給食の温度計、その75℃は本当に合ってる?【厨房の4本と確かめ方】

給食の温度計、その75℃は本当に合ってる?【厨房の4本と確かめ方】|キッチンのりちゃん 衛生管理

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

給食の厨房では、1日に何十回も温度を測ります。煮物の中心温度、冷蔵庫の中、検収のときの室温。記録用紙には「75℃」「8℃」と数字が並びます。

でも、ふと思うことがあります。その数字を出している温度計は、本当に合っているのか。温度計が2℃低く出ていたら、「78℃で合格」と書いた煮物は、本当は76℃だったかもしれない。逆に高く出ていたら、75℃に届いていないのに合格にしていたかもしれない。

今日は、温度を「測る側」ではなく、測る道具そのものの話です。厨房にある温度計を1本ずつ取り出して、何を測る道具なのか、どう確かめて、どう扱うのかを書きます。

※温度計の種類や確認の頻度は、会社や施設の衛生マニュアルによって異なります。この記事は一般的な内容をまとめたものです。事例は架空の一例です。

この記事でわかること

  • 厨房の温度計4本の役割
  • 温度計が合っているかの確かめ方
  • 毎日の扱いで気をつける5つ

マニュアルには「校正された温度計で」と書いてある

厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」には、加熱調理の記録の方法が書かれています。揚げ物・焼き物・蒸し物・煮物のどれも、「食品の中心温度を校正された温度計で」測るという書き方です。揚げ物や焼き物は3点以上、煮物は1点以上で、75℃で1分以上(二枚貝などノロウイルスのおそれがある食品は85〜90℃で90秒以上)。

つまり、マニュアルが求めているのは「測ること」だけではありません。「正しい温度計で測ること」までがセットです。マニュアルの数字の読み方は衛生マニュアルを数字で読む記事に、記録の書き方は衛生記録の記事にまとめています。

厨房の温度計、4本を取り出してみる

1本目:中心温度計(差し込むタイプ)

いちばんよく使う1本です。先の細い金属の棒(プローブ)を食品に差して、中心の温度を測ります。煮物、焼き魚、ハンバーグ、揚げ物。加熱の合否を決める、厨房でいちばん責任の重い道具です。

差す場所は「いちばん火が通りにくいところ」。大きい具、厚い部分、釜の真ん中です。先が鍋底や天板に当たると、食品ではなく鍋の温度を測ってしまうので、先の位置には気をつけます。

2本目:冷蔵庫・冷凍庫の庫内温度計

冷蔵庫や冷凍庫の中に置いてある温度計です。マニュアルには、原材料を搬入したときの室温と、冷蔵・冷凍設備の中の温度を記録することが書かれています。保存の目安は、たとえば生鮮魚介類が5℃以下、食肉が10℃以下、冷凍食品は−15℃以下です。

庫内の温度計は、扉の近くと奥で数字が変わります。扉を開けた直後は上がります。毎回同じ場所に置いて、同じタイミングで読むのが、正しい記録の近道です。保存のルールは食材管理の記事にも書いています。

3本目:室温・湿度計

壁にかかっている、目立たない1本です。マニュアルには、調理場は湿度80%以下、温度25℃以下が望ましいとあります。夏の厨房ではなかなか届かない数字ですが、「今日は何℃だったか」を知っておくことは、食材を常温に置く時間を決めるときの判断材料になります。

4本目:放射温度計(かざすタイプ)

食品に向けてボタンを押すと、離れたところから温度が出るタイプです。便利ですが、測れるのは表面の温度だけです。

揚げ物の表面が90℃でも、中心が75℃に届いているとは限りません。放射温度計は、油の温度の目安や、配膳前の料理の表面を確かめるのには使えても、加熱の合否を決める中心温度の代わりにはなりません。ここを混同しないことが大切です。

その温度計、合っているかを確かめる

温度計は、落としたり、電池が弱ったり、長く使ったりすると、少しずつずれていきます。ずれていることに、使っている本人は気づけません。だから定期的に確かめます。

調べてみると、厨房でできる確かめ方として、よく紹介されているのはこの2つです。

  • 氷水で0℃を確かめる……砕いた氷と水を混ぜてシャーベット状にし、少し置いてからプローブを入れる。0℃前後を示すか見る。いちばん手軽で、よく使われる方法
  • 沸騰したお湯で100℃を確かめる……高い温度側の確認。ただし標高が高い場所では沸点が少し下がる

誤差の目安は「±1℃程度」とする解説が多く、確認の頻度は会社の決まりによります。業者に出す正式な校正は年1回以上、とするところもあります。大事なのは、確かめた日と結果を記録に残すことです。「いつ確かめた温度計で測った数字か」が説明できて、初めて記録が信用されます。

もう1つ、現場でできる簡単な方法があります。2本の温度計で同じものを測って比べることです。いつも2℃違うなら、どちらかがずれています。そのときは使うのをやめて、責任者に報告します。

毎日の扱いで気をつける5つ

  • プローブは使うたびに洗って消毒する……生の肉に差したプローブを、そのまま加熱後の料理に差すと二次汚染になる。アルコールでふく、洗って消毒する、のどちらかを会社の決まりどおりに。洗浄と消毒の違いは洗浄と消毒の記事に
  • 数字が止まるまで待つ……差してすぐの数字は上がりきっていない。表示が落ち着いてから読む
  • 電池は切れる前に替える……電池が弱ると表示がおかしくなることがある。予備の電池を置き場所に決めておく
  • 落としたら確かめてから使う……落とした温度計は、氷水で一度確かめてから戻す
  • 置き場所を決める……使ったら決まった場所に戻す。探す時間があると、測るのが面倒になる

架空の例:いつも少しだけ低く出る温度計

ある厨房で、煮物の中心温度がいつも「76℃」「77℃」とぎりぎりで記録されていました。火加減も時間もいつもどおりです。念のため、もう1本の温度計で同じ煮物を測ると、そちらは「80℃」でした。

氷水で確かめると、いつもの温度計は0℃のところで−3℃を示していました。つまり、いつもの温度計は3℃ほど低く出ていたのです。今回は安全側にずれていたので実害はありませんでしたが、もし逆に高く出ていたら、75℃に届かない料理を合格にしていたことになります。

その温度計は使うのをやめ、新しいものに替えて、確かめた日と結果を記録しました。それ以来、この厨房では月の初めに氷水で全部の温度計を確かめることにしています。

温度計を信じるために、温度計を疑う

HACCPの考え方では、中心温度は「重要管理点」、いちばん大事なチェックの場所です。その合否を決めるのが温度計です。どれだけ丁寧に測って、どれだけきれいに記録しても、温度計がずれていたら、記録全体の意味がなくなります。HACCPの全体像はHACCPをやさしく読む記事に書きました。

これから冬に向けて、ノロウイルス対策で「85〜90℃で90秒」を測る場面が増えます。対策の全体はノロ対策の記事にまとめています。寒くなる前に、一度厨房の温度計を全部並べて、氷水に入れてみてください。

まとめ

  • マニュアルが求めているのは「校正された温度計で」測ることまで
  • 厨房の温度計は中心温度計・庫内温度計・室温湿度計・放射温度計の4本。放射温度計は表面だけで、中心温度の代わりにならない
  • 確かめ方は氷水で0℃が手軽。2本で比べるのも有効。確かめた日と結果を記録する
  • 毎日の扱いはプローブの消毒・数字が止まるまで待つ・電池・落としたら確認・置き場所の5つ
  • 温度計を信じるために、ときどき温度計を疑う

衛生の基本でつまずきやすいところは衛生NG10選にもまとめています。数字を書く前に、その数字を出した道具のことも、少しだけ気にしてみてください。

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