給食調理員がケガをしたら|切り傷・やけど・腰痛、その瞬間から労災の書類までを事務担当が時系列で

給食調理員がケガをしたら|労災の時系列|キッチンのりちゃん 給食の仕事内容

こんにちは、キッチンのりちゃんです。委託給食会社で調理と事務をやって16年になります。

厨房は、ケガをする場所です。包丁、スライサー、揚げ油、回転釜、濡れた床、重い鍋。16年やって、自分も切りましたし、やけどもしました。そして事務に回ってからは、仲間がケガをしたときの労災の書類を作る側にもなりました。

そこで気づいたことがあります。ケガそのものより、「ケガをした後に何をすればいいか」を誰も教わっていないということです。小さい傷を黙って絆創膏で済ませる人、病院で健康保険証を出してしまう人、「労災を使うと会社に迷惑がかかる」と思い込んでいる人。全部、損をしています。

今日は、給食の厨房でケガをした「その瞬間」から「労災の書類が終わるまで」を時系列で書きます。調理員としての経験と、書類を作る事務担当としての経験、両方から書ける記事だと思います。

※事例は架空の一例です。労災制度の内容は執筆時点の一般的なもので、個別のケースは会社の担当者や労働基準監督署に確認してください。

厨房で多いケガは、この4つ

厚生労働省が飲食店向けにまとめている労災防止の資料でも、社会福祉施設の労災の統計でも、多いケガの型はだいたい同じです。給食の厨房も例外ではありません。

  • 転倒……濡れた床、油が飛んだ床、段差、急ぎ足。厨房のケガで一番多いのがこれです。骨折や打撲で長く休むことになりやすい
  • 切れ・こすれ……包丁、スライサーの刃、缶詰のふち、割れた食器。洗い場で見えない刃物に触れて切ることもあります
  • やけど(高温接触)……揚げ油、回転釜の縁、スチコンから出る蒸気、熱い天板。蒸気のやけどは「触っていないのに」起きます
  • 腰痛……米袋、水の入った寸胴、重ねたホテルパン。中腰で盛り付けを続けた翌朝、動けなくなる

これに加えて、給食の現場で意外と多いのが手指の使いすぎです。同じ動きを何百回も繰り返して、指が曲がったまま戻りにくくなる。「年のせい」と思われがちですが、仕事が原因なら労災の対象になり得ます。

時系列で追う:ケガをした瞬間から書類まで

【0分】まず、食品から離れる

切ったとき、最初にやるのは止血ではなく、食品から手を離すことです。厨房のケガには、給食ならではの2つ目の問題があります。血が食品に入ること、そして傷のある手で調理を続けることです。傷には黄色ブドウ球菌がつきやすく、食中毒の原因になります。手荒れの記事でも書いたとおり、傷は申告、傷のある手は食品に触らない、が原則です。

その場に食品があったら、血が付いた可能性のあるものは廃棄。まな板や器具は洗浄・消毒。自分の手当てと同じくらい、ここが大事です。

【10分】応急処置と「報告」

流水で洗って、清潔なもので押さえて止血。やけどはすぐ流水で冷やす。腰は無理に動かない。応急処置はどこでも同じです。

給食の現場で違うのは、小さくても必ず報告することです。理由は2つ。1つは、傷のある人を調理から外す判断を責任者がするため。もう1つは、後で労災の書類を作るときに「いつ・どこで・何をしていて・どうなった」が必要になるためです。その場で言っておけば全部残ります。1週間後に「実はあのとき」と言われると、事務担当は困ります。

言い方はシンプルでいいです。「○時○分、スライサーで人参を切っていて、左手の人差し指を切りました」。これだけで書類の半分が埋まります。

【当日】病院では「仕事中のケガです」と言う

ここが一番間違えやすいところです。仕事中のケガは労災保険の対象で、健康保険は使えません。病院の受付で、癖で健康保険証を出してしまう人が本当に多いのですが、後で切り替えの手続きが二重に必要になります。

受付で「仕事中のケガなので労災でお願いします」と言ってください。労災指定の医療機関なら、治療費の窓口負担はありません。指定外の病院なら一度立て替えて、後から請求する形になります。どちらにしても、会社の書類が必要になるので、受診したら病院名と受診日を会社に伝えてください。

【翌日〜】会社が作る書類、本人が書く欄

ここから事務担当の出番です。治療のための書類は、指定医療機関なら「様式第5号」、指定外なら「様式第7号」と呼ばれる請求書で、会社が事業主の証明欄を書き、病院に出します。私が作っているのはこれです。

本人に書いてもらう(または聞き取って書く)大事な欄が「災害の原因及び発生状況」です。いつ・どこで・何の作業中に・何が原因で・体のどこをどうしたか。ここが曖昧だと労働基準監督署から問い合わせが来ます。だから【10分】の報告が効いてくるわけです。ケガをした場所や器具の写真を1枚撮っておくと、後でとても助かります。

【休むとき】4日目から給料の8割が出る

ケガで仕事を休むときは、休業補償があります。仕組みはこうです。

  • 休み始めて最初の3日間は、仕事中のケガなら会社が平均賃金の6割を補償
  • 4日目から、労災保険から給付基礎日額の6割+特別支給金2割=合計8割が出る
  • 書類は「様式第8号」。医師の証明と会社の賃金の証明が要るので、時間がかかります。早めに会社に相談を

この制度はパートさんも対象です。「パートだから労災は関係ない」と思っている人がいますが、雇われて働いている人は全員対象です。

【治ったら】戻る前に、原因を1つ潰す

復帰のときに、事務担当として必ずお願いしているのが「同じケガをしない仕組みを1つ作る」ことです。濡れた床なら、拭く担当と場所を決める。スライサーなら、刃を扱うときの手順を紙に書く。個人の注意より、仕組みのほうが確実に効きます。

「労災を使うと会社に迷惑」は誤解です

これは、事務担当としてはっきり言っておきたいことです。

  • 労災保険の保険料は会社が全額負担しています。あなたの給料から引かれていません。使うために払っている保険です
  • 仕事中のケガを労災として扱わず、健康保険で処理したり、報告しなかったりすることは「労災隠し」と呼ばれ、法律違反です。会社は労働基準監督署への報告義務があり、罰則もあります
  • だから、事務担当は堂々と申請してほしいと思っています。書類は面倒ですが、それは私の仕事です

逆に、労災にならないものもあります。休憩中に私用で外に出て転んだ、家で包丁を使って切った。これは対象外です。通勤中のケガは「通勤災害」として別に対象になりますが、寄り道の途中は外れることがあります。迷ったら、まず会社に事実を伝えてください。判断は後でできます。

ケガを減らす現場の5つの習慣

  • 床は「濡れたらすぐ、その人が拭く」……転倒の8割は床です。滑りにくい厨房靴を履き、水をこぼしたら自分で拭く。ドライな床の作り方は厨房掃除の記事に書きました
  • 刃物は「電源を切ってから」「見てから」……スライサーや皮むき機は、刃に触れる前に必ず電源を切る。洗い場では、刃物を桶の中に沈めない。器具の扱いは調理器具図鑑の記事も参考に
  • 熱いものは「声を出す」……「熱いの通ります」「後ろ通ります」。声で相手が止まります。揚げ油の扱いは揚げ物の記事
  • 重いものは「二人で」「台車で」……米袋や寸胴を一人で持ち上げない。中腰の作業は台の高さを変える。腰は一度やると長引きます
  • 手の使いすぎは「休ませる」……同じ動きが続く作業は、担当を交代する。指が伸びにくい、朝こわばる、があれば早めに受診。手荒れの記事と同じで、手は商売道具です

夏の厨房は暑さで注意力が落ち、ケガも増えます。熱中症対策の記事とあわせて読んでください。トラブル全般の「3秒で報告」はトラブル対応の記事に書いています。

まとめ

  • 厨房で多いケガは転倒・切れこすれ・やけど・腰痛、それに手指の使いすぎ
  • ケガをしたら食品から離れる→応急処置→小さくても報告→病院では「労災で」
  • 治療は窓口負担なし、休めば4日目から8割。パートも対象
  • 「労災を使うと迷惑」は誤解。労災隠しのほうが法律違反
  • 戻るときは、原因を1つ潰す仕組みを作る

辞めるとき・入るときの書類の話は入退社の書類の記事に書きました。書類の向こう側で、私はいつも「早く治ってほしい」と思いながら書いています。ケガをしたら、遠慮せず言ってください。それが一番早く治る道です。

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