給食委託の正社員は事務もやる?調理一筋から数字を任されるまで【16年の体験談】

給食委託の正社員は事務もやる?調理から数字を任されるまでの表紙イラスト 事務・Excel

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

この仕事を始めたとき、ボクは「料理を作る仕事」だと思っていました。実際、最初の数年はひたすら作っていました。ところがいまのボクの肩書きを一言でいうと、「調理もやるし、数字もやる人」です。日報、食数管理、発注、請求書、棚卸。厨房で揚げ物をした同じ日に、事務所で電卓を叩いています。

今日は、調理しかできなかった自分が、どうやって事務を任されるようになったのかという体験談です。「給食の正社員って事務もやるの?」と気になっている方に、16年分の答えを書きます。

※記事中のエピソードは、個人や施設が特定されないよう内容を再構成した一例です。

入社した頃は、完全に「作る人」だった

入社して最初に覚えたのは、包丁でも味付けでもなく、洗浄と掃除でした。そこから盛り付け、仕込み、加熱調理と、少しずつ持ち場が増えていく。このあたりの流れは給食委託社員の1日に書いたとおりです。

当時のボクにとって、事務所は「上の人が何かやっている場所」でした。パソコンの画面に数字が並んでいるのは見えるけれど、自分には関係ない。現場で手を動かすのが仕事で、机の仕事は別の誰かの仕事。本気でそう思っていました。

最初に任されたのは「日報」だった

転機は、現場の責任を持つ立場になったときです。先輩から引き継ぎで最初に言われたのが、料理のことではなく「日報、今日から書いてね」でした。

日報というのは、その日に使った食材の金額や提供した食数を毎日記録する帳票です(詳しくは給食現場の日報のリアル)。たった1枚。でも毎日。しかも月末には、この積み重ねがそのまま原価という現場の成績表になります。

正直に言うと、最初は嫌でした。調理で疲れた後に、慣れない数字の記入が待っている。電卓を2回叩いて2回違う答えが出る。「なんでボクがこれを」と思いながら書いていた時期が、確かにありました。

正直、最初の1年はしんどかった

事務の仕事は、日報だけでは終わりませんでした。食数の管理、食材の発注、月末の棚卸、そして請求書。ひとつ覚えると、次がやってくる。

いちばん堪えたのは、数字が合わないときです。締めの日に在庫の金額がどうしても合わず、閉店後の厨房で在庫表と棚を何往復もしたことがあります(※架空の一例です)。犯人は大抵、記入漏れか数え間違いという地味なミス。派手な失敗ではなく、小さなズレが1ヶ月後に大きな顔をして現れるのが事務の怖さでした。

Excelも最初は全然使えませんでした。SUMを覚えただけで感動していたレベルです。このあたりの「どこまでできれば大丈夫か」は給食委託会社でパソコンスキルは必要?に書いたので、不安な方はそちらをどうぞ。

数字が読めるようになると、調理が変わった

ところが、です。数年続けているうちに、思ってもいなかった変化が起きました。調理の腕が上がったんです。数字のおかげで。

  • 食材の使い方が変わった……原価率(計算式はこちら)が頭に入っていると、「この食材をここで使い切れば月末が楽になる」と逆算しながら仕込めます
  • 発注の精度が上がった……日報で数字を毎日見ているから、「この献立なら残りそう」という感覚に根拠がつきました
  • ムダに敏感になった……捨てる食材が「もったいない」ではなく「いくらの損失」に見えるようになります

調理だけをやっていた頃のボクは、目の前の一食を作っていました。数字を持ってからは、1ヶ月分の食事をひとつの塊として作るようになった。同じ厨房に立っていても、見えている景色が全然違うんです。

「調理×事務」は足し算ではなく掛け算になる

16年やってきて、いま新人さんに伝えたいのはここです。

調理ができる人は、現場にたくさんいます。事務ができる人も、世の中にたくさんいます。でも「厨房のことが分かった上で数字を扱える人」は、驚くほど少ない

たとえば請求書の締め(給食の請求書のリアル)では、欠食や食事形態の変更を数字に反映させます。このとき現場を知っていると、「この日の食数、行事と合っていないのでは」と数字の違和感に気づける。逆に、事務が分かる調理員は、現場の工夫を「感覚」ではなく「数字」で説明できます。上の人に伝わるのは、圧倒的に後者です。

ボクの会社のキャリアは社員⇒主任⇒本部という流れですが、上に行くほど求められるのは、まさにこの両方でした。給食業界で出世するにはにも書きましたが、事務は「押し付けられる余計な仕事」ではなく、キャリアの武器です。あのとき嫌々書いていた日報が、いまのボクの土台になっています。

これから始める人へ|身構えなくて大丈夫

ここまで読んで「事務もやらされるのか、大変そうだな」と思った方へ。安心してください。最初から全部やる人はいません。

  • 入り口はみんな調理から……未経験で入って、まず現場を覚える。事務はその後です
  • ひとつずつしか来ない……日報から始まり、慣れた頃に次が来る。いきなり請求書は任されません
  • フォーマットがある……ゼロから帳票を作る仕事ではなく、決まった形に記入していく仕事が大半です
  • 1ヶ月のリズムで回る……流れは毎月同じ(給食事務の1ヶ月)。2〜3周すれば体が覚えます

そして、もし「数字は苦手だから」と事務を避けている方がいたら、もったいないと言わせてください。ボクも苦手でした。苦手なまま始めて、気づいたら武器になっていた。先に手を挙げた人から、代わりのきかない人になっていきます。

まとめ|「作る人」から「現場を回す人」へ

  • 給食委託の正社員は、キャリアが進むと調理に加えて事務も担当するのが一般的。ボクも日報から始まりました
  • 最初はしんどい。数字が合わない夜もある。でもミスの大半は地味な記入漏れで、慣れれば防げます
  • 数字が読めると調理そのものが変わる。食材の使い方・発注・ムダへの感覚に根拠がつく
  • 「厨房が分かって数字も扱える人」は希少。調理×事務は足し算ではなく掛け算で効く
  • 事務はひとつずつ、フォーマットに沿って覚えればいい。身構える必要はありません

「作る人」で終わるか、「現場を回す人」になるか。その分かれ道は、たぶん最初の日報を面倒くさがらずに書けるかどうか、そんな小さなところにあります。16年前のボクに、そう教えてあげたいです。


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