給食のほうれん草のリアル【大量調理シリーズ第15弾】砂・かさ減り・色・水っぽさ

給食のほうれん草のリアル【大量調理シリーズ第15弾】砂・かさ減り・色・水っぽさ|キッチンのりちゃん 調理スキル

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

大量調理シリーズ第15弾はほうれん草です。おひたし、ごま和え、味噌汁、ソテー。給食では一年中出てくる青菜ですが、実は扱いがとても難しい野菜です。根元に砂が残る、ゆでると一気にかさが減る、色がくすむ、水っぽくなる。家庭の1把とは違って、何十人分、百人分となると、ちょっとした差がそのまま全員の皿に出ます。

この記事では、給食の厨房でほうれん草を大量に扱うときの下ごしらえ・ゆで方・冷まし方・味付けのコツと、高齢者施設ならではの注意点をまとめます。

この記事でわかること

  • ほうれん草が大量調理で難しい4つの理由
  • 砂を残さない洗い方と、ゆで方・冷まし方・しぼり方
  • 味付けのタイミングと、冷凍ほうれん草の使い方

給食のほうれん草が難しい4つの理由

  1. 砂と泥:根元の株の間に土が入り込みやすく、1枚ずつ洗わないと残る
  2. かさが大きく減る:生ではかごいっぱいでも、ゆでると驚くほど少なくなる
  3. 色が変わりやすい:ゆですぎ・冷ますのが遅い・味付けが早いと、緑がくすんで茶色っぽくなる
  4. 水っぽくなる:しぼりが足りないと、盛り付けた後に水が出て味がぼやける

どれも「ほうれん草は簡単な野菜」と思って油断したときに起きます。順番に対策を見ていきます。

下ごしらえ:砂を残さない洗い方

根元に切り込みを入れてから洗う

ほうれん草の砂は、ほとんどが根元の株の間にあります。根の先を少し落とし、太い株には十字の切り込みを入れてから洗うと、株の内側まで水が入って砂が落ちやすくなります。

ためた水で、水を替えて何度も

大きなシンクに水をため、根元を中心に振り洗いします。水を替えて、底に砂が沈まなくなるまで繰り返すのが基本です。1回目の水は驚くほど濁ります。最後は流水ですすぎます。

洗浄と消毒の考え方は洗浄と消毒の記事もあわせてどうぞ。

ゆで方:たっぷりの湯で、根元から、短く

湯はたっぷり、一度に入れすぎない

大量調理でいちばん多い失敗は、一度に入れすぎて湯の温度が下がることです。温度が下がると、ゆで上がりまで時間がかかり、色が悪くなり、食感もくたっとします。回転釜でも寸胴でも、湯はたっぷり沸かし、何回かに分けてゆでます。

根元から先に入れる

茎と葉では火の通りが違います。根元(茎)を先に湯に入れて少し待ってから、葉を沈めると、茎はやわらかく、葉はゆですぎにならずに仕上がります。

アクが気になる理由

ほうれん草のえぐみのもとは、シュウ酸という成分です。調べてみると、シュウ酸は水に溶けやすく、ゆでることで一部がゆで汁に溶け出すとされています(食品安全委員会の資料では、ゆでると水溶性のシュウ酸の7〜8割が溶け出すという調査が紹介されています)。生のまま使わず、ゆでてから使うのが基本なのはこのためです。

冷まし方:ここがいちばん大事

ゆでた後の冷まし方で、色も、食感も、衛生も決まります。

すぐに冷水へ

ゆで上がったら、すぐに冷水に取って一気に冷まします。余熱で火が入り続けると、色がくすみ、やわらかくなりすぎます。冷水は何度か替えて、ぬるくならないようにします。

加熱後に冷ますものは時間を守る

おひたしや和え物のように、加熱した後に冷まして出す料理は、冷ます時間にも決まりがあります。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、加熱調理した食品を冷ますときは30分以内に中心温度を20℃付近、または60分以内に10℃付近まで下げるよう工夫することとされています。冷ましたものは冷蔵庫で保管し、ゆでた時刻と冷めた時刻を記録します。

数字の意味は大量調理施設衛生管理マニュアルを「数字」で読むにまとめています。

しぼり方と切り方:水っぽさを防ぐ

冷めたら、根元をそろえて束ね、しっかり水気をしぼります。しぼりが甘いと、盛り付けた後に皿の底に水がたまり、味が薄まります。

大量のときは、少量ずつ手に取って均一にしぼるのがコツです。しぼった後に長さをそろえて切り、もう一度軽くしぼると、さらに水っぽさが防げます。

味付けは「食べる直前」が基本

おひたしや和え物は、調味料と和えるのはできるだけ提供の直前にします。早く和えると、調味料の塩分で水が出て、色も変わります。

  • おひたし:だし割りしょうゆは直前にかける
  • ごま和え:和え衣は先に作っておき、直前に和える
  • 汁物:火を止める直前に入れて、煮すぎない
  • ソテー・炒め物:ゆでて水気をしぼってから炒めると、水が出にくい

和え物全体のコツはサラダ・和え物の記事、汁物は汁物の記事で紹介しています。

量は「ゆでた後」から逆算する

ほうれん草は、ゆでるとかさが大きく減り、しぼると重さも減ります。そのため、仕上がりの量から逆算して発注するのが大事です。

おすすめは、自分の現場の「生の重さ」と「ゆでてしぼった後の重さ」を一度量って記録しておくことです。同じほうれん草でも、季節や太さ、しぼり方で変わります。一度記録しておけば、次からの発注と盛り付け量がぶれなくなります。白菜の回でも同じ話をしましたが、青菜はとくに差が大きい食材です。

冷凍ほうれん草を上手に使う

給食の現場では、冷凍ほうれん草もよく使います。洗う・ゆでる・切る手間がかからず、砂の心配もなく、量も安定します。

  • 汁物・炒め物・グラタンなど、加熱する料理に向いている
  • 凍ったまま使えるものが多い(袋の表示に従う)
  • おひたしに使うときは、解凍後の水気をしっかりしぼる
  • 生のほうれん草より食感はやわらかめ。高齢者向けにはむしろ使いやすいこともある

普段は冷凍、季節の献立や行事食では生、と使い分ける現場も多いです。

冷凍ほうれん草は、業務用のカットしてバラ凍結したものが使いやすいです。

高齢者施設向けには、最初から刻んでやわらかく仕上げたおひたしもあります。

高齢者施設で気をつけること

① 繊維と、口に貼りつく葉

ほうれん草の茎は繊維があり、葉は薄くて口の中に貼りつきやすい食材です。かむ力や飲み込む力が弱い方には、やわらかくゆでてから細かく刻む、とろみのある和え衣やあんでまとめる、といった工夫をします。食事の形態ごとの考え方は食事形態の記事で書いています。

② カリウム

ほうれん草は生100gあたりカリウムが690mgと多い野菜です。ゆでると490mgに減ります(日本食品標準成分表2020年版(八訂))。カリウムの制限がある方への対応は、施設の栄養士の指示に従います。

③ 食事や薬の指示がある方

病気や飲んでいる薬によって、食べ物の指示が出ている方もいます。ほうれん草に限らず、指示がある方の食事は、施設の栄養士の指示どおりにつくります。調理員が自己判断で変えないのが原則です。

ほうれん草の栄養と「冬採り」

日本食品標準成分表2020年版(八訂)で見ると、ほうれん草(葉・生)100gあたりは次のとおりです。

  • エネルギー:18kcal
  • 水分:92.4g
  • カリウム:690mg
  • ビタミンC:夏採り20mg/冬採り60mg(通年平均35mg)

同じほうれん草でも、冬に採れたものはビタミンCが夏採りの3倍あります。旬の冬こそ、ほうれん草の出番です。なお、ゆでると通年平均で19mgに減ります。ゆですぎないことは、色や食感だけでなく栄養の面でも大事です。

冬の献立に使いやすいほうれん草料理5つ

  1. ほうれん草のおひたし:基本の一品。だしを効かせて、直前にかける
  2. ほうれん草のごま和え:ごまの香りで食べやすい。和え衣は先に作る
  3. ほうれん草と卵のスープ:火を止める直前に入れる
  4. ほうれん草とベーコンのソテー:ゆでて水気をしぼってから炒める
  5. ほうれん草の白和え:豆腐の水切りをしっかり。高齢者にもやさしい

冬の献立全体は冬メニューの記事もどうぞ。

失敗あるある3つ

  • 砂が残ってクレームに:根元の切り込みと、水を替えての洗い直しを省いたときに起きる
  • おひたしが茶色く:ゆですぎ、冷水に取るのが遅い、早く味付けした、のどれか
  • 量が足りない:生の重さで考えて、ゆでた後の減り方を見込んでいなかった

まとめ|ほうれん草は「洗う・短くゆでる・すぐ冷ます・直前に和える」

  • 砂は根元に切り込みを入れて、水を替えて何度も洗う
  • ゆでるのはたっぷりの湯で、根元から、短く。一度に入れすぎない
  • ゆでたらすぐ冷水へ。冷ます時間はマニュアルの基準(30分で20℃付近・60分で10℃付近)を守る
  • しっかりしぼって、味付けは直前
  • 量はゆでた後から逆算。自分の現場の歩留まりを一度量っておく
  • 冷凍ほうれん草は加熱料理に便利
  • 冬採りはビタミンCが夏採りの3倍。冬こそ出番

👇 大量調理シリーズ

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