衛生責任者の記事に。

介護食士(民間資格・3級〜1級)

公益社団法人全国調理職業訓練協会が認定する資格です。3級は受験資格なしで誰でも講習を受けられます。2級は認定校で3級を取った人、1級は2級取得後に介護調理の実務2年以上かつ25歳以上。高齢者施設の調理員には一番相性がいい資格で、食事形態の理屈を体系的に学べます。やわらかい食事の考え方は食事形態の記事とやさしい食材の記事に。

専門調理師・調理技能士(国家検定)

調理技術技能評価試験に合格すると、厚生労働大臣から称号が与えられます。受験には実務経験8年以上、そのうち調理師免許を持っていた期間が3年以上が必要(養成施設卒は短縮あり)。給食用特殊料理という区分があり、給食の調理員が目指せる最上位の技能資格です。ここまで来ると、調理師養成施設の教員資格も付いてきます。

栄養士(都道府県知事免許)

厚生労働大臣指定の養成施設で2年以上学び、卒業後に都道府県知事に申請して免許を受けます。試験はありません。その代わり、養成施設は昼間の課程だけで、通信教育も夜間もありません。ここが調理員にとっての壁です。

管理栄養士(国家資格・厚生労働大臣免許)

管理栄養士国家試験に合格して取得します。受験資格は、4年制の管理栄養士養成課程を卒業するか、栄養士免許を持ったうえで実務経験が2年制卒なら3年以上、3年制卒なら2年以上、4年制卒なら1年以上。つまり栄養士になってから、さらに実務と国家試験が要ります。

調理員から栄養士になれるのか(正直なところ)

答えは「なれる。ただし、いったん昼間の学校に2年通う必要がある」です。

働きながら受けられる試験も、実務経験で置き換えられる制度も、今のところありません。調べた範囲では、30代で調理員を辞めて養成施設に入り直した人の体験談もあります。ただ、2年間の学費と収入減を家計が支えられるかが現実的な分かれ目になります。

私は20代でここを調べて、こう考えました。「献立を決める側に回りたいのか、それとも作る側で一番になりたいのか」。私の答えは後者で、調理師を取って、数字を覚えて、事務にも回りました。その経緯は調理から事務への記事に書いています。どちらが上ということはありません。ただ、栄養士は「なるなら早いほうがいい」資格だとは言えます。

調理員のまま伸ばすキャリア

調理員の島にいたまま、できることは多いです。私の会社では、社員⇒主任⇒本部という道があり、資格はその道を歩くときの通行証になります。

  • 入社〜2年……まず現場を覚える。調理師の受験資格ができるまでの2年は、衛生と段取りを体に入れる期間
  • 2〜5年……調理師を取る。食品衛生責任者の講習を受ける。介護食士3級で食事形態の理屈を固める
  • 5年〜……主任として現場を任される。数字(原価・食数・発注)が読めると評価が変わる
  • 8年〜……専門調理師の受験資格。本部側(事務・事業所の管理)に回る道も開く

栄養士の資格がなくても、献立の組み方を理解している調理員は現場で重宝されます。栄養士さんの意図が読めるからです。「この日は魚が続くから、副菜は油を使わないんだな」と分かる調理員と、ただ作る調理員では、同じ献立でも仕上がりが違います。出世の話は出世のコツの記事に書きました。

法律の話を1つだけ:なぜ施設に栄養士がいるのか

「そもそも、なぜ施設側に栄養士がいて、委託会社が調理をするのか」。これは健康増進法の仕組みで説明がつきます。

継続的に1回100食以上または1日250食以上を提供する施設は「特定給食施設」と呼ばれ、栄養士または管理栄養士を置く努力義務があります。さらに医学的管理が必要な施設で1回300食以上または1日750食以上になると、管理栄養士の配置が義務になります。高齢者施設は多くがこの枠に入るので、施設側が栄養士を雇い、調理を委託会社に任せる、という形が生まれます。

だから、委託の調理員と施設の栄養士は制度上ペアになる関係です。どちらか一方では給食は成り立ちません。衛生の数字も同じように法令とマニュアルで決まっていて、衛生マニュアルを数字で読む記事にまとめています。

迷っている人への3つの問い

  • 「決める側」と「作る側」、どちらの仕事を10年やりたいか……献立と栄養計算が好きなら栄養士、手を動かして仕上げるのが好きなら調理員
  • 2年間、昼間の学校に通える環境があるか……ここが栄養士への現実的な条件。無理なら調理員の島で上を目指すほうが早い
  • 今の会社に、資格を評価する仕組みがあるか……資格手当や受験支援の有無は会社の選び方の記事で書いた確認項目。給料の相場は年収の記事に

まとめ

  • 給食の資格は「働きながら取れる島」と「学校に通う島」に分かれ、島の間に橋はない
  • 栄養士は昼間の養成施設2年以上・試験なし・通信なし。管理栄養士はそこから実務1〜3年+国家試験
  • 調理員の島には調理師→食品衛生責任者→介護食士→専門調理師という階段がある
  • 栄養士は「何を出すか」、調理員は「どう作るか」。雇い主が違うことも多いので求人票で確認
  • 特定給食施設の仕組みで、施設の栄養士と委託の調理員は制度上ペアになる

私は調理員の島を選びましたが、栄養士さんの仕事を理解している調理員でいることは、ずっと心がけてきました。どちらの島にいても、同じ食事を同じ人に届けている。そこは変わりません。

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