給食の主役は、実はごはんです。おかずがどれだけ良くても、ごはんがベチャっとしていたら食が進まない。逆にごはんが美味しく炊けていれば、それだけで「今日の給食おいしいね」と言ってもらえます。
高齢者施設の給食を委託会社の社員として16年やってきたボク(キッチンのりちゃん)が、何十kgという単位でごはんを炊く世界のリアルと、美味しく炊くコツをお話しします。※事例は架空の一例です。
給食の炊飯は「kg単位」の世界
家庭なら3合、5合の世界ですが、給食では1食あたりのごはん量 × 食数で必要量を計算します。
- たとえば1食150gのごはんを100食なら、炊き上がり15kg
- お米は炊くと約2.2倍の重さになるので、生米はおよそ7kg弱
- これを朝・昼・夕、毎日繰り返す。年間にすると相当な量です
使うのは立体炊飯器という、ガス釜が何段も積み重なった炊飯タワー。一釜ずつセットして、時間差で炊き上がるように段取りします。
コツ①:計量は「その都度きっちり」
大量炊飯で一番怖いのが水加減のズレ。家庭なら少々の誤差は気になりませんが、何kg単位になると小さなズレが大きな差になります。
- 米の量、水の量とも目分量は絶対NG。必ず計る
- 釜ごとに水位の目印を決めておくと、誰がやってもブレない
- 「いつもの感じ」で炊くと、日によって硬さが変わってしまう
コツ②:浸水時間をきちんと取る
意外と見落とされがちなのが浸水。お米が芯まで水を吸っていないと、大量炊飯では中心が硬く残りやすくなります。
- 研いだあと、しっかり時間を置いてから炊飯にかける
- 夏と冬では水温が違うので、季節によって吸水の進み方も変わる
- 朝の忙しい時間帯こそ、逆算して早めに研いでおくのが段取りのコツ(大量調理のコツ)
コツ③:炊き上がったら「ほぐし」が命
炊き上がりの合図が鳴ったら、蒸らしのあとにすぐほぐす。ここを怠ると一気に品質が落ちます。
- 釜の底の方は水分が多く、上の方は乾きやすい。ほぐして全体を均一にする
- 切るように混ぜて余分な蒸気を逃がすと、ベチャつきを防げる
- 米粒をつぶさないよう、しゃもじは立てて優しく。ここは丁寧さが出るところ
コツ④:保温は「置きすぎない」
大量炊飯では、炊き上がりから提供までの時間差が出ます。ここの管理が味を左右します。
- 長時間の保温は黄ばみ・パサつき・においの原因
- 提供時間から逆算して炊き上がりを合わせるのが理想
- 朝・昼・夕それぞれのタイミングに合わせて炊飯を分けます(1日の流れ)
高齢者施設ならではの配慮
高齢者施設では、ごはんも食事形態に合わせて用意します。
- 常食(ふつうのごはん)のほかに、軟飯(やわらかめ)、全粥・五分粥、ミキサー粥など
- それぞれ水加減も炊き方も別。実質「何種類ものごはんを同時進行」で作ります
- お粥は焦げつきやすいので、火加減と混ぜのタイミングに気を使います(食事形態のリアル)
行事の日は「炊き込み」もある
いつもは白いごはんでも、行事の日には炊き込みごはん・赤飯・栗ごはんなど。具材が入ると水加減も変わるので、いつも以上に慎重になります。ここぞという日のごはんは、食堂の雰囲気ごと変えてくれます。
お粥の作り方と、失敗しないコツ
高齢者施設で毎日欠かせないのがお粥。実は普通のごはんより難しいです。
- 全粥は米1:水5が基本の目安。五分粥はさらに水を増やします(米1:水10前後)
- 焦げつきに注意……底が焦げやすいので、火加減は弱め。時々底から混ぜる
- 混ぜすぎない……粘りが出てベタつきます。焦げ防止に必要な分だけ
- 沸騰させすぎない……吹きこぼれると水分量が変わり、仕上がりがブレます
- 提供直前まで蓋をする……表面が乾いて膜が張ると、見た目も口当たりも悪くなります
お粥は時間が経つほど水分を吸って固くなるのも厄介なところ。提供時間から逆算して、少しゆるめに仕上げるのがコツです。
ごはんが余った・足りないときの対応
食数は毎日動くので、ぴったりにはなりません。実際の対応も書いておきます。
足りないとき
- 盛り付け量を微調整する……全員分をほんの少しずつ減らせば、数食分は捻出できます
- 追加で炊く……時間があれば。ただし提供時間には間に合わないことが多い
- 予備を常に少し多めに……これが一番の予防策。足りないより余るほうがはるかにマシです
余ったとき
- おかわり分として活用……食欲のある方に
- 翌日の献立で使う……ただし保存方法と時間の管理は厳格に。冷ましてすぐ冷蔵が原則
- 基本は廃棄……衛生上、無理に使い回さない判断も必要です
もったいないですが、安全が最優先。だからこそ、発注と食数把握の精度が効いてきます(発注のコツと食数管理)。
米の保管で気をつけていること
意外と見落とされるのがお米の保管です。大量にストックするからこそ、管理が要ります。
- 床に直置きしない……スノコやパレットの上へ。湿気とカビの原因になります
- 冷暗所で保管……高温多湿は虫の発生を招きます。夏場は特に注意
- 先入れ先出しを徹底……新しい袋を奥へ。古い米が奥で眠るのを防ぐ
- 開封後は早めに使い切る……空気に触れると劣化が進みます
- 計量器具は乾いた状態で……濡れたスコップを米袋に入れると、そこからカビます
「炊飯だけ」でも奥が深い
ごはんを炊くのは、給食の仕事の中でいちばん地味かもしれません。でも毎食必ずあって、失敗が一番目立つ作業でもあります。
硬すぎても、やわらかすぎても、すぐ分かる。逆に言えば、ちゃんと炊けているのが当たり前だと思われている。その「当たり前」を毎日守り続けるのが、案外いちばん難しいことなのかもしれません。
まとめ:ごはんが決まれば給食が決まる
大量炊飯のコツは、①きっちり計る ②浸水を取る ③炊けたらすぐほぐす ④保温しすぎない。どれも派手ではないけれど、この積み重ねが「今日のごはん、美味しいね」に繋がります。
毎食何十kg。地味で力仕事ですが、給食の土台を支えている実感がある——ボクはこの仕事が結構好きです。


