給食の厨房が少人数の日、衛生はどこを守る?【人が足りなくても削ってはいけない5つ】

給食の厨房が少人数の日、衛生はどこを守る?|キッチンのりちゃん 衛生管理

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

秋から冬にかけて、給食の厨房で増えるのが「今日は人が足りない」という朝です。体調不良の人が休むのは正しい判断ですが、そのぶん残った人で同じ食数を出さなければいけません。

そして、人が少ない日ほど事故は起きやすくなります。急ぐ、1人で何役もやる、確認してくれる人がいない。衛生のミスは、たいてい「忙しくて省いた1つ」から始まります。

今日は、少人数の日に絶対に削ってはいけない5つと、反対に順番や頼み方を変えて軽くできる手間を、マニュアルの根拠と一緒に整理します。

※基準は厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルにもとづく執筆時点の内容です。実際の運用は会社・施設のルールと責任者の指示に従ってください。事例は架空の一例です。

この記事でわかること

  • 少人数の日に衛生のミスが起きやすい理由
  • 人が足りなくても絶対に削ってはいけない5つ
  • 順番と頼み方を変えて軽くできる手間と、普段の備え

少人数の日が危ない4つの理由

  • 急ぐ……時間が足りないと、手洗いや温度の確認が「たぶん大丈夫」で済まされがちです
  • 1人で何役もやる……下処理をした手で、そのまま盛り付けに入るような動きが出てきます
  • 確認する人がいない……普段なら隣の人が気づく「あれ、測った?」の一言がありません
  • 疲れている……休んだ人の分を数日続けて埋めると、残った人の体調まで崩れます

どれも、その人の気持ちの問題ではありません。人数が減ったときの「仕組み」を決めていないことが原因です。

マニュアルはもともと「人数に合わせて」と書いている

大量調理施設衛生管理マニュアルには、少人数の日に効く一文があります。

  • 献立は、施設の人員などの能力に余裕を持って作る
  • 調理工程表では、汚染作業区域から非汚染作業区域への移動をできるだけ減らす
  • 衛生管理者は、工程表をもとに作業分担を事前に十分打ち合わせる

つまり「人が少ないなら、同じやり方を速くこなす」のではなく、人数に合わせて作業の組み方を変えるのがマニュアルの考え方です。マニュアルとHACCPの関係はHACCPをやさしく読む記事で書きました。

絶対に削ってはいけない5つ

① 朝の健康チェック

人が足りない日ほど「少しくらいの下痢なら出てほしい」という空気になりがちです。でもマニュアルでは、下痢・嘔吐・発熱・手の化膿した傷がある人は調理に従事させないのが責任者の義務です。1人足りないのは大変ですが、体調の悪い人が入って集団感染を起こせば、その日どころではなくなります。判断の基準は休む基準の記事にまとめています。

② 区域をまたぐときの手洗いと交換

少人数の日に一番崩れやすいのがここです。汚染作業区域から非汚染作業区域に移るときは、手洗いを2回。下処理場から調理場へ移るときは外衣や履き物を交換(難しければ履き物を消毒)。使い捨て手袋もこの場面で交換します。1人で下処理と調理を兼ねる日は、ここを飛ばすと下処理の汚れがそのまま盛り付けまで運ばれます。手洗いの場面は手洗いの記事に詳しく書きました。

③ 中心温度の測定と記録

加熱した料理は、中心温度を3点以上測って75℃以上を確認し、そこから1分以上加熱(二枚貝などノロウイルスのおそれがある食品は85〜90℃で90秒以上)。急いでいる日に「いつもの時間だけ火にかけたから大丈夫」は通りません。量や鍋が変われば火の通りも変わります。温度計そのものの確かめ方は温度計の記事にあります。

④ 冷ます時間と提供までの時間

加熱後に冷ます料理は、30分以内に中心温度20℃付近(または60分以内に10℃付近)まで下げるのが目安です。調理が終わってから食べるまでは2時間以内が望ましいとされています。人が少ないと「作り置きして早めに終わらせたい」と考えがちですが、早く作りすぎると、この時間を超えてしまいます。

⑤ 検食の保存

原材料と調理済みの料理を50g程度ずつ密封し、−20℃以下で2週間以上保存します。万が一のときに原因を調べるための大事な証拠です。忙しい日に一番忘れやすいのは、実はこれです。

この5つは、記録もセットです。あとでまとめて書くと、数字が丸まったり抜けたりします。書き方のコツは衛生記録の記事にまとめました。

順番と頼み方を変えて軽くできる手間

削ってはいけないものがある一方で、やり方を変えれば軽くなる手間もあります。ポイントは「省く」ではなく「組み直す」です。

  • 下処理は先にまとめて終わらせる……下処理と調理を行ったり来たりすると、そのたびに手洗いと交換が必要です。下処理を一気に終わらせてから着替えて調理に入れば、移動は1回で済みます。マニュアルの「移動をできるだけ減らす」そのものです
  • 手のかかる献立は早めに相談する……飾り切りや細かい刻みが多い献立は、人が少ない日にはそれだけで時間を取られます。献立を変えるかどうかを決めるのは施設側の栄養士なので、現場で勝手に変えず、責任者を通して早めに相談します
  • 作業の順番を朝に決めて共有する……人が少ない日は、始業前の5分で「誰が、何を、どの順で」を口に出して確認します。普段の手順表があれば、それをもとに割り振るだけです
  • 応援は早めに頼む……会社によっては、本部や近くの事業所から応援が来ることがあります。頼むなら前日か朝一番。昼前に頼んでも間に合いません
  • 洗い物はまとめて最後に回す……盛り付けや配膳の前後で手を止めず、汚れた器具は決まった場所にまとめておき、配膳が終わってから片付けます

架空の一例:4人の現場で2人休んだ朝

※以下は架空の一例です。

4人で朝昼夕を回している現場で、1人が発熱、1人が家族の嘔吐で休みになったとします。残りは2人です。

  • 朝6時……責任者が本部に連絡し、昼からの応援を依頼。施設の栄養士に、昼の和え物の刻みを減らせないか相談
  • 朝の調理……1人が下処理を全部まとめて担当し、もう1人は加熱と盛り付けに専念。区域をまたがない分け方にする
  • 温度と検食……「測った人が、その場で書く」をルールにする。検食は盛り付け担当が配膳前に必ず取る
  • 昼から……応援の人に洗い物と配膳を任せ、2人は昼と夕の調理に戻る

この例で大事なのは、人が減っても「誰が汚れた作業をして、誰がきれいな作業をするか」を最初に分けたことです。全員が全部をやろうとすると、どうしても手洗いと交換が飛びます。

少人数の日に慌てないための普段の備え

  • 手順表を「人数別」に用意しておく……4人の日、3人の日、2人の日の分担を前もって決めておく
  • 置き場所をそろえる……検食袋、温度計、記録用紙の場所が決まっていれば、応援の人でも迷いません
  • 応援を頼む連絡先を貼っておく……誰が責任者でも、朝一番に電話できるようにする
  • 休む人が気まずくならない空気をつくる……「休まれると困る」が強い現場ほど、体調が悪い人が無理して出てきます

身だしなみや衛生の基本は身だしなみの記事と衛生管理ミス10選にまとめています。少人数の日は、こうした基本が一番試される日です。

まとめ

  • 少人数の日は急ぐ・兼務・確認なし・疲れでミスが起きやすい
  • マニュアルはもともと人数に合わせて献立と工程を組む考え方
  • 削ってはいけないのは健康チェック・区域をまたぐ手洗いと交換・中心温度・冷却と提供時間・検食の5つ
  • 軽くするなら下処理をまとめる・献立は早めに相談・朝に分担を共有・応援は早めに
  • 普段から人数別の手順表を用意しておけば、当日慌てない

人が足りない日は、誰でも焦ります。でも、焦った日に省いた1つが、利用者さんの体調に直結するのが給食の仕事です。「人が少ない日こそ、5つだけは守る」。これを現場の合言葉にしてください。

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