こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
毎年夏になると、厨房で働く仲間の顔色が気になります。給食の厨房は、真夏になると体感40℃を超える日が普通にある職場です。回転釜は炊いている、スチコンは蒸気を吐いている、フライヤーは180℃。そこにエプロン・マスク・帽子のフル装備ですから、条件だけ見れば「熱中症になってください」と言わんばかりの環境です。
それでも食事の時間は毎日来ます。だからこそ、根性ではなく仕組みで身を守ることが大事です。今回は、私が現場で16年やってきて「これは効く」と感じている厨房の暑さ対策をまとめます。
なぜ厨房は熱中症のリスクが高いのか
厨房が危ない理由は、気温だけではありません。
- 湿度が異常に高い:茹で物・蒸し物・洗浄機の蒸気で、湿度80%超えも珍しくありません。湿度が高いと汗が蒸発せず、体温が下がらなくなります
- 装備が重い:帽子・マスク・エプロン・長袖。衛生上どれも外せませんが、熱がこもります
- のどが渇く前に忙しさが来る:提供時間前のピークは水を飲む余裕すらなく、気づいたら2時間飲んでいなかった、が起こりがちです
- 「暑いのが当たり前」の職場文化:ベテランほど我慢してしまい、倒れる直前まで言い出さないことがあります
特に危ないのは朝イチから仕込みに入る日と、洗浄のラストスパート。体が暑さに慣れていない7月前半と、疲労がたまった月末も要注意です。
対策①水分補給は「仕組み」にする
一番大事で、一番サボられがちなのが水分補給です。ポイントは、のどが渇いてから飲むのでは遅いということ。渇きを感じた時点で、すでに脱水は始まっています。
現場でやってほしいのは、飲むタイミングを「個人の判断」から「決まりごと」に変えることです。
- 時間で区切る:「10時と14時は全員水分タイム」のように、作業の切れ目に飲む時間を組み込む
- 置き場所を決める:個人の水筒を休憩室ではなく、衛生区域外のすぐ手に取れる場所に置く(厨房内への持ち込みは施設のルールに従ってください)
- 塩分も忘れずに:大量に汗をかく日は水だけだと塩分が薄まり、かえって危険です。塩分タブレットやスポーツドリンクを併用します
「飲みたい人が飲む」ではなく「全員で飲む」。これだけで、言い出せない人を守れます。
対策②服装と装備でできる工夫
衛生基準は崩せませんが、その範囲内でできることは結構あります。
- 速乾インナーを着る:白衣の下に綿のTシャツを着ると、汗を吸って重く冷えなくなります。スポーツ用の速乾インナーに変えるだけで体感がかなり違います
- 替えのインナーを持ってくる:昼の休憩で一度着替えると、午後の体力の残り方が全然違います
- 冷感タオルの活用:休憩時に首元を冷やすと回復が早くなります。首・脇・脚の付け根など、太い血管が通る場所を冷やすのが効率的です
ネッククーラーなどの冷却グッズを作業中に使えるかどうかは、異物混入のリスクとの兼ね合いで施設ごとに判断が分かれます。勝手に使わず、必ず責任者に確認してください。
対策③作業の組み立てで「火の前の時間」を減らす
調理の段取り自体も、立派な暑さ対策になります。
- 加熱作業を涼しい時間帯に寄せる:煮物の仕込みなど前倒しできる加熱は、気温が上がりきる前の午前早めに済ませる
- スチコンに任せる:釜の前に立ち続ける料理を減らし、入れたら離れられるスチコン調理に置き換えられないか献立段階で考える
- 火の前の担当を交代制にする:揚げ物担当を一人に固定せず、30分〜1時間で交代する
「今日の献立は揚げ物と炒め物が重なっているから、火の前が長くなるな」と朝の時点で気づけると、担当の組み方で負荷を分散できます。これは体力の問題ではなく、段取りの問題です。
対策④職場としてやるべきこと
個人の工夫には限界があります。委託給食会社の社員として現場を預かる立場からいうと、職場側の仕組みづくりが本丸です。
- スポットクーラー・大型扇風機の設置:設備投資が必要なものは、現場から会社と施設に声を上げないと始まりません。「暑い」ではなく「作業場所の温度計で何℃だった」と数字で伝えると動いてもらいやすいです
- 休憩のローテーションを守る:忙しい日ほど休憩が削られがちですが、忙しい日ほど確実に回す。休憩を削って乗り切る現場は、いつか誰かが倒れます
- 声かけをルールにする:「顔が赤い」「汗が止まっている」「反応が鈍い」に気づいたら、本人の「大丈夫です」を信じずに休ませる。熱中症は本人の自覚より周りの目のほうが正確です
熱中症のサインと最初の動き
それでも起きてしまったときのために、サインと初動は全員が知っておくべきです。
危険なサイン:めまい・立ちくらみ、大量の汗(または汗が急に止まる)、頭痛、吐き気、ぼーっとして受け答えがおかしい。
最初の動き:涼しい場所に移動→首・脇・脚の付け根を冷やす→水分と塩分を補給。自力で水が飲めない、意識がおかしい場合は迷わず救急車です。「様子を見よう」が一番危険な判断です。
以前、真夏の洗浄中にふらついた仲間を、周りの声かけで早めに休ませて大事に至らなかったことがあります(※事例は架空の一例です)。あのとき「もう少し頑張れそう」と本人に任せていたらと思うと、今でもぞっとします。
まとめ:暑さ対策は「調理技術」のひとつ
夏の厨房で倒れずに提供を続けるのは、根性ではなく技術です。
- 水分補給は個人任せにせず、全員の決まりごとにする
- 速乾インナーと着替えで体への負担を減らす
- 段取りで「火の前の時間」そのものを減らす
- 設備と休憩は職場の仕組みとして守る
- サインに気づいたら本人の「大丈夫」を信じない
給食の仕事は、作る人が健康でいてはじめて成り立ちます。おいしい食事の前に、まず自分と仲間の体を守ってください。それが結局、利用者さんの食事を守ることにつながります。
夏の現場に関しては、夏の食中毒対策と夏バテ対策の献立づくりもあわせてどうぞ。忙しい日の乗り切り方は忙しい日の段取り術、体調管理全般は調理員の健康管理で詳しく書いています。新人さんは新人調理員が最初に覚えたい10のこともぜひ。


