給食の安全は、火を使う前——食材が厨房に届いた瞬間から始まっています。どれだけ丁寧に調理しても、元の食材の管理が甘ければ食中毒は防げません。
高齢者施設の給食を委託会社の社員として16年、調理も発注業務も両方やってきたボク(キッチンのりちゃん)が、検品・保管・先入れ先出しという地味だけど超重要な仕事をお話しします。※事例は架空の一例です。
①検品:納品時の数分が一日を決める
食材が届いたら、まず検品。ここを「忙しいから後で」にすると、後で泣きます。
- 温度……冷蔵品・冷凍品が適切な温度で届いているか。溶けかけの冷凍品は要注意
- 期限……消費期限・賞味期限を必ず確認。「今日届いた=新しい」とは限りません
- 数量……発注どおりか。足りなければ献立変更の判断が早いほど傷が浅い
- 外観……包装の破れ、汁漏れ、野菜の傷みがないか
そして検品したらすぐ冷蔵・冷凍へ。常温に置いた時間の分だけ、細菌は増えていきます。
②保管:置き場所には理由がある
冷蔵庫の中の配置、実はきっちりルールがあります。
- 肉・魚は下段……ドリップ(肉汁)が下に落ちても他の食材を汚染しないように
- そのまま食べるものは上段……和え物用の野菜、デザート類など加熱しないものを上に
- 床に直置きしない……常温品もスノコやラックの上へ。掃除もしやすくなります
- 詰め込みすぎない……冷気が回らないと温度が上がる。冷蔵庫は「7割まで」が目安
温度計のチェックと記録も毎日の仕事。「記録がない=管理していない」と見なされるのが衛生管理の世界です(やりがちな衛生ミス10選)。
③先入れ先出し(FIFO):古いものから使う
在庫管理の基本中の基本、先入れ先出し。英語の頭文字でFIFO(ファイフォ)とも呼ばれます。
- 新しく入った食材は奥へ、古いものを手前へ
- 手前から取れば、自然と古いものから消費される仕組み
- これを怠ると、奥で期限切れの在庫が発掘される……という悲劇が起きます
補充する人が「空いてる手前にポン」と置いた瞬間に崩れるので、全員がルールを知っていることが大事。新人さんにも最初に伝える項目です(新人がまず覚えるべき10のこと)。
④食材ロスを減らす:発注は「読み」の仕事
ここからは事務側の話。食材ロス=そのまま原価の悪化なので、発注の精度が経営に直結します。
- 食数の変動を読む……入退所、入院、外泊。食数は毎日動きます
- 使い切りを前提に組む……半端に残る量を発注しない。残るなら翌日の献立で使い切る算段まで考える
- 在庫を見てから発注……「あると思ったら無い」「無いと思ったらある」を防ぐ。棚卸しは地味に効きます
- 天候・行事も変数……行事食の日は食数が読みにくいので、余裕と使い回しを両方用意
発注の詳しい手順は給食の発注のコツと食数管理でも書いています。原価の考え方は原価率の出し方もどうぞ。
⑤検食と保存食:もしもの時の備え
食材管理の締めくくりが保存食。提供した食事を1食分ずつ、-20℃以下で2週間保存しておくルールです。
- 万一の食中毒発生時、原因を特定するための検体になります
- 使わずに廃棄することがほとんど。でも「何もなかった」ことの証明でもあります
- 原材料も同様に保存。地味な作業ですが、絶対に飛ばせません
食材別の保管ポイント
食材ごとに、気をつける点が違います。よく扱うものだけ挙げておきます。
- 葉物野菜……乾燥に弱い。新聞紙やポリ袋で包んで立てて保管すると長持ちします
- 根菜……常温でも大丈夫なものが多いですが、じゃがいもは光に当てない(芽と緑化の原因)
- 肉……ドリップが出るのでトレーごと。必ず冷蔵庫の最下段
- 魚……傷みが早い。届いたその日に処理するのが原則
- 卵……冷蔵、とがった方を下に。洗わない(表面の膜が守っています)
- 乾物……湿気と虫が大敵。密閉容器に入れて冷暗所へ
- 豆腐・練り物……日付が短い。先入れ先出しが特に効くカテゴリです
冷凍・解凍のルール
冷凍食材は便利ですが、解凍の仕方を間違えると食中毒のリスクになります。
- 常温解凍はしない……表面が危険な温度帯に入ります。冷蔵庫でゆっくりが基本
- 流水解凍は密封して……水が直接触れると品質も落ち、汚染のリスクも
- 一度解凍したものを再冷凍しない……品質が落ちるだけでなく、菌が増えます
- 計画的に出す……前日のうちに冷蔵庫へ移す。「明日使うもの」を毎日出す習慣にすると回ります
- 解凍後は速やかに調理……解凍したまま放置しない
ボクの現場では、遅番が「明日使う冷凍品」を冷蔵庫に移すのをルールにしています。これがあるだけで早番の朝がぐっと楽になります。
在庫を「見える化」する
食材ロスの多くは「あることを忘れていた」から起きます。だから見える化が効きます。
- 棚に品名ラベルを貼る……定位置を決めれば、無いことにすぐ気づけます
- 開封日を書く……マスキングテープに日付。「いつ開けたか分からない」を防ぎます
- 期限が近いものを手前に集める……「早く使うコーナー」を作っておく
- 週1回、棚を確認する……月末の棚卸だけでは遅い。週次で見れば献立に組み込めます
「奥から期限切れが出てくる」のは、仕組みの問題です。人の注意力ではなく、置き方で解決するのがコツです(棚卸の管理術)。
まとめ:管理が甘いと、腕は関係なくなる
どれだけ美味しく作れても、食材の管理が甘ければ全部台無し。逆に言えば、検品・保管・先入れ先出しをきっちりやるだけで、リスクの大半は潰せます。
そして食材ロスを減らすことは、原価を守るだけでなく「食べ物を無駄にしない」という当たり前を守ることでもあります。調理と事務、両方やっているとこの繋がりがよく見えるんです。


