「アレルギー対応食って、そんなに気をつけなあかんの?」
はっきり言います。給食の仕事で一番神経を使うのが、このアレルギー対応です。なぜなら、たった一度のミスが入居者様・園児の命に関わるから。この記事では、業界歴16年の現役社員が「ミスをゼロにする3つのルール」を現場目線で解説します。
この記事を書いた人
| 名前 | キッチンのりちゃん |
| 業界歴 | 16年(給食委託会社 正社員) |
| 担当 | 3事業所(高齢者施設・保育園など) |
| 資格 | 調理師免許/食品衛生責任者 |
なぜアレルギー対応は「絶対にミスできない」のか
食物アレルギーは、ひどい場合アナフィラキシー(呼吸困難・血圧低下など)を引き起こし、命に関わることがあります。特に給食現場は、抵抗力の弱い乳幼児・高齢者が毎日利用する場所。だからこそ、一般の飲食店より何段も厳しい基準で対応します。
まず知っておきたい|アレルゲンの基本
食品表示で表示が義務づけられている「特定原材料」は8品目です。
- えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)
さらに、表示が推奨されている「特定原材料に準ずるもの」が約20品目(大豆・ごま・さば・りんご・やまいも など)あります。現場ではこれらも含めて、施設ごとの個別指示に従って対応します。
ミスをゼロにする3つのルール
ルール①:情報の確認を「二重・三重」に
すべての出発点は正確な情報です。
- 医師の診断・指示書に基づいて対応する(自己申告だけで判断しない)
- 献立は前日までに除去内容を確認し、対応表を作る
- 調理前に担当者同士で声に出して再確認
ルール②:作る時は「完全に分ける」
少量の混入(コンタミネーション)でも事故につながります。だから徹底的に分離します。
- 専用の調理器具・食器を使う(色分けが理想)
- アレルギー対応食は一番最初に、別の鍋・別のスペースで作る
- 同じ油・同じ水を使い回さない
- 盛り付けも専用トレイで、他の食事と離す
ルール③:渡す時も「ダブルチェック」
作って終わりではありません。配膳・受け渡しの最後の瞬間まで気を抜かない。
- トレイに名前・除去内容を明記したカードを付ける
- 厨房から出す時と、現場で渡す時の2回、名前と内容を声出し確認
- 「いつもの人」でも毎回必ず確認(思い込みが一番危ない)
コンタミネーション(混入)を防ぐ具体策
アレルギー対応でいちばん怖いのがコンタミネーション——意図せずアレルゲンが混ざってしまうことです。除去食を作ったつもりでも、途中で混入すれば意味がありません。
- 作る順番を「対応食から」にする……通常食を作ったあとの調理台や器具には、アレルゲンが残っている可能性があります。いちばん最初に作るのが鉄則
- 専用の器具を用意する……まな板・包丁・ボウル・お玉。色や印を付けて、通常食と絶対に混ざらないように
- 調理台を分ける……同じ台を使うなら、その都度きっちり洗浄・消毒してから
- 粉が舞う作業に注意……小麦粉やそば粉は空気中に舞います。同じ空間で同時進行しない
- 加熱後はすぐ蓋・ラップ……作り置きの間に、飛沫や粉が入るのを防ぎます
札・トレー・記録——「目で見て分かる」仕組み
記憶に頼ると、忙しい日に必ず事故ります。誰が見ても一目で分かる形にするのが大原則です。
- 専用トレーの色を変える……通常食と違う色にして、遠目にも区別できるように
- 名前と除去内容を書いた札……「○○様 卵・乳 除去」と明記。名前だけでは不十分です
- ラップに直接書く……容器を移し替えても情報が消えないように
- 調理記録を残す……誰が作って、誰が確認したかを記録。責任の所在をはっきりさせます
この仕組みがあると、いつものメンバーがいない日でも安全が保てます。人が変わっても回ることが、本当の意味での安全対策です。
情報が変わったときの伝達
アレルギー情報は変わることがあります。新しく判明した、逆に食べられるようになった、量なら大丈夫になった——こういう変更こそ、事故のもとです。
- 変更は必ず書面で受け取る……口頭だけの伝達は絶対に受けない。「言った・聞いてない」を防ぐため
- いつから適用かを明確に……「明日の昼食から」など、開始日を必ず確認
- 全員に共有する……朝礼で伝える+掲示する。休みの人にも必ず届く形で
- 古い情報を消す……新旧の札が両方残っていると、どちらが正しいか分からなくなります
迷ったときの判断——「出さない」が正解
16年やってきて、これだけは断言できます。少しでも迷ったら、出さない。
- 「たぶん大丈夫」で出して、もし何かあったら取り返しがつかない
- 作り直せば済む話。時間や食材より、命のほうが重い
- 確認できる人がいないなら、代替メニュー(ごはんと味噌汁だけでも)に切り替える
「もったいない」「怒られるかも」——そんな理由でリスクを取る場面ではありません。止める判断ができる人が、本当にできる人です。新人さんにも、これだけは最初に伝えるようにしています。
新人さんへ|一番大事な心がまえ
「たぶん大丈夫」は絶対にNG。少しでも不安があれば、必ず止まって確認してください。確認のために手を止めるのは、むしろ正しい行動です。「分からないことを確認できる人」が、現場で一番信頼されます。
まとめ|アレルギー対応は「確認」がすべて
- ✅ アレルギー事故は命に関わる。最優先で取り組む
- ✅ 義務表示は8品目(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生)
- ✅ ルール①情報確認 ②完全に分ける ③渡す時もダブルチェック
- ✅ 「たぶん」をなくし、毎回必ず確認する
手間はかかりますが、この一つひとつが誰かの命を守る仕事です。怖がりすぎず、でも油断せず。「確認の習慣」さえ身につけば、あなたも立派なアレルギー対応のプロになれますよ。


