こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
給食の仕事は「作って終わり」ではありません。むしろ1日の中で、調理と同じくらい真剣にやっているのが掃除です。日によっては、作る時間より掃除の時間のほうが長いこともあります。
床、排水溝、そして業界の外ではほぼ知られていない「グリストラップ」。今回は、給食厨房の掃除のリアルを紹介します。地味ですが、ここが崩れると衛生も味も全部崩れる、土台の話です。
なぜそこまで掃除するのか
理由はシンプルで、汚れは菌と虫の餌だからです。
床に残った油や食材のかけらは、そのまま菌の栄養になり、コバエやゴキブリを呼びます。厨房に虫が1匹いれば、異物混入のリスクがあるということ。つまり掃除は「きれい好きだから」やるのではなく、食中毒と異物混入を防ぐ仕事の一部としてやっています。
私の感覚では、掃除まで終わってはじめて「調理が終わった」です。
毎日の掃除ルーティン
毎日やる掃除は、だいたいこんな流れです(※やり方・頻度は施設の基準に従う架空の一例です)。
- 作業台・シンク……使うたびに洗浄・消毒。「汚れたら掃除」ではなく「使ったら掃除」です
- 床……営業終わりに洗剤とデッキブラシでこすり、水を流して、スクイージー(水切りワイパー)で水を切ります。力仕事なので、夏はこれだけで汗だくです
- 排水溝……フタを開けてゴミ受けのカスを捨て、ブラシでぬめりを落とします。ここをサボると翌日には臭い始めます
- ゴミ出し……生ゴミは厨房に一晩置かない。臭いと虫の元は、その日のうちに外へ
ポイントは、掃除を「1日の最後の大仕事」にしないことです。調理の合間に「使ったら戻す・こぼしたら拭く」を積み重ねておくと、最後の掃除は軽くなります。段取りの考え方は調理と全く同じです。
グリストラップ——業界の外で一番知られていない設備
厨房の床下や出口付近には、グリストラップという設備があります。簡単に言うと、調理で出た油や生ゴミのかけらを、下水に流す前にせき止めておく水槽です。
フタを開けると、3つくらいの部屋に分かれていて、①ゴミをキャッチするバスケット、②油が水面に浮いて分離される部屋、③きれいになった水が流れていく部屋、という構造になっています。
掃除の中身はこうです。
- バスケットのゴミを毎日捨てる……ここに野菜くずや米粒がたまります。放置すると腐って強烈な臭いになります
- 浮いた油を定期的にすくう……冷えて固まった油の層をすくい取ります。正直、厨房の掃除でいちばん気合いの要る作業です
- 定期的に底までさらう……沈殿物を取り除きます。業者さんにお願いする施設もあります
サボるとどうなるか。悪臭、コバエの大量発生、そして最悪は排水管の詰まりで厨房が水浸し。給食が止まりかねない事態です。グリストラップの世話は、誰にも見えないところで給食を支えている仕事だと思っています。
床を濡らしっぱなしにしない——「ドライ」の考え方
最近の給食業界の合言葉のひとつがドライ運用です。菌は水気のあるところで増えるので、床を濡らしっぱなしにしないことが衛生の基本になります。
- 水を使ったらすぐスクイージーで切る
- 水はねの少ない作業のしかたを心がける
- 長靴の中まで湿気させない(足の衛生も大事です)
「濡れた床は当たり前」だった時代から、「床は乾いているのが当たり前」へ。掃除のゴールは「洗った」ではなく「乾いた」です。
週次・月次の大掃除
毎日の掃除とは別に、期間を決めてやる掃除もあります(※頻度は架空の一例です)。
- 換気扇・フード……油でギトギトになるので定期的に洗浄。ここが汚れると換気能力が落ちて、夏の厨房はさらに暑くなります
- 冷蔵庫・冷凍庫の中……在庫を整理しながら棚を拭き上げます。食材管理とセットの作業です
- 壁・天井・照明……見上げると意外と汚れています。異物混入防止の観点でも大事な場所です
- 機械の分解清掃……スライサーやミキサーは分解して隅々まで。刃物を扱うので、手順を守って安全第一で
虫と付き合わない厨房にする
害虫対策の基本は、殺すことより「入れない・住まわせない・餌をやらない」です。
ドアや網戸の隙間をふさぐ、段ボールを厨房にため込まない(段ボールは虫の住み家になりやすいのです)、そして毎日の掃除で餌を残さない。これができていれば、虫は「住みにくい厨房」から自然に遠ざかります。それでも定期的な点検や駆除は専門業者さんと連携して行います。
新人さんへ——掃除は「見られている」仕事
給食の現場では、新人さんが最初に任される仕事の多くが掃除と洗い物です。「雑用から」と感じるかもしれませんが、私はここが一番の見せ場だと思っています。
16年やってきて確信していることがあります。掃除が丁寧な人は、調理も丁寧になる。隅のぬめりに気づける人は、味の変化にも食材の異常にも気づけます。逆もまたしかりです。だからベテランは、新人さんの掃除ぶりをよく見ています。
もうひとつ、地味に大事なのが道具の手入れです。デッキブラシやスクイージーを汚れたまましまえば、次に使うとき汚れを塗り広げることになります。道具を洗って、決めた場所に掛けて乾かすところまでが掃除。「道具がきれいな厨房は、だいたい全部きれい」というのが私の経験則です。
まとめ:掃除まで含めて「調理」
- 掃除は食中毒と異物混入を防ぐ仕事の一部。きれい好きの話ではない
- 毎日の床・排水溝・ゴミ出しは「使ったら掃除」の積み重ねで軽くする
- グリストラップは給食を裏で支える縁の下の設備。世話を絶やさない
- 掃除のゴールは「洗った」ではなく「乾いた」
- 虫は「入れない・住まわせない・餌をやらない」
ピカピカに乾いた厨房で迎える朝は、それだけで仕事がうまくいく気がします。掃除は自分たちの職場を守る仕事であり、利用者さんの食事を守る仕事。今日も最後のスクイージーまでが調理です。
衛生の基本は衛生管理ミス10選、食器・器具の洗浄は洗浄と消毒のリアルで書いています。夏場の衛生は夏の食中毒対策、異物混入の防ぎ方は異物混入を防ぐもあわせてどうぞ。


