こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。
私には、調理と事務のほかにもうひとつ役割があります。現場の写真係です。できあがった食事を、毎日写真に撮る。業界の外の方には「なんで給食の写真なんか撮るの?」と不思議がられるのですが、これがなかなか奥の深い仕事なんです。
今回は、誰も解説してこなかった(と思う)「給食現場の料理写真」の話をします(※運用は会社・施設によって違う架空の一例です)。
なぜ毎日写真を撮るのか
理由はひとつではありません。現場の写真には、いくつもの仕事が乗っています。
- 提供の記録になる……「この日、この食事を、この形で提供した」という視覚の記録です。文字の記録とセットになると、後から見返したときの情報量がまるで違います
- 盛り付けの見本になる……盛り付けの記事で書いた「彩り・こんもり」を、言葉ではなく1枚で伝えられます。「この写真と同じように」は、最強の指示書です
- 本部や他事業所との共有……離れた場所にいる人に現場の食事を伝える手段は、結局写真がいちばん早くて正確です
- 行事食の記録と積み重ね……行事食は毎回工夫の連続。去年の敬老の日の写真が、今年の献立会議の資料になります
つまり料理写真は「記録・教育・共有・改善」の4役をこなす、1枚で仕事する書類なんです。
私が撮るときに気をつけていること
プロのカメラマンではないので、道具はスマホや現場のカメラで十分。それでも、ちょっとしたコツで写真は見違えます。
- 明るい場所で撮る……照明の真下より、窓際の自然光が入る場所のほうが、料理はおいしそうに写ります
- トレー全体を真上気味から……記録用は全体が写ってこそ。主食・主菜・副菜・汁物・デザートまで1枚に収めます
- 湯気と艶の残っているうちに……できたてで撮るのが一番。時間が経った料理は、実物以上に疲れて写ります
- 影とブレに気をつける……自分の影がトレーに落ちていないか、ピントが合っているか。撮ったらその場で確認します
特別な技術は何もありません。「明るく、全体を、できたてで」。この3つだけで、記録写真としては十分合格です。
一番大事なルール:写してはいけないもの
ここは真剣な話です。料理写真には、絶対に写してはいけないものがあります。
- 利用者さんの顔や姿……プライバシーの問題です。食事の写真を撮るときは、背景に人が写り込んでいないかを必ず確認します
- 個人情報の書類……食札や名簿がテーブルに置いてあるまま撮ると、名前が写り込みます。撮る前にどかすのが習慣です
- 施設が特定される掲示物……写真の使われ方によっては、施設名の写り込みにも気を配ります
「料理だけを撮る」。当たり前のようで、忙しい現場では意識しないと守れません。写真は便利な道具ですが、扱いを間違えると信頼を損なう道具にもなる——ここは施設との信頼関係の一部だと思って、毎回気をつけています。
写真が活躍する意外な場面
- 新人さんの教育……「先月の写真、これが盛り付けの見本ね」で伝わります。教え方の記事で書いた「見せる→やらせる」の”見せる”を、写真が肩代わりしてくれます
- 献立会議の資料……「この組み合わせ、彩りが茶色一色だったね」は、写真があるから言える反省です。献立づくりの改善は写真から始まることも多いです
- ご家族への説明……「普段どんな食事が出ているんですか?」に、写真ほど説得力のある答えはありません
- 現場のモチベーション……いい写真が撮れた日は、単純に嬉しい。仲間と「今日の行事食、きれいに撮れたな」と見せ合うのは、地味に楽しい瞬間です
失敗写真あるある
16年撮っていると、失敗のパターンも一通り経験します。心当たりのある方、いるんじゃないでしょうか。
- 湯気でレンズがくもる……汁物に寄りすぎた瞬間、画面が真っ白。給食写真界の定番事故です
- 照明で全体が黄色い……厨房の照明だけで撮ると、白いごはんがなぜか黄ばんで写ります。1歩動いて窓際へ
- 急いでいてブレる……提供前の1分で撮るので、確認せずに走ると、あとで見たら全滅していたことも。「撮ったら1秒確認」で防げます
- 背景に洗い物の山……料理はきれいに撮れたのに、後ろに食缶とザルの山。構図の敵は意外と背景にいます
- 撮り忘れる……一番多い失敗はこれ。忙しい日ほど忘れます。「盛り付け見本の横に置いたら撮る」のように、動作とセットにすると忘れません
失敗しても大丈夫。記録写真は毎日撮るものなので、明日また上手に撮ればいいんです。この気楽さも、毎日続けるコツだと思います。
「写真映え」と「おいしさ」の順番
誤解のないように書いておくと、給食の写真は「映え」のためではありません。順番はいつも、おいしい食事が先、写真は後。写真をよく見せるために料理を変えることはなくて、いい料理ができたから、それをちゃんと記録して伝えたい——その道具が写真です。
ただ、写真を撮り続けていると、不思議と盛り付けの腕が上がります。ファインダー越しに見ると、彩りの偏りや盛りの崩れが客観的に見えるんです。写真は自分の仕事を毎日採点してくれる、正直な先生でもあります。
まとめ:1枚の写真は「現場の言葉」
- 料理写真は記録・教育・共有・改善の4役をこなす「1枚で仕事する書類」
- 撮り方は「明るく、全体を、できたてで」の3つで十分
- 利用者さん・個人情報・施設の特定物は絶対に写さない
- 写真は盛り付けの正直な先生。撮り続けると腕が上がる
今日もお昼の提供前に、トレーを窓際に置いて1枚撮りました。何気ない毎日の記録が、1年経つと現場の財産になっています。カメラロールに並んだ食事の写真は、ちょっとした自慢のアルバムです。
盛り付けの考え方は盛り付け・配膳のコツ、行事食の舞台裏は行事食のリアルで書いています。1食ができるまでの全体像は総集編もあわせてどうぞ。


