こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
秋から冬にかけて、献立にかぼちゃの出番が増えます。煮物、天ぷら、サラダ、スープ。10月はハロウィン、12月には冬至。行事にも強く、彩りもよく、甘くて喜ばれる。給食にとって本当にありがたい食材です。
ただ、大量調理のかぼちゃは、家庭とは別の難しさがあります。しかも、前回書いたきのことは難しさの方向が真逆です。きのこは「水が出る」のが問題でしたが、かぼちゃは「硬い・崩れる・ぱさつく」。
大量調理シリーズの9本目として、今日はかぼちゃを取り上げます。大量調理のコツの食材別・実践編として読んでください。
この記事でわかること
- かぼちゃが大量調理で難しい3つの理由
- 「切らない」選択と、崩さないための4つの手
- 高齢者施設でのぱさつき対策と、ハロウィン・冬至
かぼちゃが大量調理で難しい3つの理由
理由1|とにかく硬い
これが最初の壁です。かぼちゃは野菜の中でも特に硬く、丸ごと1玉を切るのは家庭でも力仕事です。それを100人分、何玉も切るとなると話が変わります。
時間がかかるだけではありません。硬いものを力任せに切るときが、厨房でいちばん手を切りやすい瞬間です。忙しい朝に、包丁が滑る食材を大量にさばく。これは段取りの問題であると同時に、安全の問題でもあります。
理由2|煮ると崩れる
切れたら次は煮崩れです。かぼちゃは皮のすぐ内側の果肉がやわらかく、角から欠けていきます。家庭の鍋で10切れならそっと扱えますが、回転釜に何十切れも入れると、かぼちゃ自身の重さで下のほうが潰れます。
崩れた煮物は見た目が落ちるだけでなく、煮汁が濁り、盛り付けで1切れずつ数えられなくなる。食数がきっちり決まっている給食では、これが地味に痛いんです。
理由3|ぱさつく
ここが高齢者施設ではいちばん重要です。日本食品標準成分表(八訂)によると、西洋かぼちゃは可食部100gあたり水分76.2g。前回のぶなしめじ(90.8g)と比べると、かなり少ない。
「ホクホクしておいしい」の正体は、この水分の少なさです。ところがホクホクは、噛む力や飲み込む力が落ちた方にとっては「口の中でまとまらず、むせやすい」食感でもあります。家庭ではごちそうの食感が、現場では注意すべき食感になる。ここがかぼちゃの難しいところです。
対策1|「切らない」という選択
硬さへの答えは、意外かもしれませんが「自分たちで切らない」です。
業務用のカット済みかぼちゃや、冷凍のカットかぼちゃを使う現場は多いです。手抜きではありません。切る時間と、切るときのケガのリスクを、まるごと外に出せるからです。人手が限られる朝の厨房では、これは合理的な判断だと思っています。
冷凍かぼちゃを使うときのコツは、はっきりしています。
- 解凍しない…凍ったまま煮る。解凍すると水分が出て、べちゃっと崩れます
- 水は少なめ…冷凍かぼちゃ自体から水分が出るので、煮汁は生のときより控えめに
- 触らない…皮を下にして並べたら、煮上がるまでなるべく動かさない
生のかぼちゃが必要な料理はもちろんあります。でも「煮物は冷凍、天ぷらは生」のように、料理ごとに使い分けるのが現場の感覚です。発注の考え方は給食の発注のコツと食数管理にまとめました。
対策2|崩さないための4つの手
煮崩れは、下ごしらえと火の入れ方でかなり防げます。
- 面取りをする…角を少し落としておくと、そこから欠けにくくなります。手間ですが、行事食など見た目が大事な日には必ずやります
- 皮を下にして、重ねない…皮側は崩れにくいので底に。上に積み上げると自重で潰れるので、釜に対して量を欲張らない
- 砂糖を先に振っておく…煮る前にかぼちゃに砂糖をまぶしておくと、浸透圧で水分が表面に出て、加熱しても崩れにくくなります
- 煮汁は「ひたひた」で止める…かぼちゃが泳ぐほど入れると、動いてぶつかって崩れます
煮物全般の味のしみこませ方は給食の煮物のリアルに書きました。かぼちゃはその中でも「触らない勇気」がいちばん要る食材です。
対策3|高齢者施設では「ぱさつき」が最優先
ここは真面目に書きます。ホクホクのかぼちゃを、そのまま全員に出してはいけません。
現場では、こう対応しています。
- 煮汁を多めに含ませる…普通食でも、煮物は汁気を残して盛る。ぱさつきが和らぎます
- あんをかける…片栗粉のあんをかけると、口の中でまとまりやすくなります
- 形態によってはマッシュに…きざみ食・ソフト食の方には、つぶしてなめらかにする。かぼちゃはつぶすと本当に扱いやすい食材で、ペースト状にしても味も色もしっかり残ります
実は、ぱさつきさえ解決すれば、かぼちゃはやわらかい食事形態の現場ではむしろ優等生です。甘くて、色がきれいで、なめらかになる。食事形態の考え方は高齢者施設の食事形態のリアル、市販品の置き換えはやさしい食材にまとめています。
数字で見るかぼちゃ|甘さは「糖質」でもある
成分表(八訂・西洋かぼちゃ・生100g)の数字を押さえておきます。
- β-カロテン当量 2,600μg…緑黄色野菜の代表格。あの色の正体です
- ビタミンC 43mg…野菜としては多め。加熱しても比較的残りやすい部類です
- 食物繊維 3.5g
- エネルギー 78kcal・炭水化物 20.6g
注意したいのは最後の数字です。かぼちゃの甘さは、そのまま糖質の多さでもあります。かぼちゃの煮物に、さつまいもの副菜、デザートに甘いもの——と重なると、献立全体が甘く、糖質に寄ります。
糖尿病などで制限のある方への対応は、施設の管理栄養士さんの指示に従います。現場としては「かぼちゃを出す日は、他の副菜を甘くしない」という組み方を意識しています。
ハロウィンと冬至|かぼちゃが主役になる2つの日
かぼちゃには、年に2回「主役の日」があります。
10月31日のハロウィンは、高齢者施設でも定着してきました。かぼちゃのスープやグラタン、かぼちゃプリンなど、洋風の献立で出しやすい日です。ただし子ども向けの装飾に寄りすぎないよう、料理そのもので季節を伝えることを意識しています。
12月22日ごろの冬至は、かぼちゃの本番です。1年でいちばん昼が短い日に、かぼちゃを食べてゆず湯に入る。かぼちゃの別名「なんきん」のように「ん」のつく食べ物を食べると運がつくという縁起担ぎと、保存がきく野菜で冬の栄養を補うという先人の知恵が重なった行事食です。この日のかぼちゃは、入居者様にとって「昔から食べてきた味」そのもの。だからこそ煮崩れもぱさつきも、いつも以上に気をつけます。冬の献立は冬の給食メニューの工夫、行事食の考え方は給食の行事食のリアルをどうぞ。
天ぷらやソテーなど、煮物以外に使うならスライスの冷凍も便利です。
食事形態別:かぼちゃの出し方の早見表
かぼちゃは、やわらかく煮れば多くの形態に対応しやすい食材です。ただ、皮のかたさと、ぱさついて口の中の水分を取られることには、どの形態でも気をつけます。形態ごとの出し方の例を表にしました。
※形態の呼び方や作り方は施設によって違います。栄養士さんの指示に従ってください。
| 形態 | 出し方の例 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 常食 | ひと口大の煮物 | 皮のかたい部分は面取りや皮むきで調整 |
| きざみ | 煮てから細かく刻み、煮汁やあんでまとめる | 刻んだだけだとぱさついて口の中でばらける |
| ソフト | 皮を取ってつぶし、形を整えて煮汁を含ませる | 舌でつぶせるかたさか |
| ペースト | 皮を取って煮汁と一緒になめらかにする | 水分が少ないと口に貼りつく。なめらかさを優先 |
どの形態でも「水分」をたす
かぼちゃのぱさつきは、口の中の水分を吸って飲み込みにくくする原因になります。煮汁、あん、だしでのばすなど、形態に合わせて水分をたすのが共通のコツです。冬至の行事食で出すときも、形態の違う人が同じ料理を楽しめるよう、色と盛り付けをそろえます。
形態ごとの作り分けは食事形態のリアル、煮物の温度管理は煮物の記事、行事食は行事食のリアルにまとめています。
まとめ
- かぼちゃの難しさは硬い・崩れる・ぱさつくの3つ。きのこ(水が出る)とは真逆
- 硬さには「切らない」=カット済み・冷凍を使う。冷凍は解凍しない・水少なめ・触らない
- 煮崩れには面取り・皮を下・砂糖を先に・ひたひたで止める。釜に量を欲張らない
- 高齢者施設ではぱさつき対策が最優先。煮汁多め・あんかけ・形態によってはマッシュ。つぶせば優等生
- 成分はβ-カロテン当量2,600μg・ビタミンC 43mgが強み。ただし炭水化物20.6g=甘さは糖質。他の副菜と甘さを重ねない
- 主役の日はハロウィン(10/31)と冬至(12/22ごろ)。冬至の「なんきん」は昔から食べてきた味
かぼちゃは、扱いを知っていれば秋冬の献立を支えてくれる食材です。硬くて崩れてぱさつく——その3つを乗り越えた先に、湯気の立つ黄色い煮物があります。今年も、その季節が来ました。


