高齢者施設の給食で、入居者様がとびきりの笑顔を見せてくれる日があります。それが「行事食」の日です。
お正月、節分、ひな祭り、七夕、敬老の日…。季節や行事に合わせた特別な食事は、施設で暮らす方にとって「季節を感じられる大切な楽しみ」。だからこそ、私たち作り手も気合が入ります。
この記事では、給食委託会社の正社員として16年働いてきた私(キッチンのりちゃん)が、行事食づくりのリアルな裏側を紹介します。
| 名前 | キッチンのりちゃん |
| 年齢 | 38歳・男性 |
| 業界歴 | 16年(給食委託会社 正社員) |
| 担当 | 3事業所(高齢者施設・保育園など) |
| 業務 | 調理+事務の両刀 |
※私は施設に直接雇われた職員ではなく、施設から給食業務を請け負う「委託会社」の社員です。行事食は施設の方々と相談しながら作り上げます。
そもそも「行事食」とは?
行事食とは、季節の行事やイベントに合わせて提供する特別な食事のこと。
普段の給食ももちろん心を込めて作りますが、行事食は「いつもとちょっと違う」特別感が命。目で見て季節を感じ、食べて笑顔になってもらうことが目的です。
高齢者施設では、外出が難しい方も多いもの。だからこそ「食事で季節を届ける」ことに、大きな意味があります。
【裏側】行事食は「前月の試作」から始まっている
ここが、あまり知られていない現場のリアルです。
行事食は、本番の前の月に必ず“試作”をします。そして、施設の職員さんに実際に試食してもらい、
- 味はちょうどいいか
- 見た目は華やかか
- 高齢の方でも食べやすいか
を一緒に検討します。
正直に言うと、毎回ものすごく悩みます。「もっと彩りを足したほうがいいかな」「この固さで大丈夫かな」「甘さはこれで喜んでもらえるかな」…。試作して、意見をもらって、また考え直して。
でも、その手間を惜しまないのは、ただ一つ。当日、入居者様に心から喜んでもらいたいからです。
行事食で私が大切にしている3つのこと
試作のたびに、私が必ずチェックしているのが次の3つです。
① 見た目|「わぁ!」と言ってもらえるか
行事食は、運ばれてきた瞬間の“わぁ!”が命。
彩りを意識し、お正月なら華やかに、七夕なら涼やかに。器や盛り付けでも季節感を出します。「目で楽しむ」ことが、食欲にもつながります。
② 味|ほっとする、箸が進む味
どんなに見た目が良くても、おいしくなければ意味がありません。
高齢の方は甘めの味付けを好まれる方が多いので、ほっとする・箸が進む味を意識します。試食でもらう「もう少し濃い・薄い」の一言が、本番の味を決めます。
③ 食べやすさ|安全においしく、最後まで
これは高齢者施設ならではの大切なポイント。
見た目と味が良くても、噛みにくい・飲み込みにくいと危険です。一人ひとりの状態に合わせて、やわらかさやとろみを調整します。「華やかさ」と「食べやすさ」の両立こそ、行事食の腕の見せどころです。
食べやすさの工夫については、食事形態の作り分けの記事でもくわしく紹介しています。
実際にやっている!行事食・イベント食の例
季節の行事食だけでなく、現場ではいろんなイベント食にも挑戦しています。
| イベント | 内容 |
|---|---|
| 季節の行事食 | お正月・節分・ひな祭り・七夕・敬老の日 など |
| 郷土料理 | 各地の名物料理を再現。「懐かしい」の声が出る人気企画 |
| スイーツバイキング | 好きなデザートを選ぶ楽しさ。笑顔があふれる時間 |
| まぐろ解体ショー | 目の前で捌く迫力の実演。エンタメ性も抜群 |
特に郷土料理は、「昔これ食べたなぁ」と昔話に花が咲くことも。食事が思い出や会話のきっかけになるのは、行事食ならではの嬉しさです。
スイーツバイキングやまぐろ解体ショーのような“イベント性”のある企画は、「食べる」だけでなく「体験する」楽しさを届けられます。
悩みながら作る、それでも続ける理由
正直、行事食づくりは手間がかかります。前月の試作、試食、検討、そして本番。毎回頭を悩ませます。
それでも続けるのは、当日の「おいしかったよ」「きれいやね」の一言があるから。その笑顔を見ると、悩んだ時間が全部報われます。
行事食は、ただの食事ではありません。「あなたに季節を、楽しい時間を届けたい」という気持ちを、料理の形にしたもの。だから私は、これからも悩みながら、心を込めて作り続けます。
まとめ|行事食は「喜んでもらいたい」気持ちの結晶
高齢者施設の行事食は、
✅ 季節やイベントを食事で感じてもらう特別な一品
✅ 前月の試作・試食・検討を経て、本番に臨む
✅ 大切にするのは 見た目・味・食べやすさ の3つ
✅ 郷土料理・スイーツバイキング・まぐろ解体ショーなど、体験する楽しさも
手間はかかりますが、その先にある笑顔のために、現場は今日も知恵をしぼっています。
これから給食の仕事に関わる方は、ぜひ「行事食」の奥深さと楽しさを知ってほしいなと思います。


