敬老の日の給食のリアル|一年でいちばんのお祝い膳ができるまで

敬老の日の給食 お祝い膳(お赤飯・祝い魚・茶碗蒸し・紅白なます)と、そのまま出せないものは工夫して届ける図解 調理スキル

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

2026年の敬老の日は9月21日(月)。高齢者施設の給食に関わる私たちにとって、敬老の日は一年でいちばん大切なお祝いの日です。なにせ、毎日お食事を召し上がってくださる利用者さんたち全員が主役の日。厨房も1ヶ月以上前から準備に入る、正月と並ぶ大勝負です。

今日は、敬老の日のお祝い膳がどうやってできあがるのか、その裏側をお見せします。

※この記事に出てくる献立や手順は架空の一例です。実際の内容は施設や会社によって異なります。

お祝い膳の定番はこんな顔ぶれ

敬老の日のお昼は、いつもの食事とはがらりと変わって「お祝い膳」になります。定番の顔ぶれはこんな感じです。

  • お赤飯──お祝いの主役。もち米の配合は、飲み込みやすさを考えて現場ごとに調整します。
  • 鯛や海老などの祝い魚──「めでたい」の語呂はやっぱり強い。塩焼きや西京焼きにすることが多いです。
  • 茶碗蒸し──やわらかくて誰でも食べやすい、お祝い膳の名脇役。
  • 紅白なます・菊花のお浸し──彩りの紅白と、秋らしい菊で季節感を。
  • お祝いデザート──紅白の練り切りや栗を使った和菓子など、目でも楽しめる一品を。

そして忘れてはいけないのがお品書き。手書き風のお品書きをトレイに添えるだけで、「今日は特別な日」の空気が一気に高まります。盛り付けの記事で書いた「彩り3色以上」も、この日は普段の1.5倍増しで気合いを入れます。

実は、そのまま出せないものだらけ

ここからが給食ならではの話です。お祝いの定番料理は、実は高齢の方にはリスクがあるものが多いんです。

  • 尾頭付きの鯛──見た目は最高ですが、骨が危ない。切り身にして骨を丁寧に確認してから提供します。
  • お赤飯──もち米はねばりが強く、飲み込む力が弱い方には注意が必要。うるち米を多めに配合したり、軟飯のお赤飯にしたりと工夫します。
  • お餅や練り切り──のどに詰まるリスクの代表格。ゼリー仕立てや、やわらかい蒸し菓子に置き換える現場が多いです。

「伝統どおりの姿」と「安全」のあいだで、どこまで寄せられるかを考えるのが厨房の腕の見せどころ。秋メニューの記事で書いたお月見団子と同じで、「そのまま出せないなら、工夫して届ける」が合言葉です。

どの食事形態の方にも「同じお祝い」を

私がこの仕事でいちばん誇りに思っている工夫のひとつがこれです。食事形態の記事で書いたとおり、施設にはきざみ食やミキサー食の方もいらっしゃいます。その方たちのお祝い膳が「いつもと同じ見た目のペースト」だったら、悲しいですよね。

だから敬老の日は、形態対応の方のお膳も「お祝いに見える」ように作り込みます。ミキサー食でも赤飯の色味を再現する、魚の形に成形して盛り付ける、デザートは同じ紅白の色合わせにする──。手間は普段の倍かかりますが、「全員が同じお祝いの席にいる」ことが、この日の何よりのごちそうだと思っています。

当日までの段取りと、当日の厨房

敬老の日のお祝い膳は、当日思いつきでは作れません。行事食の記事で書いたとおり、1ヶ月前には献立を固めて試作をして、施設の職員さんに試食してもらい、味や見た目を検討します。食材の発注も、鯛や栗などの特別食材は早めの手配が必須です。

当日の厨房は、朝から段取り表がびっしり。いつもより品数が多く、盛り付けの工程も増えるので、役割分担を前日までに決めきっておきます。それでも提供の時間が近づくとバタバタになるのは、毎年恒例のご愛嬌です。

そして提供のあと。下膳のトレイを見るのが、この日いちばんの楽しみです。残食の記事で「食べ残しは現場へのメッセージ」と書きましたが、敬老の日のトレイはいつも、良いメッセージでいっぱいです。

それから、事務担当としてのひと仕事も忘れてはいけません。敬老の日はご家族の面会が増える日でもあって、外食に出かけられる方、逆にご家族と一緒に召し上がる方など、食数がいつもより動きます食数管理の記事で書いたとおり、変更の連絡を確実に拾って、せっかくのお祝い膳を無駄にしない。華やかな日ほど、地味な確認作業が効いてきます。

当日の館内は、朝から飾り付けとお祝いムードでいっぱいです。食堂に手作りの飾りが並んで、お祝い膳が運ばれると、あちこちで「わあ」と声が上がる。職員さんがお膳と一緒に記念写真を撮る姿もよく見かけます。厨房までその空気が届いてくると、朝からの疲れがすっと軽くなるから不思議です。

米寿や白寿の方には、もうひと工夫

敬老の日は全員が主役ですが、その年に長寿の節目──米寿(88歳)や白寿(99歳)、百寿(100歳)──を迎える方がいらっしゃると、施設によってはお祝いがもうひと段階華やかになります。厨房からできるのは、デザートに小さなお祝いプレートを添えたり、その方の好物を一品加えたり。献立作成の記事で書いた「食べる人の顔を思い浮かべて作る」が、いちばん濃く出る場面です。

まとめ:「ありがとう」を料理にする日

敬老の日のお祝い膳は、豪華さを競う日ではなく、日頃の「ありがとう」と「これからもお元気で」を料理のかたちにする日です。安全のための置き換えも、形態対応の作り込みも、ぜんぶその気持ちの表現だと思っています。

今年の9月21日も、全国の厨房で、たくさんのお祝い膳が湯気を立てるはずです。同じ現場で働くみなさん、いっしょにがんばりましょう。

それでは、また次の記事でお会いしましょう。キッチンのりちゃんでした。

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