給食の麺類のリアル|「のびる」と戦う大量調理の段取り

給食の麺類 のびない3か条(麺とつゆは別々に・固めに茹でて余熱を計算・しめてほぐしてくっつき防止)の図解 調理スキル

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

大量調理シリーズ第7弾は麺類です。「給食に麺って出るの?」と聞かれることがありますが、出ます。うどん、そば、ラーメン風の中華麺、焼きそば、スパゲティ、夏はそうめん。麺の日は利用者さんの表情がちょっと明るくなる、人気メニューです。

ただし、給食の麺は家庭の麺とはまったくの別物。なにせ「茹でたて」を出せないのが給食という世界です。茹で上がってから、盛り付けて、配膳して、実際に食べていただくまでには時間がある。つまり給食の麺は、最初から「のびる」と戦う前提で設計されているんです。今日はその戦い方をお見せします。

※この記事に出てくる数字や手順は架空の一例です。実際の運用は施設や会社のマニュアルに従っています。

給食の麺は「のびる」との戦い

そもそも、なぜ麺はのびるのか。麺は時間が経つと、つゆや自分の表面の水分をどんどん吸い込みます。すると食感はやわやわに、つゆは煮詰まったように濃くなり、丼の中の全部が残念になっていく。茹でたてを5分で食べられる家庭と違って、給食では茹で上げから食事まで30分以上かかることも珍しくありません。この時間差こそが、給食の麺の最大の敵です。

のびる問題への答えは、根性ではなく段取りです。代表的な工夫を3つ紹介します。

  • 麺とつゆは別々に用意して、直前に合わせる──かけうどんを朝から丼に張っておいたら、お昼には麺がつゆを全部吸ってしまいます。だから麺は麺、つゆはつゆで保管して、提供の直前に合わせる。これが給食の麺の大原則です。
  • 固めに茹でて、余熱を計算に入れる──茹で上げた麺は、水を切ったあとも自分の熱で柔らかくなり続けます。食べる瞬間にちょうど良くなるよう、あえて手前で引き上げる。汁物の記事で書いた「飲む瞬間に照準を合わせる」と同じ考え方です。
  • しめて、ほぐして、くっつき防止──茹でた麺を山盛りのまま置くと、あっという間にひとかたまりの「麺の塊」になります。冷たい麺は水でしっかりしめる。焼きそばやスパゲティは油を軽くまぶして、ほぐしながら配缶する。地味ですが、これをやるかどうかで提供時の姿が全然違います。

大量の麺を茹でるのは、意外と力仕事

100人分の麺を茹でる時に一番気をつけるのは、実は一度に入れすぎないこと。大鍋でも、乾麺をドサッと入れれば湯温が一気に下がって、再沸騰までの間に麺の表面だけが溶けてベタつきます。揚げ物の記事で書いた「油の温度を落とさない」と同じ原理で、麺も何回かに分けて、湯温を保ちながら茹でます。

そして茹で上がったら、重い麺をざるで受けて、水にさらして、しめる。夏場のそうめんの日は、湯気との戦いも合わさって、厨房はなかなかの運動量です。「そうめんは楽そう」と言われると、ちょっとだけ心の中で反論しています。

焼きそばとスパゲティには、また別の敵がいます。配缶して保温すると、蒸気がこもって麺同士がくっつき、取り分けるときに固まりでゴソッと出てくる。対策は、和える前に油を軽くまぶすこと、配缶の直前にもう一度ほぐすこと、そして深く積みすぎないこと。スパゲティはソースを全部絡めず、一部を上からかける形にすると、時間が経ってもソースの味が立ちます。

高齢者施設ならではの麺の工夫

ここからは高齢者施設ならではの話。誤嚥に関わる内容なので、まじめにいきます。

まず、麺は短くカットして提供することが多いです。長い麺は「すする」力が必要な食べ物で、すする動作は実はけっこう難しい。短くカットしてあれば、スプーンやフォークですくって、無理なく食べられます。

次に、つゆと麺の「二相性」。サラサラの液体と固形物が口の中に同時に入る食べ物は、飲み込みのタイミングが取りにくく、むせやすいと言われています。水分補給の記事で書いたとおり、必要な方にはつゆにとろみをつける、麺だけを食事形態に合わせて刻むなどの対応をします。誰にどの対応をするかは、看護師さんや管理栄養士さんといった専門職の指示に従って、名簿と食札で確実に。厨房が勝手に判断しないのは、食事形態の記事で書いたとおりです。

やわらかく煮込んだうどんは、実は高齢者食と相性のいい麺でもあります。煮込みうどんなら麺がつゆを含んで飲み込みやすく、体も温まる。「のびる」が弱点ではなく味方になる料理もあるんです。

季節の麺カレンダー

麺は季節の行事とも相性抜群です。

  • ──冷やしそうめん、冷やし中華。夏メニューの記事でも書きましたが、食欲が落ちる時期のさっぱり麺は強い味方です。七夕にそうめんを出す施設も多いですね。
  • ──きのこうどん、月見そば。旬の食材と合わせやすいのも麺の良さです。
  • ──冬メニューの主役級、年越しそば。12月31日の昼食に短くカットしたおそばを出すと、「今年もこれを食べられた」と喜んでいただけます。鍋焼き風うどんも人気です。

ちなみに麺の日の味見は、つゆだけ、麺だけではなく、必ず合わせた状態でひと口。つゆ単体でちょうど良い味は、麺と合わせると薄く感じることが多いからです。麺が吸う分、つゆは気持ち濃いめに作っておく。このさじ加減も、何百回と麺の日を繰り返して体に入った感覚です。そして麺の日の裏側では、ざるとボウルの洗い物がいつもの1.5倍になっているのでした。

まとめ:のびる前提で、おいしい瞬間を届ける

給食の麺は、茹でたてを出せないというハンデを、段取りと工夫でひっくり返す料理です。麺とつゆは直前に合わせる、固めに茹でて余熱を計算、短くカットして安全に。どれも「食べる瞬間においしく、安全に」から逆算した現場の知恵です。

大量調理シリーズは大量調理のコツを入口に、サラダ・和え物まで7本になりました。あわせて読んでいただけたらうれしいです。

それでは、また次の記事でお会いしましょう。キッチンのりちゃんでした。

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