高齢者施設のクリスマス給食、ケーキはどう出す?【常食からペーストまで食事形態別の出し方と段取り】

高齢者施設のクリスマス給食、ケーキはどう出す?|キッチンのりちゃん 調理スキル

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

11月に入ると、高齢者施設の厨房ではクリスマスの準備が始まります。献立の打ち合わせ、ケーキの試作、飾りの材料の発注。12月は年末年始の準備も重なるので、クリスマスは「11月のうちに8割決めておく」行事です。

そして一番悩むのがケーキです。お店のショートケーキをそのまま出せる利用者さんは、施設によっては半分もいません。かむ力、飲み込む力、アレルギー。それでも全員に「同じケーキを食べた」と感じてもらいたい。今日は、そのための食事形態別の出し方と、前月からの段取りを書きます。

※食事形態の呼び方や基準は施設ごとに違います。実際の提供は施設の栄養士・医師の指示に従ってください。事例は架空の一例です。

この記事でわかること

  • 高齢者施設でお店のケーキをそのまま出せない理由
  • 常食・きざみ・ソフト・ペーストの食事形態別のケーキの出し方
  • 前月の試作から当日のデコレーションまでの段取りと衛生の注意

普通のケーキがそのまま出せない3つの理由

  • スポンジがパサつく……スポンジは口の中の水分を吸って、ばらけやすい食べ物です。飲み込む力が弱い方には、むせやすい形になります
  • いちごの粒と固さ……丸ごとのいちごは、かむ力が弱い方には大きすぎます。表面がつるっとしていて、口の中で逃げやすいのも難しいところです
  • アレルギー……ケーキには卵・乳・小麦が入るのが普通です。どれもアレルギー表示の対象になる食材なので、該当する利用者さんには別の形を用意します。アレルギー食の考え方はアレルギー対応の記事にまとめています

だからといって、「この方はケーキなし、ゼリーで」で済ませると、行事の楽しみが半分になります。目指すのは形と色をそろえて、見た目は全員同じケーキにすることです。

食事形態別:同じケーキに見せる4つの出し方

食事形態の違いそのものは食事形態の記事に書きました。施設によっては、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類のコード(2-1、3など)で指示が来ます。ここではよくある4つの呼び方で書きます。

① 常食:しっとりさせて、いちごは切る

常食の方も、高齢になるとかむ力や唾液の量は落ちています。スポンジにはシロップをしっかり打ってしっとりさせ、いちごは半分か4つ割りにします。クリームは多めにしたほうが、口の中でまとまりやすくなります。

② きざみ:「細かく刻む」より「ひと口大でしっとり」

ケーキを細かく刻むと、スポンジの粒が口の中でばらけて、かえって飲み込みにくくなります。ひと口大に切ってからクリームやソースでまとめるほうが向いています。いちごは小さく切るか、ソースにして上からかけます。

③ ソフト食:ムースで「ケーキの形」を作る

ソフト食は、舌でつぶせるやわらかさが目安です。スポンジの代わりにミルクやいちごのムースを型に流して固め、2層にしてケーキの断面に見せるのがよくある方法です。上に絞ったクリームと、いちごのピューレを少し。見た目はかなりケーキらしくなります。

④ ペースト・ゼリー:なめらかさを最優先に

ペースト食やゼリー食の方には、粒を残さないなめらかさが一番大事です。ムースをさらになめらかにしたもの、またはミキサーにかけたケーキをゲル化剤で固め直します。ゲル化剤やとろみ剤の違いはやさしい食材の記事で紹介しています。どの形態でも、指示されたかたさを勝手に変えないのが絶対のルールです。

4つとも、同じお皿、同じ飾り(ピックや紙のツリー)、同じ色のソースでそろえると、テーブルに並んだとき差が目立ちません。ただし飾りのピックは食べられないので、ペースト食やゼリー食の方のお皿には付けず、配膳のときに外すなど、施設の方針に合わせます。

前月の試作から当日までの段取り

行事食は行事食の記事でも書いたとおり、前月の試作から始まります。クリスマスの流れは、だいたいこうです。

  • 11月前半:献立の打ち合わせ……施設の栄養士と、メイン料理・ケーキの形・形態別の作り方を決める。アレルギーと形態の人数もここで確認
  • 11月後半:試作……形態ごとに1個ずつ作って、かたさ・見た目・作業時間を確かめる。写真を撮って当日の見本にする
  • 12月上旬:発注……生クリーム、型、飾りの材料。年末の配送スケジュールと重なるので、早めに業者へ。年末年始の動きは年末年始の記事に
  • 前日:土台を作る……スポンジ焼き、ムースの仕込み。固まる時間がいるものは前日に
  • 当日:デコレーションは配膳の直前……クリームを絞るのは最後。早く飾ると、いちごから水が出たり、クリームがだれたりします

盛り付けを速くそろえるコツは盛り付けの記事にまとめました。形態ごとに1皿ずつ見本を先に作り、それを見ながら並べると、作る人によるばらつきが減ります。

デコレーションは「加熱しない作業」と考える

ケーキの飾り付けは、加熱しない食べ物を素手に近い距離で扱う作業です。衛生の面では、ここが一番気をつけるところです。

  • 手洗いと手袋……飾り付けの前に手洗いをして、使い捨て手袋を着ける。途中でほかの作業をしたら手袋を交換。手洗いの場面は手洗いの記事に
  • 温度……生クリームや飾り付けたケーキは、提供まで冷蔵庫(10℃以下)へ。常温に出しっぱなしにしない
  • 時間……作ってから食べるまでは2時間以内が目安。だから「当日の配膳直前」に飾ります
  • 検食……形態ごとに取っておく。ケーキも例外ではありません

ケーキ以外のクリスマス献立

ケーキが主役ですが、食事も少しだけ特別にします。

  • チキン……骨付きはやめて、骨なしのもも肉をやわらかく煮るか焼く。ソフト食の方には同じソースをかけたやわらか煮
  • スープ……かぼちゃやじゃがいものポタージュは、形態を変えやすく、色もきれいです
  • 彩り……ブロッコリーの緑と、にんじんやパプリカの赤。クリスマスの色はこの2つで十分です

冬の献立全体の考え方は冬メニューの記事に、1年の行事の流れは1年カレンダーの記事にあります。

架空の一例:80食の施設のクリスマス

※以下は架空の一例です。

利用者さん80人の施設で、常食40・きざみ15・ソフト15・ペースト10、卵アレルギー2人だったとします。

  • 常食ときざみ食は、同じスポンジから作る(切り方とまとめ方を変えるだけ)
  • ソフト食とペースト食は、同じいちごムースを使い、かたさだけ変える
  • 卵アレルギーの2人は、卵を使わないムースケーキを別の器具で先に作り、ラップと名札で分けて冷蔵庫へ
  • 前日にスポンジとムースを仕込み、当日は昼食の片付けが終わってから、おやつの時間に合わせて飾り付け

この例のポイントは、土台を2種類に絞って、形態ごとの違いを「切り方・まとめ方・かたさ」で出したことです。形態ごとにまったく別のケーキを作ると、作業がふくらんで当日に間に合いません。

まとめ

  • 高齢者施設のクリスマスは11月のうちに8割決める
  • お店のケーキがそのまま出せないのはスポンジのパサつき・いちごの粒・アレルギーの3つ
  • 形態別に常食はしっとり、きざみはひと口大、ソフトはムースで形、ペーストはなめらかさ
  • 同じお皿・同じ色で並べて、見た目は全員同じケーキに
  • デコレーションは配膳直前・手袋・10℃以下・2時間以内

クリスマスのケーキは、1年でいちばん「おいしいね」と声が聞こえる日のひとつです。形態がどうであっても、同じケーキを前にして同じ時間を過ごせる。そのための工夫を、厨房は1か月前から積み上げています。

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