こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
夏の暑さがようやく落ち着いてくる9月。厨房で「今年もこの季節が来たな」と思うのが、秋の献立と敬老の日です。
秋は食材が一番おいしくなる季節で、献立を組むのが楽しい時期。そして高齢者施設にとって、敬老の日は1年でいちばん大事な行事のひとつです。今回は、秋の給食メニューの工夫と、敬老の日の行事食のリアルを書いていきます。
秋は「食材が主役」になれる季節
夏は食欲が落ちる方が多く、いかに食べてもらうかに頭を使います。それが秋になると空気が変わります。涼しくなって食欲が戻り、残食が目に見えて減るのが秋です。
しかも旬の食材が強い。さつまいも、かぼちゃ、きのこ、栗、さんま、鮭、新米、柿、ぶどう、梨。秋は凝った味付けをしなくても、素材の力だけで「おいしい」が成立します。
献立に季節感を出すと、それだけで喜ばれます。「今日、栗ごはんなんだね」と声をかけてもらえる。食事が単なる栄養補給ではなく、季節を感じる時間になる——秋はそれが一番やりやすい季節だと思っています。
秋の食材には、高齢者施設ならではの注意点がある
ただし、おいしい秋の食材には注意すべき点もあります。ここは真剣な話です。
- きのこ類は繊維が強い……しいたけ、えのき、しめじは噛み切りにくく、口の中に残りやすい食材です。繊維を断つ方向に切る、細かくする、あんかけでまとめるなどの工夫が要ります
- さつまいも・栗・かぼちゃはパサつく……水分が少なくむせやすいので、煮汁を含ませる、あんをかける、汁物と一緒に出すなど「飲み込みを助ける組み合わせ」で考えます
- さんまなど秋の魚は骨……骨取り処理された切り身を使うのが基本ですが、それでも目視だけでなく手で触って確認します。「骨なし」表示でも残っていることがあります
- 果物は皮と種……柿やぶどうは皮をむき、種を除き、食べやすい大きさに。ぶどうは丸のままだと窒息のリスクがあるので、切る・むくは必須です
秋の食材はおいしい反面、「パサつく」「繊維が強い」「種や骨がある」という高齢者にとってのハードルがそろっています。旬を出すことと、安全に食べてもらうことはセットで考えます。
お月見団子は、そのままでは出せない
秋の行事といえばお月見。ただし白玉団子は高齢者にとって窒息リスクの高い食品の代表格です。もちもちして粘りが強く、飲み込みづらいためです。
そこで現場では、見た目のお月見らしさを残しつつ形を変えます。団子の代わりにやわらかく調整したものにする、小さくして必ずあんや汁と一緒に提供する、ゼリーで月に見立てる——といった具合です(※対応は架空の一例です。実際は施設の基準と、管理栄養士や看護師との相談で決めます)。
行事食は「季節を楽しんでもらうこと」が目的であって、無理をして同じ形にすることが目的ではありません。安全に食べられる形で季節を届けるのが、私たちの仕事です。
敬老の日は、1年でいちばん気合いが入る日
そして9月の主役が敬老の日です。高齢者施設にとって、この日は特別な意味を持ちます。利用者さんが主役の日だからです。
お祝い膳の中身は施設によって違いますが、赤飯、茶碗蒸し、煮物、季節の天ぷら、紅白のデザートなど、「見て華やか、食べておいしい」を全部乗せにすることが多いです。お品書きを付けたり、器を変えたりして、いつもと違う特別感を出します。
行事食は前月に試作をして、施設の方に試食してもらい、味と見た目を相談してから本番に臨みます。特に敬老の日は「ご家族が来られる」こともあるので、いつも以上に盛り付けに時間をかけます。
準備は大変です。工程が増え、器も増え、当日の厨房はいつもよりバタバタします。それでも「きれいだねえ」「今日はごちそうだ」と言ってもらえた瞬間に、全部報われる。16年やってきて、この日の手応えだけは毎年変わりません。
もちろん、お祝いの日も配慮は同じ
大事なのは、お祝い膳でも食事形態とアレルギーの対応は普段どおり徹底することです。
常食の方には華やかなお膳、きざみ食やペースト食の方には形態を変えつつ、彩りと特別感は落とさない。ここを手を抜くと「自分だけ違う」という気持ちにさせてしまいます。ペースト食でも三色そろえる、型で抜いて形を作る、といった工夫で「同じ日を同じように祝う」ことを大事にしています。
秋のもうひとつの行事、お彼岸と新米
敬老の日の陰に隠れがちですが、秋のお彼岸も現場では意識する行事です。定番はおはぎ。ただしもち米は粘りが強く、団子と同じく飲み込みに注意が必要な食材です。うるち米の割合を増やす、小さくする、あんを多めにしてまとまりを持たせるなど、食べやすさに寄せて調整します。
そしてもうひとつ、秋は新米に切り替わる時期です。新米は水分を多く含んでいるので、いつもと同じ水加減で炊くとやわらかくなりすぎることがあります。切り替わりのタイミングでは水を少し控えめにして、炊き上がりを見ながら微調整します。大量炊飯は失敗すると全員分がやり直しになるので、ここは毎年きちんと確認する場面です。
秋は行事も食材の切り替えも重なるぶん、事前の段取りがものを言う季節でもあります。
まとめ:秋は給食がいちばん楽しい季節
- 秋は食欲が戻り、旬の食材の力で献立が組みやすい
- ただしきのこの繊維、いも類のパサつき、魚の骨、果物の種には要注意
- お月見団子など窒息リスクの高いものは、形を変えて季節感を届ける
- 敬老の日は前月から試作して臨む一大イベント
- お祝いの日こそ、食事形態とアレルギーの配慮は普段どおりに
夏を乗り切った後の秋は、現場にとってもひと息つける季節です。旬のものを、その人が食べられる形で、おいしく。それができたときがいちばん嬉しい季節でもあります。
ほかの季節の工夫は夏メニューの工夫と冬メニューの工夫で書いています。行事食の作り方は行事食のリアル、1年の流れは給食現場の1年カレンダー、食事形態の基本は食事形態のリアル、新米の水加減については大量炊飯のコツもあわせてどうぞ。


